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メルケル外交、欧州を主導
域内調整、EU本部から独へ 対ロ・トルコなど討議
【ベルリン=赤川省吾】欧州連合(EU)の首脳会合が9月16日に開かれるのを控え、メルケル独首相が域内の利害調整に乗り出した。各国首脳と相次ぎ会談し、対ロシア・トルコ外交や難民対策の討議を主導する。英国がEUから離脱を決めたことで欧州政治の力関係が激変。域内のとりまとめ役がブリュッセルのEU本部からドイツに移りつつある。
26日、メルケル首相はワルシャワを訪れ、中・東欧4カ国との首脳会談に臨んだ。
「財政規律を緩めるべきだ」(ハンガリーのオルバン首相)、「EU軍を創設したらどうか」(チェコのソボトカ首相)、「各国が軍事費を増やすのが望ましい」(ポーランドのシドゥウォ首相)――。会談前の記者会見でドイツを突き上げる各国にメルケル氏は反論せず、黙って耳を傾けた。
中・東欧はドイツが掲げる寛容な難民政策に批判的だ。EUが独仏の大国主導で動いているとの不満もある。ドイツは聞き役に徹して中小国の「ガス抜き」をしたい考えだ。今回の会談もメルケル氏の呼びかけで実現したとされる。
「英国がEU離脱を決めた。残る27カ国はどのように意思決定するのかを考えなくては」。ワルシャワ訪問に先立つ24日、バルト3国のエストニアを訪れたメルケル氏は語った。
ドイツはナチスの反省から戦後、欧州の外交論議をけん引するのを控えてきた。昨年までのギリシャ危機の局面でも、金融支援を巡る会議を切り盛りしていたのは、ユンケル欧州委員長らEUの首脳陣だった。ドイツの発言力は大きかったが、立場はあくまでも「参加国のひとつ」にすぎなかった。
英国のEU離脱で潮目が変わった。会議をEU本部が主導することへの批判が中・東欧を中心とする加盟国で拡大。メルケル氏は結束を維持するために表舞台に立ち、欧州の“議事進行”を担う覚悟を固めた。
EUの調整役を買って出たメルケル氏の外交日程はぎっちりと首脳会談で埋め尽くされた。
26日午後に中・東欧歴訪を終えてベルリンに戻り、北欧3カ国とオランダの首脳と夕食を囲む。翌27日の昼食にはオーストリアとブルガリア・スロベニア・クロアチアのバルカン半島勢を招く。
9月2日にユンケル欧州委員長と昼食をともにし、その日のうちに仏エビアンに飛んでオランド仏大統領に会う。4〜5日は中国で開かれる20カ国・地域(G20)の首脳会議で、ロシアのプーチン大統領と会談する。
EUが重視すべきことについてはすれ違いもある。バルト3国やポーランドはロシアの脅威にどう備えるか、バルカン半島勢は難民対策とトルコのEU加盟を巡る交渉に関心を向ける。北欧諸国は若年層の失業率が高まり極右など反EU勢力が台頭するのを心配する。
とはいえ、「EUの将来を話し合う」(スウェーデン政府)という基本方針では一致する。欧州がさまざまな政策で調整を重ねているという姿勢はアピールできそうだ。
ただ欧州の意思決定プロセスが変わることは欧州統合にはもろ刃の剣となる。首脳レベルで結束を確認できる半面、EUの機能が低下しかねない。「ブリュッセルで首脳会議を開くと視野が狭くなる」。26日にはメルケル氏からEU本部批判ともとれる発言が飛び出した。
英国のEU離脱交渉にも影響を与えそうだ。欧州委などが代表して交渉するのではなく、各国政府が英国と話し合うのが望ましいとの意見が浮上している。「英国と各国政府が閣僚級会合で協議すべきだ」とポーランドのシマンスキー外務次官は日本経済新聞など一部メディアに語った。
[日経新聞8月27日朝刊P.6]
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