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クリントン氏確定申告書公表、連邦税実効税率は34.2%、全体で43.2% トランプ氏2年間税金支払ってないか、かなり小額
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/857.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 8 月 13 日 12:33:20: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

クリントン氏確定申告書公表、連邦税実効税率は34.2%

[ワシントン 12日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の陣営は12日、クリントン氏の2015年の確定申告の内容を発表し、同氏の連邦税の実効税率が34.2%だったことを明らかにした。

連邦・州・地方税を合わせた実効税率は43.2%だった。

副大統領候補のティム・ケイン氏の連邦税実効税率は20.3%(配偶者合わせる)。

米大統領選では、法律で義務付けられているわけではないものの、候補者が確定申告書を公表することは慣例となっている。

クリントン氏の確定申告書は1977年以降、何らかの形ですべて公表されている。

一方、対抗馬の共和党候補ドナルド・トランプ氏はこれまでに確定申告書の公開を拒否してきている。同氏の弁護士は、米内国歳入庁(IRS)による監査を非公開の理由と説明してきているが、IRSは監査中も、トランプ氏が確定申告書を公開することは可能としている。

米政治情報サイトのポリティコは、トランプ氏が1990年代の2年間に税金をまったく支払っていないか、支払っていたとしてもかなりの小額にとどまっていると報じている。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)もこの日、複数の税金関連の弁護士や会計士の情報をもとに、ポリティコの報道が事実の可能性があると報じた。
http://jp.reuters.com/article/usa-election-clinton-tax-federal-idJPKCN10N2A7


 


クリントン氏、15年の確定申告書公開 未公開のトランプ氏を批判
2016年08月13日 11:39 発信地:ワシントンD.C./米国

【8月13日 AFP】米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前国務長官は12日、2015年の確定申告書を公開し、米大統領候補の慣例になっている確定申告書の公開をしていない共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏を批判した。

 クリントン氏のウェブサイト上に公開された確定申告書によると、同氏と夫のビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領には昨年1年間で夫婦合わせて1060万ドル(約10億7000万円)の収入があり、うち360万ドル(約3億6000万円)を連邦所得税として納めていた。

 クリントン夫妻は1977年から毎年確定申告書の内容を公開しており、民主党ではこれまで数回にわたり、この事実を同夫妻の透明性の証拠だと指摘してきた。また民主党の副大統領候補、ティム・ケーン(Tim Kaine)上院議員も12日、過去10年分の確定申告書を公開した。

 しかし不動産王の資産家トランプ氏は、過去数年分の確定申告書が現在監査を受けているとして公開を拒否している。

 クリントン陣営の広報責任者ジェニファー・パルミエリ(Jennifer Palmieri)氏は、「ドナルド・トランプはまやかしの言い訳の影に隠れて、確定申告書を公開するという約束を撤回している」「一体何を隠そうとしているのか?」と述べた。

■クリントン夫妻、収入の内訳は

 クリントン夫妻が得た所得の大半はビル・クリントン元大統領の講演料で所得のうち520万ドル(約5億3000万円)を占め、加えてヒラリー・クリントン氏の著書に対する米出版社サイモン&シュスター(Simon & Schuster)からの支払いが300万ドル(約3億円)あった。

 ヒラリー・クリントン氏は2013〜15年に有料の講演を数十回行ったが、2015年4月に大統領選に立候補したことから、その後は講演活動を停止している。またクリントン夫妻は、同夫妻の名前を冠した慈善団体に100万ドル(約1億円)の寄付も行っていた。

 政治情報サイト「ポリティファクト(Politifact)」によると、1980年の大統領選で当選したロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏以降、過去9回の米大統領選で、共和・民主両党候補全員が、少なくとも前年の確定申告書を公開してきた。

 候補者の大多数は複数年分の確定申告書を公開している。米紙ワシントンポスト(Washington Post)によると、1996年の共和党大統領指名候補ボブ・ドール(Bob Dole)氏は過去29年分を公開したという。また2012年の大統領選共和党候補ミット・ロムニー(Mitt Romney)氏は過去2年分を公開した。

