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共和党大会のあったクリーブランドで、殺傷能力が高い自動小銃を身につけてアピールする男性。対する民主党は、自動小銃の規制を主張している(撮影/Morgan Freeman)
「銃」強硬トランプ氏を支えている米国人の素顔とは?〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160823-00000229-sasahi-n_ame
AERA 2016年8月29日号
一般人に銃保有の権利を認めている米国でも、その是非は大統領選のたびに争点になってきた。根強い銃規制反対派とは、どんな人たちなのだろうか。
パーン、パーンという乾いた銃声が、青空に響き渡る。体への衝撃もほとんど感じず、約20メートル先の的に10発命中。しかも、借りた22口径のライフルは意外に軽く、価格は120ドル(約1万2千円)程度と値ごろ感さえある。
ニューヨーク・マンハッタンから100キロ北にあるニューヨーク州パインブッシュの射撃場を訪れ、記者は生まれて初めて、ライフルを撃ってみた。きっかけは、米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏の「問題」発言だ。
トランプ氏は8月9日の集会で、「(民主党候補のヒラリー・)クリントン氏は、銃保有の権利を保障する合衆国憲法修正第2条を廃止するつもり」だが、修正第2条を支持する人々が、クリントン氏の当選を阻止するために「できることがあるかもしれない」と発言した。これが、クリントン氏への銃撃をほのめかしたと解釈され、数時間のうちに主要メディアの一部から、「トランプ氏は選挙戦から撤退すべきだ」との声が上がった。
しかし、トランプ氏の支持者である俳優ジョン・ヴォイト氏がただちに、「彼の言葉を曲解するな」と米メディアに反論。トランプ氏が、修正第2条を守ろうという保守派の有権者に熱狂的に支持されていることも改めて浮き彫りになった。
●自衛目的の保有は誇り
銃保有の権利を守ろうとしているのは、どんな人たちなのか。
パインブッシュには、地域のハンター80人でつくる会員制クラブ「ウォーカーバレー・スポーツマン協会」がある。シカやキジなどの狩猟が解禁される9月上旬を前に開かれた月例会をのぞくと、付近に出没している体重250キロのクマを狩猟シーズン解禁の後、仕留めてもいいかどうかなどを手際よく採決し、1時間で終わった。
全米で約3億丁もあるとされる銃を保有しているのは、ここの会員のような人がほとんどだ。会長のカート・ショーバール氏(78)は父親に銃の撃ち方を教わり、5歳の時から愛犬を連れて、トウモロコシ畑を荒らすキジやモグラを撃った。彼の娘にも10歳になる前に銃の扱い方を教え、今では、遊びに来た娘夫婦と一日中、射撃を楽しむなど、純粋なスポーツなのだ。
ニューヨーク州の中部から北部は、どの家庭も銃を保有する。理由の一つが「自己防衛」だ。同氏は、ベッドから2メートルほどの場所にライフルを置いている。
「万が一、強盗が来た場合の自己防衛のためだ。でも、どの家庭にも銃があるからといって、事件は起きていない。銃が人を殺すのではない。悪い人間が、人を殺すのだ。私たちは、修正第2条を誇りに思っている。他のどこの国にもないものだ」
●自動小銃見せ権利主張
ただ、大統領選を取材していて、気になる光景も見かけた。
7月18日から中西部オハイオ州クリーブランドで開かれた共和党大会会場周辺。警察官でもないのにピストルや自動小銃を身につけた一般の男女を見た。同州は、銃器を公共の場で持ち歩いていいため、禁止されているほかの州の若者が勇んで銃器を見せびらかしていたのだ。聞くと、「(憲法修正第2条の)権利を行使して、人々に訴えているんだ」と答えた。
前出のショーバール氏にその話をすると、顔を曇らせた。
「多くの人が集まるような場所で、銃を所持するのは賛成できない。銃を奪って、悪用する人間もいるかもしれないからだ」
銃を持つ保守派の多くは、フツーの市民だ。しかし、自殺や殺人など銃によって命を落とす人は全米で毎年約3万人にのぼる。銃の入手や保有があまりにも簡単なことと、関連がないとは言い切れないだろう。(ジャーナリスト・津山恵子)
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