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オピニオン:
クリントン氏、戦後最も不人気な大統領になる恐れ
10月28日、米オリエンタル・エコノミスト・アラート代表のリチャード・カッツ氏は、民主党のヒラリー・クリントン候補は米大統領選で勝利しても、就任1年目から機能不全に陥る恐れがあると指摘。写真は米ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で、第2回大統領候補テレビ討論会に臨むクリントン氏(手前)と共和党のドナルド・トランプ候補。9日撮影(2016年 ロイター/Rick Wilking)
リチャード・カッツ 米オリエンタル・エコノミスト・アラート代表
[東京 28日] - 11月8日の米大統領選挙が主要世論調査の示す通り、ヒラリー・クリントン民主党候補の勝利で終わったとしても、ドナルド・トランプ共和党候補の過激な選挙活動が米国の社会・政治に与えたダメージは大きく、「ヒラリー大統領」は就任1年目から機能不全に陥る恐れがあると、米オリエンタル・エコノミスト・アラート代表のリチャード・カッツ氏は指摘する。
その結果、日本への影響としては、保護貿易主義圧力の高まりに伴う環太平洋連携協定(TPP)の挫折、アジア太平洋地域の安全保障面での米国のプレゼンス低下などが懸念されると説く。
同氏の見解は以下の通り。
<金融危機後に右派ポピュリズム台頭の歴史>
リーマンショックのような世界的な金融危機の後に、深刻な不況が続けば、右派ポピュリズムが台頭しやすい。これは、欧米の歴史が示してきたことである。
欧州では近年、マリーヌ・ルペン党首が率いるフランス国民戦線(FN)などの極右政治勢力の台頭が目立つ。また、6月23日の英国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択された背景にも、右派ポピュリズムの存在がある。「トランプ人気」もまさしく、そうした現象の一部として捉えることができよう。
トランプ氏の中核支持層は、共和党支持者の中でも相対的に所得は高いが、教育水準は低い傾向がある。自分の仕事と給料が、明日にも消えてなくなるかもしれないとの不安を抱き、おびえている。物事が今日よりも明日良くなるとの、200年以上続いた典型的な米国人の信念体系を失いつつある層だ。トランプ氏は、過激な選挙活動を通じて、そうした層の不安や不満、怒りをあおり、味方に引き入れることに成功した。
一度火が付いた右派ポピュリズムは、トランプ氏が負けたとしても、簡単に鎮まるわけではないだろう。米大統領選挙結果を占う上で、私が最も信頼している統計学者は、2008年の大統領選で50州中49州(12年大統領選では全州)の勝敗を言い当てたネイト・シルバー氏だが、同氏の予測(10月25日時点)によれば、トランプ氏が勝利する確率は15%もある。クリントン氏の85%に対して、6分の1程度にとどまっているものの、大統領にふさわしくないと多くの米国人が見なしている人物が勝利する確率が10%以上あるという事実は重い。
また、そもそも今回の大統領選挙は「嫌われ者同士の戦い」と言われており、トランプ氏に対するクリントン氏のリードが一般米国人の間での人気の高さを表しているわけではない。むしろ、「不人気対決」の後にクリントン氏を待ち受けているのは、戦後最も人気のない大統領としてホワイトハウスに入る運命かもしれない。
リーマンショックのような世界的な金融危機の後に、深刻な不況が続けば、右派ポピュリズムが台頭しやすいことは、欧米の歴史が示してきたことであり、「トランプ人気」もそうした現象の一部として捉えることができると、米オリエンタル・エコノミスト・アラート代表のリチャード・カッツ氏は指摘する。
<「ヒラリー嫌い」と「オバマケア嫌い」が共鳴>
このように考えると、たとえ勝利したとしても、クリントン氏の前途は極めて多難である。クリントン氏は基本的に外交・内政ともオバマ政権の政策継承を目指すわけだが、それはオバマ政権下で進んだ政治の混乱や分断も受け継ぐことを意味する。