 トランプ氏は今年5月、連邦選挙委員会(FEC)に提出した個人資産の報告書で十分だとしているが、この書類にはトランプ氏の資産や負債、所得の概算しか記載されていない。

 トランプ氏は自分の資産は100億ドル(約1兆100億円)以上あると豪語しているが、この主張を独自に確認できた人は誰もいない。米経済誌フォーブス(Forbes)は、同氏の資産を半分以下の45億ドル(約4600億円)と推定している。

 民主党では、トランプ氏が確定申告書を公開しない理由として、同氏が主張するほどの所得を得ていない、税金を少額しか、またはほとんど納めていない、または慈善事業への寄付をほとんどしていないことが理由ではないかと疑っている。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3097363


 
コラム:トランプ氏、なぜ確定申告書を公開すべきか  

Rob Cox

[ニューヨーク 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が、対立する民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官を支持する富豪たちから、確定申告書を公表するよう厳しく責められている。今回の選挙では格差問題が争点の1つだ。だが重要なのはトランプ氏の納税額が十分かどうかよりもむしろ、彼が富豪であることに関して誠実に情報を発信してきたかどうかが問われている点だ。

4年前の大統領選でも税金の問題に焦点が当てられた。当時の共和党候補でプライベートエクイティのベイン・キャピタル創設者だったミット・ロムニー氏は、11月の本選の2カ月前に確定申告書を公表し、2011年の実効税率が比較的低い14.1%にとどまっていたことが判明した。その上に、ロムニー氏が米国民の47%が連邦税を支払っていないと不満を漏らした姿を撮影された動画が出回り、物議を醸すおまけまでついた。

ロムニー氏の確定申告書では、慈善団体に多くの寄付をしていたことや保有資産が宣伝通りだったことも分かったが、同時に平均的な勤労者に比べると納税負担が少ない実態が浮かび上がった。

こうした要素からは、大統領候補が確定申告書を公表することがいかに大事かをあらためて確認できる。実際1973年以降、すべての大統領候補は公表しているのだ。それによって有権者は、どの候補者が自身の資産の取扱いについて正直に話しているかを判断する、ほかにはない機会が得られる。

トランプ氏の場合はどうか。彼を支持する雇用環境に恵まれていない白人層が一致して問題にするのは貧富の差の拡大かもしれない。それでもトランプ氏が選り抜きの資産家という立場でなお、有権者の信頼に足るのかどうかが大事になる。特に自ら主張する90億ドルという純資産は、フォーブス誌が彼の所有不動産や事業をもとに推計した金額の2倍にも上るだけに、言い分が本当かどうか証明できるのは確定申告書しかない。

そこで、先週の民主党大会に登場してクリントン氏支持を表明した3人の富豪の存在が大きな意味を持ってくる。

1人目は投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKa.N)を率いる著名投資家のウォーレン・バフェット氏だ。同氏は、確定申告書公表問題でトランプ氏を挑発し、この問題で議論するために「今から選挙までの間いつでも、どこでも会う」と語った。バフェット氏の資産の大半はバークシャーの「A株」をはじめとする上場企業株で、資産家としての公正さに一片の傷もない。

2人目は、米プロバスケットボールチームのダラス・マーベリックスを所有するマーク・キューバン氏。ABCの番組のおかげでトランプ氏同様にテレビの人気者であるキューバン氏は、大統領選の激戦州の1つであるペンシルベニア州のピッツバーグにおける集会で、クリントン氏の支持を打ち出した。このキューバン氏も、トランプ氏に確定申告書を公表するよう何度もツイッターに投稿している。設立したブロードキャスト・ドット・コムを1999年にヤフーに売却して57億ドルを手に入れたキューバン氏はもちろん何らやましいところはない。

最後のマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は、民主党大会でトランプ氏を「ペテン師」呼ばわりした。ブルームバーグ氏は、市長在任中に改訂を加えた形であるものの、確定申告書を公表している。

この3人はいずれも資産家として正確な情報開示の実績を踏まえてトランプ氏を攻撃していることが重大だ。

右派と左派の双方が格差拡大に異議を唱える異例の事態となっている今回の選挙では、大統領候補は保有しているという資産額が正しいと証明することを迫られている。だからトランプ氏が確定申告書の公表をためらえば、富裕層と低所得層のいずれからの支持も低下しかねない。

