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[グローバルオピニオン]競争、原油から石油製品に
元米NGPエナジー・キャピタル・マネジメント・チーフ・エコノミスト アナス・アルハッジ氏
サウジアラビアは石油市場において圧倒的な支配力を持つ産油国である。その政治・経済的な決定は世界のエネルギー経済学を形作っている。
しかしここ数年、サウジアラビアはアジアで市場シェアを失ってきた。米国がシェール革命を進めるなか、米国市場以外に活路を求める西アフリカ産原油の輸入をアジア各国が拡大しているからだ。
中国ではロシアに市場シェアのかなりの部分を奪われた。中国は、2014年のウクライナ領クリミア半島編入で欧米から経済制裁を受けたロシアの苦境を見透かし、ロシア産原油を有利な条件で確保している。サウジアラビアにとって重要な市場であるインドやインドネシアでも、ロシア企業は下流市場に参入する積極策をとっている。
シェア低下に対し、サウジアラビアはかつての地位を取り戻そうと奔走してきた。増産による価格戦争を仕掛け、弱い競争相手を市場から退場させようとしてきた。その結果、各国は可能な限り増産を続け、原油価格は下落した。(加盟国が協力して原油価格維持をはかる目的の)石油輸出国機構(OPEC)の加盟国同士が価格競争をせざるを得ない状況に陥ったのだ。
OPECのこうした機能不全を映すように、今年4月にOPEC加盟国などがカタールのドーハで開いた産油国会合では増産凍結に合意できなかった。サウジアラビアはイランが減産しない限り、自分たちも減産しないと言い張った。イランはロシアと同様に欧米の制裁によって市場シェアを失っており、増産の姿勢を示していた。
サウジアラビアは原油価格の下落だけではアジアや欧州における市場シェアを回復できないと認識している。同時にシェール革命を背景にOPECの有用性が薄れているとも判断した。
ただエネルギー協力に希望がなくなったわけではない。
サウジアラビアは国営石油会社サウジアラムコの一部民営化を通じ精製能力拡大を計画している。このことはエネルギー市場における競争が、原油から石油製品に移行する可能性を示唆している。そうなれば新たな協力の機会が生まれる。大規模な精製・貯蔵能力を持つ生産国が、施設を持たない生産国から余剰の原油を購入できるようになる。
原油の競争から石油製品の競争への移行は石油市場だけでなく海運業といった関連産業にも大きな影響を及ぼすとみられる。石油製品競争は最終的に石油市場全般の効率性を向上させ、産油国が市場の不安定さの影響を受けにくくさせる公算が大きい。今後はサウジアラビアをはじめ、高度な生産・精製技術を持つ国が石油市場で支配的な地位を手にすることになるだろう。
((C)Project Syndicate)
Anas Alhajji 米オクラホマ大教授などを経て、エネルギー関連の買収ファンド、NGPエナジー・キャピタル・マネジメントへ。
サウジ改革を注視
2014年夏に原油価格が急落して2年。石油市場の新たな秩序が見えない。市場の調整役を放棄したサウジアラビアと、米国で生産が伸びるシェールオイルの我慢比べが続く。長引く原油安は産油国に重くのしかかり、サウジは原油依存からの脱却を掲げる大胆な経済・社会改革に踏み出した。だが、改革を成功に導くには基幹産業の石油部門が強くなければならない。サウジがどのような戦略にかじを切るのか。その行方はサウジが最大の原油調達先である日本にも無縁ではない。
(編集委員 松尾博文)
[日経新聞8月29日朝刊P.7]
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サウジ、原油シェアで苦戦
中国・インド市場、イラクやロシア攻勢 日本の輸入価格は下落基調
世界最大級の産油国サウジアラビアがシェア拡大で苦戦している。欧州に加え、消費拡大が見込まれる中国やインドで2015年と比べ直近シェアを落とした。サウジの輸出量は増えているが、イラクやイラン、ロシアなどが攻勢をかける。シェア拡大のため競争が激化すれば、原油価格下落につながる。
英調査会社FGEが主要12市場を対象に、取得できる直近の輸入量を国や地域別に調査した。サウジの輸出は日量750万バレル強で、15年平均と比べ2%増えた。国際エネルギー機関(IEA)によると16年の需要は前年比で日量140万バレル増加すると予想。けん引役は中国やインドなどだが、サウジはシェアを伸ばせていない。構造改革の途上にあるサウジ経済には打撃だ。
米国に次ぐ世界第2位の原油消費国の中国でのサウジ産のシェアは14.4%と15年と比べ0.9ポイント減。サウジは約5万バレル伸びたが、ロシアが22万バレルも増加し躍進。シェアも14.3%と1.7ポイント増え、首位サウジに肉薄する。FGEのジェネイト・ガザコグル氏は「中国は独立系製油所の輸入が増え、サウジがまかなえる量を超えてしまった」と指摘する。
ロシアは地理的に近い極東の港から出荷でき輸送コストが軽減できるため、中国の製油所からの引き合いが強かった。中東の原油に比べ軽質でガソリンや軽油を精製しやすい利点があり、ロシア産が好まれたようだ。
インドではイラクとイランが攻勢をかける。インドの需要はガソリンや発電用の需要がけん引する。イラクは日量20万バレルと31%、イランは13万バレルと64%それぞれ輸出を伸ばした。日量3万バレルの増加にとどまったサウジと対照的だ。イラクはシェア首位に躍り出た。
サウジが最も苦戦したのが欧州市場だ。輸出量は74万バレルと15年に比べ17万バレル減った。ロシアやイラクに押されている。一方で日本やタイ、台湾、南アフリカでシェアを増やした。
成長が見込まれるアジアは産油国間の競争が激しく、中東やロシア、アフリカから原油が流入。サウジは南東部の油田を増強し生産が拡大。需給を緩ませる原因となった。結果として、ドバイ原油は引き渡し時期が近い期近物が下落。期先物との値差が広がる時期も目立った。
ドバイ原油は日本などが長期契約でサウジから輸入する際の値決めの基準。原油のだぶつきが続き、サウジからの輸入価格が下がっている。丸紅の栃本恵一・石油貿易課長は「サウジの軽質原油の値下げが顕著だ。価格を下げ需要を喚起し競争力を高める狙いだ。シェアを維持するためだろう」とみている。
[日経新聞8月27日朝刊P.18]
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