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民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(左、2016年6月15日撮影)と共和党候補のドナルド・トランプ氏(同6月13日撮影)。(c)AFP/dsk〔AFPBB News〕
こんなに違っていたヒラリーとトランプの公式サイト ナマの1次情報に接して初めて分かること
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47676
2016.8.24 小山 晃弘 JBpress
いよいよ終盤戦に差し掛かってきた米大統領選挙。ここにきて度重なる暴言、失言のダメージでドナルド・トランプ候補が支持率を落としているが、勝負の行方は最後まで分からない。
国内外のあらゆるメディアが「かつてない大統領選」と評するこの選挙戦について、残念ながら日本に居ながら正確で良質な情報を入手することは極めて難しい。
例えば日本のマスメディアは「トランプ旋風」がここまでものになるとは全く予測できていなかった。テレビ・新聞ともに「泡沫候補」「呆れた狂人」といったステレオタイプの人物評を繰り返すばかりで、この大躍進を正確に予想したものはほとんど皆無だったと言って良い。
日本のメディアはあてにならない、となれば、海外のメディアに目を向ければいいのか? これもまた難しい。例えばニューヨーク・タイムズなどは、トランプ氏がいかに下品で人種差別的で政治的に正しくないかをリベラルな白人富裕層相手に繰り返すだけだ。
海外には、日本のようなマスメディアというのは基本的に存在しない。読売新聞の発行部数が約900万部なのに比べて、ニューヨーク・タイムズの部数は約100万部に過ぎない。日本の北海道新聞と同じ程度だ。限られた層に、その層向けのニュースを届けるのが海外のメディアである。そうである以上「中立的な観点」などは望みにくい。
では大統領選の本当の争点を読み解き、結果を占うにあたって、我々はどのような情報に接すれば良いのだろうか。
最も良いのは、左右のメディアの情報を入手、比較吟味し、客観的事実と考えられることを自分なりに考察する──といった方法だろう。しかし、諜報部員でもジャーナリストでもない一般の人たちから見たら、そんなアホみたいに時間がかかることはとてもやってられないぞ、というのが現実だろう。
■公式ウェブサイトという1次情報
ではどうするか。筆者は「1次情報」にあたってみることをお勧めしたい。
「1次情報」とは、誰にも編集・歪曲されていないナマの情報のことだ。例えばトランプ氏が、ヒラリー氏が、講演で何をしゃべったか?「○○氏がこのようなことをしゃべりました」という記事ではなく、演説そのものこそが「ナマの情報」である。歴史学でもジャーナリズムでも、研究や分析の基礎となるのは常に1次情報、「ナマの情報」だ。
「大統領選挙の声を聞きにわざわざアメリカまで行けるか」とお思いの読者諸兄、思い出していただきたい。我々にはインターネットという、国境線を超える情報インフラがあるのだ。
というわけで、以下ではドナルド・トランプ共和党候補と、ヒラリー・クリントン民主党候補のウェブサイトを見比べて見ようと思う。
現大統領バラク・オバマ氏が、選挙戦当時インターネットやFacebookによる少額寄付を用いて大統領選を有利に戦ったことは記憶に新しい。テレビが強い日本ではまだピンとこないが、米国において、既に候補者のウェブサイトはその候補者の「顔」と言っても差支えない重要なものなのだ。
公式サイトには必ず候補者の政策、考え方、思想がにじみ出る。順番に眺めていってみよう。
(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで2人のウェブサイトのスクリーンショットをご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47676)
■ドナルド・トランプ候補のウェブサイト
まずはドナルド・トランプ候補のウェブサイトから。
米Googleから「Trump donald」入力して氏のウェブサイトに飛ぶと、最初に求められるのはスパム防止システムへの署名だ。
このことからも、トランプ氏のウェブサイトがかなりのサイバー攻撃にさらされていることが分かる。
次にトップページ。
シンプルな作りで、特に言うことはない。寄付への呼びかけ、メールマガジンへの登録フォーム、スローガンなどが書いてあるだけだ。
では、最も重要な「POSITION(見解)」について見ていこう。ここは日本で言うマニフェストのようなものだと考えて良い。
トランプ候補の「POTISION」では7つの問題について、彼の見解が書かれている。
・ECONOMIC VISION(経済政策)
・PAY FOR THE WALL(メキシコとの国境に壁を作る)
・HEALTHCARE REFORM(保健制度の見直し)