●背景となるニュース

*著名投資家で富豪のバフェット氏は1日、ネブラスカ州の集会で、トランプ氏に確定申告書の公表を求めた。

*トランプ氏は、内国歳入庁(IRS)の監査が完了するまで確定申告書は公表できないと説明している。

*これに対してバフェット氏は自身の確定申告書も監査中だと説明。「わたしもトランプ氏も申告書を持参し、国民から質問を受けることができる」と語り、いつでもトランプ氏と喜んで会うつもりだが、トランプ氏はIRSではなく有権者を「恐れている」と指摘した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

スライドショー:トランプ氏の選挙戦


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Donald Trump holds babies at a campaign rally in Colorado Springs, Colorado.
REUTERS/CARLO ALLEGRI

【中国の視点】「一人っ子政策」は失敗か、2100年の中国人口は6億人まで減少も 2016年 07月 01日
アングル:大量失業による中国社会不安は杞憂か 2016年 06月 24日
コラム:米アルファベット、必要なのはスピンオフ加速か 2016年 07月 29日
http://jp.reuters.com/article/usa-election-breakingviews-idJPKCN10E0DC?sp=true
 

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コメント
 
1. 2016年8月13日 17:47:32 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[570]
『from 911/USAレポート』第722回

    「トランプ陣営の自壊と低調な大統領選の現状」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(冷泉彰彦さんからのお知らせ)

<その1>

『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』(日本経済新聞出版社刊)という本が出版さ
れることになりました。発売は少し先で、8月26日。定価は本体1500円(+税)
です。2008年に同じタイトルで出した新書本を全面的に改稿した「アップデート
版」です。最新の「ヒラリー対トランプ」の対立構図と、その背景にある「対立軸の
動揺」に関して議論を整理してみました。併せて、建国以来のポピュリズムと対立軸
の歴史、そして両党のカルチャー比較論についても、2016年の同時代の観点から
再整理をしております。ご期待ください。

<その2>

もう一つのメルマガ、「冷泉彰彦のプリンストン通信」(まぐまぐ発行)
http://www.mag2.com/m/0001628903.html
(「プリンストン通信」で検索)のご紹介。

JMMと併せて、この『冷泉彰彦のプリンストン通信』(毎週火曜日朝発行)もお読
みいただければ幸いです。購読料は税込み月額864円で、初月無料です。

直近2回の内容を簡単にご紹介しておきます。

第127号(2016/08/02)
「障がい者施設殺傷事件をどう受け止めるか?」
「アメリカの『公立大学無料化』は可能なのか?」
「党大会後の米大統領選、何とも低調な論戦の現状」
「フラッシュバック71(第109回)」

第128号(2016/08/09)
「生前譲位問題を考える(続き)」
「東京裁判否定論と日米同盟には整合性があるのか?」
「フラッシュバック71(第110回)」
「Q&Aコーナー」

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 ■ 『from 911/USAレポート』               第722回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 7月28日に閉幕した民主党大会は、オバマ大統領、バイデン副大統領など錚々た
る「オールスター」が登場して盛り上がった一方で、ヒラリーのライバルであるサン
ダース氏は、「大人の知恵」で自身の支持者をヒラリー支持に向けるように仕向け、
とりあえず党の分裂は回避されました。

 ということで、8月からは本選モードに突入したわけですが、選挙戦は全く盛り上
がっていません。その反対に、トランプ陣営では「自壊」としか言いようのない混乱
状態にあります。週刊誌の『タイム』は、「ペンキで描いた(?)トランプの顔」が
熱で溶けて流れ始めているようなイラストを表紙にして、そこに「メルトダウン」と
いうコピーを入れていましたが、正にそんな状態になっています。

 問題の発端はイスラム教徒の戦没米兵一家の問題です。民主党大会の最終日(28
日)にイラクでアメリカ兵の息子が戦死したイスラム教徒のヒズル・カーンという人
物が、夫人を伴って登壇してスピーチを行いました。そんなに長いスピーチではなく、
内容も「自分たち移民を受け入れてくれたアメリカの価値観へのリスペクト」を語り、
その上で「息子の戦死」という「犠牲」を語り、そしてトランプに対して「常にイス
ラム教徒への中傷を続けた」と批判した上で、ポケット版の「合衆国憲法」を取り出
して「あなたは憲法を読んだことがあるのか?」と迫った、それ以上でも以下でもあ
りません。

