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白人同士でも心が通じ合うとは限らない Ivan Sekretarev-REUTERS
プーチンをヨーロッパ人と思ったら大間違い
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-5986.php
2016年10月7日(金)18時14分 アンドリュー・コーンブルース(米大西洋協議会) ニューズウィーク
<ロシアがシリアで停戦を守らず無差別爆撃を再開した、といってアメリカは怒る。だがロシアは、ウクライナでも約束など守ったことがない。対ロ外交で間違いを繰り返すのは、ロシア人もヨーロッパ人と同じような考え方をしていると思い込んでいるからだ>
まるで故障中の自動販売機に入れてしまった硬貨のように、ロシアと協力してシリア内戦を停戦に導くというアメリカの努力は無駄に終わった。
それどころか、ロシアとシリア両政府軍は、停戦の発効からわずか1週間後に人道支援物資を載せた国連の車列を攻撃し、その後は反政府派支配地域の北部アレッポで過去最大級の空爆を続けている。ロシアを取り込もうという長く不毛な外交努力の果てに、アメリカは米ロ2国間を停止しシリア和平の道は閉ざされた。
【参考記事】オバマが見捨てたアレッポでロシアが焦土作戦
この経過を見ると、一つの疑問が湧いてくる。そもそもなぜバラク・オバマ米政権は、ウクライナ東部の停戦合意をことこどく反故にしてきたロシアが、シリア内戦解決のための2国間協議の約束は守ると考えたのか。
ロシアは、欧米人がロシア人に対して抱く誤った親近感のおかげでトクをしている。というのも欧米人は、見るからに異質なアジアなどの国々と比べればロシアはもっとヨーロッパに近くて、西側の人道主義を理解する指導者もいるはずだという根拠のない思い込みをしている。
■指導層はほとんど白人だが
欧米人は昔からアジアの異質性を強調し過ぎることで批判されてきたが、グローバリゼーションが進むにつれて東西の違いは小さくなった。伝達される情報のスピードや量が増え、自分から遠く離れた人々や場所との親交が深まったような錯覚が生まれたからだ。さらに、全人類の人権を尊重しようという気運が高まるにつれて、国家間の文化的な違いに言及すること自体がタブーになるほど、国家や文化の異質性をめぐる問題に敏感になった。
ロシアの場合、国家指導者のほとんどが白人で、西側諸国のやり方を忠実に模倣した立法、行政、司法機関を持つために、西側との違いは一層目立たなくなった。米共和党大統領候補ドナルド・トランプが中国の習近平国家主席と「親友」になったと言いふらすところは想像できないが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が相手なら気安くできてしまったのもそのせいだ。
【参考記事】トランプはプーチンの操り人形?
だがロシアがヨーロッパに属すという勘違いは、プーチンを利するだけだ。外部から見たロシアに関する我々の知識は薄っぺらで情報も限られているため、プーチンは国外での自分のイメージを思い通りに操作できる。西側の民主主義がぐらつく間に、ロシアには決断力があって物事に動じない父親のように頼れる指導者がいると思わせるのも自由自在だ。
アメリカやヨーロッパの極右主義者がプーチンを称賛するのは、、単に彼が反自由主義的で自分たちの政治的な運動に都合が良いという理由だけではない。彼らはプーチンを、肉食系で強力で希有な「ヨーロッパの」指導者だと見ているのだ。
現代ロシアを動かすレバンチズム(報復主義)とノスタルジアの奇妙な組み合わせを理解できている国は、ヨーロッパの中でも数カ国に過ぎない。ロシアの支配指導層をはじめ国民の大多数は、ソ連崩壊によって失われた自尊心を取り戻そうと決意している。ロシア人の目には、西側が提唱する民主主義や人権といった概念が脅威に映る。旧ソ連の衰退や生活水準が破滅的に悪化したボリス・エリツィン政権下の暮らしを連想するからだ。
■人間の犠牲は顧みない
ロシアでは近代化を目指して大改革を行った17〜18世紀のピョートル1世の時代から第2次世界大戦に至るまで、国家のあらゆる変革に国民が強制動員されてきた歴史がある。それゆえ個人の犠牲は、それがロシア国内の孤児であろうとや、ロシア国境近くで撃墜されたマレーシア航空機に搭乗していた犠牲者たちであろうと、あるいはシリアのアレッポで殺される子どもたちであろうと、ほとんど注目に値しない。
【参考記事】マレーシア航空機撃墜の「犯行」を否定するクレムリンのプロパガンダ
ロシアという国と同様、複雑怪奇なプーチンに匹敵する西側の指導者は存在しない。彼は高慢で秘密主義の「警察官」であり、自国では誠実な人間の象徴として通るベテランの詐欺師、そして多民族のロシア帝国を統括するナショナリストだ。
皮肉なのは、西側がロシアの上に自らを重ねて見ているのと同時に、プーチンとその支持者たちも西側指導者に自分自身を見ていることだ。彼らにとっては譲歩以外のどんな答えも偽りだ。ロシアを屈服させるという目的を隠す煙幕に過ぎない。彼ら中では、誠実さは策であり、すべてはイデオロギーで、政治とはすべてゼロサムゲームだ。がまだ言葉を信じるの西側とは対照的に、ロシアは行動にしか反応しない。ウクライナ紛争でも、唯一効果をもったのは経済制裁だけだ。
しかし、ロシアの孤立主義を放っておくわけにもいかない。繁栄するロシアはすべての人の利益になる。ロシアと交渉する役目を担う代表たちは、心からの訴えや協力への誘い、お世辞などがすべて無視される屈辱と困惑を覚悟したほうがいい。
This article first appeared on the Atlantic Council site.
Andrew Kornbluth, a UkraineAlert contributor, holds a PhD in history from the University of California, Berkeley.
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