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韓国の出生率は上がるのか?若い韓国人にとって結婚は不可能という現状
2016.10.3(月) 李 鍾和
韓国政府は出生率向上のための施策に取り組んでいるが成果は疑わしい(写真はイメージ)
(ソウルより)
韓国は今、人口統計学上の大きな課題に直面している。韓国の合計特殊出生率(女性1人ごとの子供の数)は1.24と、世界で最も低いレベルだ。移民なしに人口を維持していくのに必要な率は2.1であるが、それと比べてもかなり低いことが分かる。その結果、韓国の人口は急速に高齢化している。そして政府はこの現状に取り組もうとしているものの、いまだに正解を持ち合わせていないようだ。
出生率が低くなっている先進国はよくある。以前、韓国が経済成長を遂げる前は、子供を多く持つことが高齢者世代の保険になると思われていた。出生率も、今と比較してもかなり高かった。世界銀行のレポートを見ても、1960年までは6を超えていたことが分かる。しかし、韓国経済が成長して、子供を育てる費用が上がり、女性の就労率も上がっていく中で、出生率は著しく減少し、1980年代には2を切るようになった。
当初、出生率の低下は経済成長にとって恩恵でもあった。世帯の貯蓄は増え、子供の教育により多くを投資することになった。1980年には6%に過ぎなかった女性の大学入学率は、2015年には81%まで上がった。
しかし最近では、主要な労働年齢人口の減少によって経済成長が損なわれ、国民年金制度に対してやがて非常に大きい圧力をかける脅威になっている。
韓国政府は、出生率を上げることを目的とした一連の政策でこれらの課題に取り組もうとしてきた。最近の政策には、父親の育児休暇制度や、3人目の子供に対する優先的な保育施設への入園許可、不妊症の治療に対する補助金などが含まれている。
しかし、これらの政策によって出生率が上がるかというと疑わしい。理由は簡単だ。これらの政策は、国民が子供を作ることを遅らせたり諦めたりする経済的な障害に対して十分に取り組めていないからだ。
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経済的な障害の1つは教育費用だ。韓国人の親は、子供に成功のチャンスを与えるために喜んで多くの投資をする。2015年には、彼らは可処分所得の7%を、子供の初等教育・中等教育のときの家庭教師代に払っている。
彼らは大学教育費用としても、馬鹿げたほど高い費用を払っているが、大学教育はもはや人生における成功を保証しない時代になっている。実際、大学教育に対する個人消費率は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中で韓国が最高だ。アメリカよりも高い。こういった状況によって、親が経済的に育てられると感じる子供の数は制限されるのだ。
最近の若い韓国人にとっては、結婚ですら実現が難しい。住宅費が高い上、若者の失業率も高いためだ。大学を卒業した層の中ですら失業率は高い。1996年に43万5000だった韓国における結婚式の数は、2015年には30万2800まで落ち込んだ。婚外子の割合が2%に過ぎないこの国にとっては、結婚が減少するこの傾向は、出生率に大きな影響を与える。
また、女性は出生率の上昇にあたって、最大の障壁にぶつかる。蔓延するジェンダーの不平等は、経済的でクオリティの高い保育制度が不足していることとあいまって、韓国女性たちに、結婚・出産後に労働市場から撤退することを強いている。
男性は柔軟性のない勤務時間で長く働くのに対して、女性は介護に対して不当に大きな役割を引き受ける羽目になっている。2014年の調査によると、韓国人女性は平均で、1日あたり3時間28分を家事・介護に費やすのに対し、男性は47分しか費やしていないことが分かった。また男性は、2015年に育児休暇を取った者の5.6%にしか過ぎない。
新しい政策がこの割合を引き上げたとしても、それだけでは十分ではない。結局のところ女性は、育児休暇の不公平と戦っているだけではない。出産の後に仕事を離れる者は多い。その多くは離れたくないと思っているにもかかわらず、だ。韓国産業連合会の最近の調査によると、独身女性回答者のうち38%は、「仕事と両立させるのが大変なのではないか、仕事をなくすのではないかという懸念」を理由に、子供を欲しくないと言っている。出生率向上のための政府の政策をプラスに評価しているのは回答者の3分の1に過ぎなかった。
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韓国政府は、出産のための障壁を低くすることを目的とした、もっと総合的な政策を採らなくてはならない。特に女性の直面する「キャリアか家庭か」という二択を解消するための、より多くのサポートが必要だ。
その鍵となるのは、より柔軟性の高い職場環境を提供することや、もっと様々な働き方を受容する企業文化を築くこと、私設・公設を問わず保育施設に対するアクセスを確保すること、である。
この目的を達成するために、移民が家政婦や介護士として働けるようにする政策を許可することはかなり役に立つだろう。
韓国はまだ、外国国籍の者に永住権を与えることには保守的な姿勢だ。しかし、育児や家事に対するマーケットのある経済先進国では、高学歴女性は(特に高齢で)より多くの子供を持つ傾向があるというのが現実だ。
日本は日本で、きわめて低い出生率を上げようと努力してきた。子育てにかかる費用を下げ、企業文化を変えていくという不断の努力を通じて、日本の出生率は2005年の1.26から2015年には1.46まで上がっている。
この回復を持続させるために、日本は最近、外国人家政婦を増やす政策をとるという決断をした。この変革は、人口が1億人を割ることを防ごうとする安倍晋三首相の傾倒を反映している。
外国人家事労働者それ自体が出生率を上げないとしても、彼らの存在によって、より多くの女性が出産後も働き続けることが可能になる。例えばシンガポールでは、家族はしばしば、家事や育児のために、住み込みの家政婦をフィリピンやインドネシアといった隣国から雇い入れる。シンガポールは世界で出生率が最も低い国(1.3)の1つであるが、シンガポールの政策は、人口のギャップを埋め、経済を維持するための外国人技能労働者を集めることを可能にしている。
人口動態の変化とその経済的影響は、ある程度は避けられないものだ。しかし政府が、人口動態の傾向を形作り、マイナスの影響を減らすための道はある。家庭の中で人々が幸せに暮らし、働ける環境を韓国が作ることができれば、その家庭の人数は増えていくことだろう。
c Project Syndicate, 2016.
www.project-syndicate.org
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47998
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