 ちなみに、カーン夫妻はパキスタン出身で、パキスタンの法学校で知り合って結婚
した後に、米国に移民しています。カーン氏はハーバードで法学修士を得ていますし、
息子の戦死後はアーリントンの国立墓地関連の団体に参加したり、その一方でパキス
タン向けの「VOA(アメリカの声)」放送にも参加しています。つまり、大変なイ
ンテリであり、アメリカにとっての、そしてアメリカ軍にとっての「愛国者」である
わけです。

 そのカーン氏を民主党として引っ張りだしたというのは、勿論、極めて政治的な人
選ですが、それも別に驚くような「仕掛け」ではありません。例えばヒラリーの側近
中の側近と言われるフーマ・アバディーン女史はパキスタン人とインド人の両親があ
りますが、彼女のような「国際的な人材」を使うというのが、ヒラリー流であるし、
その延長上でカーン氏というのが出てくるのは極めて自然です。

 ところが、これに対してトランプは、このカーン氏に対して猛然と批判を開始した
のでした。例えば「誰があのスピーチを書いたんだ?ヒラリーのスピーチライターか
?」などという暴言、そして「壇上で発言しなかったカーン氏の奥さん」のことを
「イスラム教では発言が禁止されていた」などと中傷するという具合でした。

 この一件は、かなり決定的であり、ここから「共和党内でのトランプ離れ」がトレ
ンドとして加速することになりました。一時、トランプの次男であるエリック・トラ
ンプ(兄と姉同様に、トランプ・オーガニゼーションの上級副社長)が「親父は謝っ
ています」と述べて話題になったことがありますが、すぐに「間違い」だということ
が判明しています。つまり、トランプは謝っていなかったのです。と言いますか、今
でも謝罪していません。

 これは、大問題になりました。トランプは、以前に共和党の重鎮であるジョン・マ
ケイン議員(上院、アリゾナ)に対して「捕虜になったのにどうして英雄視されるん
だ?」という中傷をして大問題になったことがありますが、今回は捕虜ではなく、戦
没者一家への中傷ということになるわけで、余計に人々の不快感をかき立ててしまっ
たのです。

 その後は、もう日替わりで「トランプのスキャンダル」が連続で出ています。順不
同で列挙してみますと、

・議席維持を目指すライアン下院議長、マケイン上院議員の予備選を『支持せず』
・メラニア夫人のモデル時代のヌード写真をNYのタブロイド紙が連日報道
・そのメラニア夫人に関しては米国内で違法就労の可能性という報道
・演説会で泣いた赤ん坊に退出を命じる
・「長女がセクハラにあったら?」という質問に「転職したらいい」と答えて炎上
・「日本人はアメリカが攻撃されても家でソニーのTVを見ているだろう」という日
本批判
・オバマとヒラリーは「ISISの共同創立者」という発言

 ということで、全く止まる気配がありません。この内、奥さんのひどい写真が掲載
された件は、トランプの責任ではありません。ですが、FOX・ニュース・コーポレ
ーション系列の新聞に、ここまで「ひどいこと」をされて黙っている、つまり「将来
のファーストレディー」を「守る行動」が取れていないというのは異常です。「自分
と結婚する前の話だし、ヨーロッパの人はこういう写真が好きだから」と発言してい
ますが、呆れた話です。

 また、日本批判も、こうなると「日米安全保障条約」否定論としか言いようがない
わけで、見過ごすことができるものではありません。オバマが「ISIS」創立者だ
というのも、その理由がふるっていて「みんながISISと言うのに、オバマだけが
ISILと言っていて怪しい」というのですから、お話になりません。

