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米オハイオ州トレドの選挙集会で演説する共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月21日撮影)。(c)AFP/MANDEL NGAN〔AFPBB News〕
大物強硬派のトランプ陣営入りで北朝鮮に先制爆撃? 元CIA長官ウールジー氏が上級顧問に就任
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47976
2016.9.27 古森 義久 JBpress
米国大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の陣営に、元CIA(中央情報局)長官のジェームズ・ウールジー氏が国家安全保障政策の上級顧問として参加した。
ウールジー氏といえば、米国歴代政権の安全保障関連の枢要ポストを歴任した“大物”であり、これまで外交や安全保障に関して粗雑な発言の多かったトランプ候補の政策を修正し、改善する役割が期待される。
しかしウールジー氏は、北朝鮮の核武装を阻止するための拠点爆撃を主張するなど強硬な保守派としても知られ、トランプ陣営の政策をどう変えるかが注目される。
■トランプ氏の「国防費削減を中止」の主張に賛同
ジェームズ・ウールジー氏(出所:Wikipedia)
9月12日、トランプ候補の選挙対策本部はウールジー氏の上級顧問就任を発表した。これまでトランプ陣営では、外交や安全保障の政策立案を支援するスタッフに著名人や政策実績のある人物はいなかった。そのためウールジー氏の就任は、初めての大物の登場として、ワシントンで一躍注目を集めた。
ウールジー氏は現在75歳。民主党、共和党両政権で安全保障関連の要職に就いてきた異色の人材である。
経歴として最も広く知られるのは、1993年に誕生した民主党ビル・クリントン政権で2年間、CIA長官を務めたことだ。また、2008年の大統領選挙では共和党ジョン・マケイン候補の国家安全保障政策の顧問として活動した。現在はワシントンの民間研究機関「民主主義防衛財団」の会長を務める。
ウールジー氏は、民主党ジミー・カーター政権では海軍次官、共和党ロナルド・レーガン政権では対ソ連軍縮交渉代表、共和党先代ジョージ・ブッシュ政権では欧州通常戦力条約(CFE)交渉大使などを歴任してきた。本来、民主党員だが、その政策は強硬で、むしろ共和党保守派に近い。
同氏は、なぜトランプ陣営に加わることを決めたのかと問われて、「トランプ候補はヒラリー・クリントン候補に比べて、米国の国防について現実的な政策を唱えている。オバマ政権が進める国防費の大幅削減を即座に中止するという方針を明確にしている点を支持する」と述べている。
■「北朝鮮の拠点を爆撃せよ」と提案
2001年9月11日に米国で同時多発テロが起きると、ウールジー氏はテロ勢力への反撃としてアフガニスタンやイラクへ軍事攻撃することを強く支持した。
また、さらに広く知られるのは北朝鮮の核兵器開発の動きに対して「拠点爆撃」を提案したことである。ウールジー氏は2013年6月に開かれた米国議会内での会議で、北朝鮮の核の脅威に対して次のような発言をした。
「北朝鮮は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を装備して米国本土に撃ちこむ能力を獲得した。その核弾頭には、米国本土に撃ち込まれた場合に強力な電磁パルス(EMP)を放射する特殊な核爆弾が含まれている」
「米国が、EMPを放射する核弾頭の攻撃を受けた場合、電力供給をはじめ国家のインフラが壊滅するほどの被害を受け、国家の存亡すら危ぶまれることになる。同盟国への『核の傘』も効力を失う」
「北朝鮮の核武装の脅威をここまで大きくしたのは、米国歴代の共和、民主両党の政権の宥和策、軟弱策の結果である。その脅威への対策としては、拠点爆撃に勝る効果的な方法はない」
ウールジー氏はこんな表現で拠点爆撃案を提起したのである。
当時のオバマ政権は、北朝鮮が米国本土に核弾頭を撃ち込む能力を獲得したことを認めていなかった。だが現在の状況をみると、ウールジー氏の北朝鮮の核開発能力に関する判断は正しかったといえそうだ。
ウールジー氏は現在も、軍事的手段によって北朝鮮の核兵器能力や長距離弾道ミサイル能力を破壊する攻撃を提案している。こうした対外政策が今後トランプ陣営の政策にどのような影響を及ぼすかが注視される。
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