・U.S.-CHINA TRADE REFORM(対中貿易の見直し)
・VETERANS ADMINISTRATION REFORM(退役軍人省の改革)
・SECOND AMENDMEND RIGHT(修正第2条:銃を持つ権利について)
・IMMIGRANTION REFORM(移民政策の見直し)
全てを説明するのは紙面の都合上不可能なので、かいつまんで説明する。
「壁を作る」「移民政策」あたりでトランプ氏が叩かれているのはメディアの報道などでご存知の方も多いだろう。修正第2条(武装権)については、共和党の昔からの基本路線だ。
「経済政策」と「対中貿易見直し」は、実は彼が中間層から支持されている大きな理由の1つで、ウォール街に象徴されるような“資本主義的アメリカ”と強く対決する政策が書かれている。ここでは政策の具体的な中身は取り上げない。★また項を改めて解説しよう。
■ヒラリー・クリントン候補のウェブサイト
以上、トランプ氏のウェブサイトをご紹介した。次はヒラリー氏のウェブサイトを見てみよう。
上と同じように、米Googleで「Hillary Clinton」と検索する。Wikipediaの次に氏の公式サイトが出てくるので、そこをクリック。すると最初に出てくるのがこの画面だ。
トランプ氏のサイトのようなスパム防止システムかな? と思ったが違う。
「私たちはドナルド・トランプが大統領になるリスクを許容できない!」というメッセージ広告だ。しかも「賛成!」しかボタンがない。これを押さないと次に進まなそうなのでと、りあえず「賛成!」をクリックする。すると、次にはこんな画面が出てくる。
■「ヒラリーを支持してドナルド・トランプの危険に対抗しよう!」
郵便番号とメールアドレスを求められる。これは恐らくメールマガジンへの登録フォームだろうか・・・? ウェブサイトの中を見る前にメルマガに登録することを求められてしまった。
米大統領選の投票券を持たない僕が登録してもご迷惑だろうと思い、とりあえず空欄で「Count me in」を押すと「ちゃんと入力してください」と怒られてしまう。
う〜ん・・・。なんとか右上の「×」を押してサイトに入ることができたものの、「ちょっとユーザーインターフェースがひどいな・・・」と思わされてしまった。
さてさて気を取り直して、ヒラリー候補のトップ画面である。
メルマガへの登録フォームと寄付の呼びかけがあるのは同じだが、いきなり流れ出すのはトランプ氏を揶揄する動画だ(トランプ氏が変な動きをして、それを子供たちが見ている、といった風)。
サイトのコンテンツも至る所に「トランプ、トランプ、トランプ」で、このトップ画面を見ると、イラスト込みでなんと12個ものトランプ氏の顔写真が載せてある。ヒラリー氏の顔写真は1つしかないのに。良くも悪くも、ヒラリー氏がトランプ氏を強烈に敵視していることが伺えてくる。
さて、次は政策だ。ヒラリー氏は「issue(問題点)」という項目で自分のマニフェストを発表している。
しかし、「POSITON(見解)」を7つに絞っていたトランプ氏と比べると、ヒラリー氏の「issue(問題点)」はなんとも多い。その数、実に39個。あらゆる時事問題について氏の見解が述べられている。
その中には例えば
「アルツハイマー病の根絶」
「自閉症への対策」
「野生動物の保護」
など「それって大統領の仕事なのか・・・?」と首を傾げたくなるものも混ざっている。
論点を絞るトランプ氏に比べ、社会のあらゆる問題に対しコミットすると主張しているのがヒラリー氏。ウェブサイトを見る限り、そういった傾向が見られるようだ。
■浮かび上がる政治家としての姿勢、価値観の違い
ウェブサイトに表れている両候補の違いは以下にまとめられる。
・シンプルで、少数の自説を強調するトランプ氏
・取り上げることが「政治的に正しい」あらゆる問題に言及するヒラリー氏。
トランプ氏は、大統領にできることを見極め、少数の論点を重視しようとしているようにも見えるだろうし、合衆国の他の多くの社会問題を無視していると見ることもできるだろう。
一方のヒラリー氏は、取り上げることが“政治的に正しい”多くの問題に言及するあまり、本質的に何を重視しているかを見失っていると見ることもできる。また、それを「視野の広さ」と捉えることも可能だろう。
政策面以外でも、多くの価値観の違いがウェブサイトから感じ取ることができる。アクセス前にスパム防止システムへの協力を求めるトランプ氏、アクセス前にメールマガジンへの登録を求めるヒラリー氏、それぞれの戦略、それぞれの思想がある。
あなたはこのウェブサイトという1次情報から何を読み取り、何を考えるだろうか。
大統領選は米国内の多くの投票者に呼びかけられるイベントだ。ゆえに、中身はほぼ全て平易な英語で書いてある。もしあなたが米大統領選挙に興味があるなら、この「ナマの情報」にあたってみることをぜひともお勧めしたい。メディアの報道だけは決して見えてこなかった多くのことが見えてくるはずだ。
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