 どうして、こうなるのかというと次のような「負のスパイラル」に入っていると見
ることができます。

 まず、本来の大統領選というのは党大会で「党内の団結」を確認するわけですが、
それは予備選を戦ったライバルとの「怨念の解消」をするという意味合いだけではあ
りません。そうではなくて、党大会以降の本選の選挙運動というのは「11月の巨大
な同時選挙」へ向けて、大統領候補が上下両院の議員候補、そして改選のある州では
知事候補とも一緒に遊説をして「挙党態勢」での選挙戦を続ける、これが本来の「本
選の選挙運動」になるわけです。

 今回の共和党では、この「挙党態勢」ができていないのです。例えば、今月上旬に
トランプが言い放った「ライアン下院議長を支持せず」とか「ジョン・マケイン上院
議員を支持せず」というのは、この「挙党態勢」を崩壊させるという意味で、正に
「政界激震」ということになったわけです。

 ちなみに、ライアン議長については、トランプは再度「支持」を言明しましたし、
8月9日(火)に行われた、その予備選ではライアン議長は80%以上を獲得して圧
勝しましたから取り敢えず「事なきを得た」格好ですが、マケイン議員に関しては8
月30日の予備選の帰趨が気になるところです。

 さて、そんなわけで各州の上下両院や知事などの選挙戦と、トランプの選挙戦は
「連動しなくなって来ている」わけですが、それではトランプは何をやっているのか
というと、全国を遊説して回っているのです。では、ヒラリーとのデッドヒートを繰
り広げている、俗に言う「スイング・ステート(中道州)」を必死に回っているのか
というと、必ずしもそうではなく、自分の支持者の多い街から「コール」があると出
かけるというようなことをしています。

 そうなると、要は「自分の個人ファン」を集めた集会を渡り歩くだけになってしま
うわけです。そこには知事や議員が来て、それぞれの州の事情を踏まえた政策演説が
期待されるということはないわけで、全く地に足のついていない「エンターテインメ
ントとしてのトランプ節」を期待する群衆がいるだけという「場」になるわけです。

 そんな中で、「何度も聞いたネタ」では「受けない」わけですから、「新ネタ」を
披露する、そうすると、「ウケ狙い」でどんどん暴言・放言がエスカレートするとい
う、そうした回路に入っているのです。「負のスパイラル」というのは、そういうこ
とです。

 その結果として、更に党本部との距離、各州の議会議員候補、知事候補との距離が
できるということになります。実は、そうした「挙党体制の選挙戦」の方は、マイク
・ペンス副大統領候補(インディアナ州知事)はコツコツやっているようなのですが、
いかんせん、目立ちません。またトランプの「相棒」であるペンス候補が「挙党態勢」
を作ったからと言って、トランプと共和党政治家の溝が埋まるわけでもないのです。

 例えば、問題の発端である「カーン氏」の一件では、ペンス候補は早々に「カーン
氏をリスペクトすべき」だという発言をしています。ですから、ペンス候補が各州を
遊説で回る分には何も問題はないわけです。ですが、いくらペンス氏が「トランプの
埋め合わせ」をしても、それでトランプの暴言が帳消しになるわけではありません。

 どの選挙区でも、対立する民主党候補が「トランプ批判」をするわけで、そうなる
と共和党の候補としては、中間層の票を取るのは難しくなります。実は、こうなるこ
とは春先から分かっていたわけで、だからこそ、様々なトランプ降ろしが企図された
わけですが、不発に終わって来たわけで、現在はその「ツケを払っている」状態とい
うことになります。

 共和党の全国委員会のランス・プリーバス委員長といえば、6月の時点で「トラン
プを統一候補にして党の団結を」という方向に動いた人物ですが、そのプリーバス氏
が今は「トランプは夏休みを取って黙っていて欲しい」と言ったとか言わないとかい
う話になっています。そんな中、公然と「上院の過半数が民主党に行くかも」という
ことが囁かれ始めているのです。

 そんな状況は、世論調査のデータに如実に現れています。例えば、政治サイト「リ
アル・クリアー・ポリティクス」の集計では、

(単純な支持率平均)  ヒラリー 47.5% 対 トランプ 41.2%
(獲得選挙人数推計)  ヒラリー   362 対 トランプ   176
(同じく、僅差州を除外)ヒラリー   256 対 トランプ   154