とりわけオバマ大統領が進めた医療保険改革法(通称オバマケア)をめぐる議会内の対立は深刻だ。大統領選挙と同時に行われる議会選挙で仮に民主党が大きく負けるようなことがあれば、共和党議会の「ヒラリー嫌い」「オバマケア嫌い」が共鳴して、「決められない政治」がより深刻化する恐れがある。
懸念されるのは、政策運営が行き詰まる中で、トランプ氏が米国の社会・政治に与えたダメージがさらに広がっていくことだ。
一番の心配は、自由貿易推進の機運が一層後退してしまうことである。残念なことに、今回の大統領選挙を通じて、自由貿易は、米国人が直面する様々な問題の原因としてやり玉に挙がっている。多くの米国人が、自由貿易をスケープゴートにして自らの境遇を嘆いている。感情的に保護貿易を訴えるトランプ氏の選挙活動が米社会に与えたダメージは大きい。
実は共和党がトランプ氏のような保護貿易主義者を大統領候補に指名したのは、大恐慌後の1936年以来のことだ。民主党についても、大統領候補がここまで反自由貿易的な発言を繰り返しているのは第2次世界大戦後、珍しいことではないか。クリントン氏自身は、本来は自由貿易推進論者だと思うが、バーニー・サンダース上院議員らが率いる民主党内のリベラルポピュリズムの影響もあって、党内分裂のリスクを冒してまで、自由貿易やグローバリゼーションを是認することは難しい局面だ。
自由貿易推進の後退は、もちろん内向き化と表裏一体である。周知の通り、米国には、「イラクの自由作戦」などの名の下に他の国々のために戦ってきたのに、何も得ることなく多くの人が死んでいったとの声が根強い。米国人は、他国のために自国を危険にさらすような行動に人やお金をコミットすることについてはより消極的になっている。孤立主義的な考えを前面に出したトランプ氏の選挙活動は、こうした米社会の内向き志向を強めたと言えよう。このダメージは長く尾を引きそうだ。
むろん、中国やフィリピンなど多くの国の利害が衝突している南シナ海の領有権問題などをめぐって短期的に米大統領ができることもあると思うが、軍事予算にも関わるような長期的な行動については、国民の大多数が理にかなっていると判断しなければ、踏み出しにくい状況となっている。
クリントン氏自身は、オバマ政権の「アジア回帰」戦略の立役者であり、同地域への関与を強めたいと思っているかもしれないが、現実的には内向き化の流れには抗えず、就任からしばらくはオバマケアや移民政策の見直しなど自国内の問題にどっぷりと浸かることになるのではないか。必然的に、環太平洋連携協定(TPP)の挫折や、アジア太平洋地域での米国のプレゼンス低下といったリスクに対して、日本政府は備えを万全にしなければならなくなるだろう。
各種世論調査が示すとおり、ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利する確率は低いものの、米国で吹き荒れた「トランプ旋風」は内外で長期的なダメージを残すだろうと、米オリエンタル・エコノミスト・アラート代表のリチャード・カッツ氏は述べた。
*リチャード・カッツ氏は、オリエンタル・エコノミスト・レポート&アラート代表(編集長)。ニューヨーク大学スターンビジネススクール助教授、米外交問題協議会特別委員会委員などを歴任し、現職。日本に関する著作が多く、日米関係や日本の金融危機について米国議会で証言も。
*本稿は、リチャード・カッツ氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。
(聞き手:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/opinion-presidency-katz-idJPKCN12S08I
孤立主義か干渉主義か、米両党が抱える分裂
大統領選で誰が勝利しても政治的課題に直面は必至
ヒラリー・クリントン氏(写真中央)が大統領に選ばれれば、国際舞台ではオバマ大統領より強気な姿勢を示すと予想されている(写真は国務長官としてリビアを訪問した際の様子、2011年) ENLARGE
ヒラリー・クリントン氏(写真中央)が大統領に選ばれれば、国際舞台ではオバマ大統領より強気な姿勢を示すと予想されている(写真は国務長官としてリビアを訪問した際の様子、2011年) PHOTO: KEVIN LAMARQUE/ASSOCIATED PRESS
By JAY SOLOMON AND LAURA MECKLER
