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米国の税が高いというトランプ氏の主張は誤り カナダやドイツ、日本など、広く知られた国に比べて税金が著しく低い
By RICHARD RUBIN
2016 年 10 月 11 日 08:19 JST 更新
米共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は、米国が世界で最も税金の高い国だと繰り返し主張している。だがそれは非常に大きな間違いで、単に雑学的な事実検証の議論で収まるものではない。
まず、政治的見解にかかわらず、間違った前提は政策決定を歪曲しかねない。
トランプ氏は9日の第2回テレビ討論会で、米国は「ほぼ」世界一税金の高い国だと述べた。米CBSでの発言録によると、6日にニューハンプシャー州で開いた選挙集会では、以下のように説明していた。
「米国はすでに世界で一番税金の高い国だ。ほぼ間違いない。事実検証では『聞いたこともないような国で、税金がさらに高い国もある』と指摘されるかもしれないが、先進工業諸国のうちでわれわれがほぼ世界で最も高い税金を払っている納税者だ」。
だが、トランプ氏の主張は誤っている。米国は、カナダやドイツ、日本など、広く知られた国に比べて税金が著しく低い。
直近のデータである2014年の場合、米国の税収は国内総生産（GDP）の26％となった。これは、主要先進工業国の平均34.4％を下回っている。
これには、連邦税、州税、そして地方税が含まれる。税収のGDP比は経済に占める政府の規模を示し、国全体の税負担を測る最良の指標だ。米国の税制が完璧であると言っているわけでも（実際に完璧ではない）、米国民すべてがデンマークやドイツの国民より少ない税金を支払っていると言っているわけでもない（実際にそうではない）。
だがこの指標で上位に入るデンマークやフランスなどの国は、幅広い社会安全保障の財源を確保するために米国よりはるかに高い税負担を強いられており、中間層への課税も多い。一方、米国は下位のスイスや韓国と肩を並べている。
リベラル派にしてみれば、米国が税金の低い国であるという事実はいくつか明らかな結論を導き出す。「より多くの税金を支払うことも可能で、そうすれば政府はヘルスケアや教育を強化できる。そうなっても世の終わりではない」との見方がその一例だ。
こうした見解に基づく政策としては、富裕層への増税や他の主要先進国のような付加価値税の導入などが考えられる。
一方、保守派は同じ事実からまったく異なる結論にたどり着く。例えば、「低い税率という強みを放棄すべきではない。その代わり、一部の減税や税制の効率化、投資先に関する経済的決定を歪める措置の撤廃などを通して低税率を有効利用するか、もしくは強化すべきだ」というものだ。
こうした政策には限界税率の引き下げや経済的利益の小さい優遇税制措置の撤廃などが含まれるかもしれない。特に、35％の法人税が焦点となる可能性がある。米国法人税の実効税率はこれより若干低いが、法定税率は実際のところ先進国で最も高く、利益や雇用、投資をどこに配分するかという企業の判断に影響を及ぼしている。
トランプ氏の提案には法人税率の15％への引き下げなど、こうした側面も含まれる。だがそれだけでなく、向こう10年間に連邦税収入を少なくとも10％削減するなど、米国が税金を過徴収していると考えるのであればまず先に取り組むであろう提案をしている。
だからと言って、税金の低い国での減税を正当化できないというわけではない。政治家が減税を望む理由はたくさんあるが、米国民を世界一の税負担から解放するというのはその根拠にならない。
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