 とヒラリーが大きくリードしています。ちなみにこの選挙人というのは、270が
当選ラインですから「僅差州を除外」して256、「僅差州も入れた単純合計」で3
62というのは、かなり優勢ということです。「僅差でヒラリー優位」という州の選
挙人合計が106ある中で、14を取ればもう当選だからです。

 では、そのヒラリーは威風堂々とアメリカの将来を語っているのかというと、演説
会ではそうなのでしょうが、全国レベルのメディアからは、そんな様子は伝わっては
来ていません。その反対に、ヒラリーの方もスキャンダルがチョロチョロと出ている
のです。

 一つは、オバマ政権として「イラン核合意」の一部として、「スパイ容疑で拘束さ
れていたアメリカ人」の身代金として、400ミリオン(約404億円)を払ったと
いうことが明らかとなっています。これには、トランプだけでなく、共和党の軍事タ
カ派なども怒っています。要するに「ヒラリーの国務長官時代から模索されて来たイ
ランとの交渉の結果」だというのです。

 この400ミリオンの支払いというのは、単なる噂ではなく事実だと国務省も認め
ていますが、オバマ政権としても、そしてヒラリーの陣営としても「これは身代金で
はない」としています。要するに1979年のイラン革命で、親米のパーレビ国王体
制が崩壊して以来の、イランと米国の確執の中で、イランが長年要求してきた「米国
としてイランから不当に獲得した利益」の返却だというのです。

 もう一つは、ビル・クリントンの主宰している「クリントン・イニシアティブ」と
いうNPOがあります。国際的なスケールでカネを集めて、貧困対策や、環境問題な
どで「イニシアティブを取る」という目的の財団ですが、この「財団マネー」とヒラ
リーの大統領選出馬というのは、いずれ「何らかの問題になる」ことは指摘されてい
ました。

 ですから、出馬表明の時点でヒラリーは「夫の財団には一切関与しない」というこ
とを表明しているのです。今回は、その財団のスキャンダルが出たのですが、具体的
にはヒラリー側近のアバディーン女史と、もう一人の側近であるシェリル・ミルズ女
史が関与して、「財団への高額寄付」を行ったレバノン人について「米国の駐レバノ
ン大使への面会を口利きした」というものです。

 さて、この「400億」とか「レバノン」ですが、共和党陣営としては「ヒラリー
の疑惑深まる」などということで、一部には問題視する向きもあるのですが、材料と
しては「決定的」なものではありません。どちらも、悪く言おうと思えば言えるが、
党派的な利害でモノを言う人以外には、それほどインパクトを与える材料でもないの
です。

 うがった見方をすれば、トランプ陣営が「メルトダウン」気味なのをいいことに、
このタイミングで、ヒラリーの「マイナーなスキャンダル」を小出しにして世論に
「消化」されることを狙っている、そんな感覚もあります。ヒラリー陣営が意図的に
やっているというよりも間接的に民主党を支援したいメディアがそうしているのかも
しれません。

 いずれにしても、「コントロール不能な暴言の連続」で自壊気味のトランプ陣営、
マイナーな「スキャンダル」を吐き出している格好のヒラリー陣営のどちらにも、将
来のアメリカのあるべき姿、世界のあるべき姿を語る、あるいは議論する雰囲気はあ
りません。全体として、極めて低調な選挙戦になっているというのは、そういうこと
です。

 では、どうしてそんな「低調な論戦」が許されているのでしょうか? それはアメ
リカの経済が好調ということがあるからです。7月の雇用統計が驚異的に良かったの
を受けて、株は再び堅調となっています。リーマンショック以来の景気の戻りについ
ては、その「遅さ」が世論の怒りを買ったわけですが、ここへ来て、この8年間には
全く無かったような「安堵感」が漂っているのです。

 そんな中、人々の間には「必死になって変化を求める」心情も、「景気と雇用を中
心に不満をぶつける」という心理も弱まっています。それが低調な選挙戦を支えてい
るのだと思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ
消えたか〜オーラをなくしたオバマの試練』。訳書に『チャター』がある。 最新作
は『場違いな人〜「空気」と「目線」に悩まないコミュニケーション』(大和書房)。
またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。


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