2016 年 10 月 28 日 14:29 JST
今年の米大統領選では外交政策上の従来の立場や他国への内政干渉に関して完全に混乱が生じており、通常であれば各党派を差別化するはずの多くの要素が視界から消えている。11月の本選で誰が勝利しようと、新大統領には政治的課題が突きつけられることになるだろう。
民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官が大統領に選ばれれば、国際舞台ではオバマ大統領より強気な姿勢を示すだろう。これまでの公の場での発言や側近幹部らの話からそれが分かる。これはクリントン候補との指名争いで敗れたバーニー・サンダース上院議員が率いてきた民主党リベラル派の一翼とクリントン氏を分かつものだ。サンダース氏は予備選の最中に、クリントン氏があまりに早急に軍事力に頼りすぎると批判したことがある。クリントン氏の強気姿勢は、反干渉主義を標榜(ひょうぼう)している共和党候補のドナルド・トランプ氏と党内で増えつつある同意見の党員たちとも一線を画す。
その一方でクリントン氏のアプローチは通常ではあり得ない支持者の獲得にもつながっている。国家安全保障を重要視する共和党内の一翼のことだ。彼らは共和党の候補者を支持するのが通例だが、今回ばかりはトランプ氏とそのアプローチに反発している。
クリントン氏が勝利すれば、大統領就任を待たずして、12月に失効する対ロシア制裁を延長するよう欧州に圧力をかけるだろうとある上級顧問は指摘する。側近たちはクリントン氏の政策について、シリアではオバマ政権より強硬な姿勢に出て飛行禁止区域の設定に動くであろうと予測。イランに対しては、新たな制裁の発動を検討するであろうと述べた。たとえそれが核開発を巡る新たな合意の破棄を同国がちらつかせることになったとしても、だ。
10月19日に行われた大統領候補の第3回討論会で舌戦を繰り広げたクリントン氏(手前)とトランプ氏
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-QK064_FOREIG_M_20161021171523.jpg
民主、共和両党がそれぞれに抱える干渉主義派と非干渉主義派の分裂は、大統領選の結果がどうあれ、外交政策面でワシントンがコンセンサスに至ることを困難にするであろう。
ワシントンにある米政策研究機関ウッドロー・ウィルソン国際学術センターのアーロン・デービッド・ミラー氏は「リスク回避型で世界に対していわば控え目なアプローチをとるよう主張する声が両党の中にある。これほど異例な状況を過去に経験した記憶はない」と話した。ミラー氏は民主、共和両政権で上級外交官を務めた経験がある。
右寄りの孤立主義への回帰はトランプ氏を勢いづかせた原動力であり、クリントン氏のこれまでの政治経験や大統領選での選挙公約と鋭い対比をなしている。
トランプ氏は今年のインタビューの中で、米国は国際社会の安定を自動的に守る保証人であるべきではないと述べた。トランプ氏の主張は共和党支持者が同氏に投票する理由付けになっているものの、その半面、干渉主義的な立場を好む議員からは批判もされてきた。
「トランプの問題はレーガン(元大統領)のレトリックで孤立主義をくるんでいることだ」。共和党内の最も強気なタカ派の一人でサウスカロライナ州選出のリンゼー・グラム上院議員はそう話す。クリントン氏は正しい意思を持っている、とグラム氏は言う。ただ、他の民主党員からの圧力もあり、クリントン氏がその意思に沿った行動をとるかどうかは不明だとしたうえで、「彼女にはもっと強気に出たいという衝動があると思う」と述べた。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjMk4Th3v3PAhUGabwKHZ0IAkoQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11104639269023523859604582401221780383572&usg=AFQjCNHHP-4a_Qqaage2gVlIqg6ozQGGVw
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