米大統領選 初のテレビ討論会は非難の応酬 評価分かれる 9月27日 17時20分 NHKアメリカ大統領選挙に向けた初めてのテレビ討論会が行われ、民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補が、過激派組織IS=イスラミックステートへの対策や日本をはじめとする同盟国の防衛などをめぐって激しい論戦を繰り広げ、非難の応酬となりました。 テレビ討論会は、26日、東部ニューヨーク州の大学で行われました。 この中で、トランプ氏は、オバマ大統領と国務長官を務めたクリントン氏がISの台頭を招くなど中東をかつてない混乱に陥れたと厳しく批判しました。 これに対し、クリントン氏は「トランプ氏はISを打倒する秘密の計画があると言うが、計画などないということだ」と反論しました。 一方、クリントン氏は「トランプ氏は何度も、日本や韓国などが核武装しても構わないと繰り返してきた。アメリカの最高司令官にふさわしくない」と批判しました。 これに対し、トランプ氏は「われわれは日本や韓国などを守っているが、彼らは公平な負担をしていない」と反論し、日本をはじめとする同盟国の防衛などをめぐって激しい論戦を繰り広げ、非難の応酬となりました。 アメリカメディアの中には「大統領にふさわしいのはクリントン氏だけだと証明した」などとしてクリントン氏が上回ったという見方も出ています。 一方で、インターネット上の調査では、トランプ氏が勝ったと思う人がおよそ60%に上るものがあるなど、トランプ氏がやや優勢となっていて、評価は分かれています。 両候補の争いは、次回、来月9日の討論会に持ち越される形となり、今後も激しい戦いが続く見通しです。 討論見守った学生は 討論会が行われたニューヨーク州の大学では、学生たちが集まり、テレビ画面を通じて議論の行方を見守る「ウオッチパーティー」と呼ばれる催しが開かれ、多くの学生たちが参加しました。 参加した20歳の男子学生は「トランプ氏の経済についての話はよかったがクリントン氏の事実に基づいた議論も興味深くもっとしっかり聞きたいと思った。次の討論会も注目している」と話していました。 また、21歳の女子学生は「討論会を聞いてクリントン氏がすべての人たちのことを考え平等な社会を作りたいと考えているのがわかった。クリントン氏を改めて支持しようと思った」と話していました。 両候補の発言を検証 大統領選挙の候補者の発言の真偽をチェックしている団体、「ポリティファクト」は今回のテレビ討論会について、18人のスタッフで発言の検証を行いました。 討論会場近くに設けられたメディアセンターで論戦を見守った「ポリティファクト」のケイティー・サンダースさんは、「両候補の発言を検証したが、過去にも行った発言の繰り返しが多く、驚くべきものはなかった。例えばトランプ氏はきょうの討論会でも、『イラク戦争にかつて反対していた』と主張したが、この主張を裏付ける根拠は見つかっていない」と指摘しました。 そのうえで、「まだ検証は終わっていないが、トランプ氏の発言には、いくつか事実誤認があった。クリントン氏は今のところそうした発言は見つかっていない」と述べ、討論会ではトランプ氏の発言に複数の事実関係の誤りがあったとしています。 「クリントン氏は準備で成果」と専門家 ミシガン大学でアメリカ大統領選挙の討論会を専門に研究しているアーロン・カール氏は討論会のあとNHKのインタビューに応じ、「最初はトランプ氏が攻勢に出たが途中で失速し、クリントン氏が全体的にパフォーマンスを維持していた。クリントン氏が討論会に向けた準備を行ってきた成果だと思う」と述べました。そのうえで「クリントン氏は最大の弱点であるメール問題でも、みずからの過ちを認めるなど、討論会では最善を尽くしていた」と述べ、しっかりと準備をして臨んだクリントン氏が成果を出すことが出来たと評価しました。 一方、トランプ氏については、「クリントン氏の家族に対する攻撃を控えるなど、大統領らしくみせるという最大の目標についてはよい仕事を見せたと思う。しかし特別な準備をしないで自然体で討論に臨むというトランプ氏の戦略はこれまでは通用したが、今回は準備不足という結果になったようだ」と述べました。 そのうえで、今後の選挙戦の見通しについて「今回の討論会がどちらに投票するか決めていない人たちにどれだけ影響があったかはまだわからない」と述べ、今後の有権者の動向を見極める必要があると指摘しました。 トランプ氏優勢とみる専門家も アメリカ政治が専門のアメリカン大学のキャンディス・ネルソン教授は、NHKの取材に対し、「トランプ候補が優勢だったと思う。真剣な態度で、経済問題を把握していることを示した。これに対して、クリントン候補は、終始守りに入っているように見えた」としています。そして「前半は、印象に残る議論のやり取りはなかったが、後半はトランプ氏が盛り返したのに対し、クリントン氏は優勢を取り戻せなかった」と分析しています。そのうえで、「最初の討論会での劣勢は4年前の選挙の際にオバマ大統領が見せたように挽回は可能だ」として、次回以降の2回の討論会がどう影響するのか注視すべきだという見方を示しました。 米主要メディア「決定的ではない」 今回の討論会について、アメリカの主要メディアは、クリントン氏が優勢だったと評価する一方で、選挙戦を左右するような決定的な論戦ではなかったとも伝えています。 アメリカの新聞ワシントン・ポストは電子版に掲載した社説で、「大統領にふさわしいのはクリントン氏だけだと討論会で証明した」と報じました。この中でワシントン・ポストは、「クリントン氏はTPP=環太平洋パートナーシップ協定など貿易の問題では守勢だったものの、人種や外交などの問題で議論を優位に進めた」と評価しています。 また、アメリカの新聞ニューヨークタイムズも電子版の社説で、「討論が進むにつれてトランプ氏は、クリントン氏との議論に苦しみ、挽回できなかった」と指摘し、クリントン氏が優勢だったと伝えました。 さらにCNNは、討論会のあと視聴者を対象にどちらが勝利したかを質問したところ、クリントン氏が勝ったと感じた人が62%だったのに対し、トランプ氏は27%だったとし、クリントン氏のパフォーマンスがトランプ氏を上回ったと評価しました。ただ、この調査についてCNNは討論会の視聴者は全体的に共和党より民主党の支持者のほうが多い傾向にあるとしています。 一方、ウォールストリート・ジャーナルは電子版で「トランプ氏の議論は不十分だったが、クリントン氏をアメリカの停滞を招いた人物として描き上げることで点数を稼いだ。大統領選挙の焦点は有権者がリスクを承知でトランプ氏の変革を求めるかどうかだ」と伝えています。 またABCテレビは「両候補とも相手をいらいらさせることができることを示したが、勝利のメッセージを示すことはできなかった」と評価しており、選挙戦を左右するような決定的な論戦ではなかったとしています。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160927/k10010708491000.html?utm_int=news_contents_news-main_001
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