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Photo: wnct
2012年に米国家安全保証局 (NSA)の元幹部ウィリアム・ビニー氏は、国民監視体制の拡大とその危険性について告発のかたちで警告を発した。それは世界に衝撃を与えた、エドワード・スノーデン氏によるPRISM監視システム(注1)の告白の1年前のことである。そのビニー氏が再び米国を揺るがす衝撃的な事実を語った。
(注1)PRISM監視システムはNSAがアップストリームと呼ばれるインターネットと電話回線監視システムを補完する目的で、2007年から運用する通信監視システム。 Google、Yahoo、Apple、AOL、Skype、You Tube、など9社のSNSを対象にメールやテロ関連情報を収集している。存在は公表されていなかったがスノーデンの告白により、政府も存在を認めている。アップストリームでインターネットのほぼ全てがSNS企業のサーバーにアクセスする途中で監視されるので企業がサーバーへのNSAの直接アクセスを許可しなくても全く問題はない。
それによると、クリントン氏が削除した電子メールはNSAが全て記録しており、FBIはいつでも入手可能である。さらに、民主党の機密情報を記した電子メールを流出したのはロシアではなく、クリントン氏の国家機密情報の取り扱いに不満と危機感を持つ米諜報員である可能性を示唆した。
NSA 情報収集システム
ウィリアム・ビニー氏は、30年以上にわたりNSAに勤務、かつてNSAの暗号解読分析のトップであり、情報監視システムの開発者とも言われている人物である。NSAが情報を入手可能な強い権限を与えられたのは、2001年の同時多発テロ事件直後に成立した「愛国者法」(注2)からである。
(注2)2011年10月26日、9/11によりジョージ・ブッシュ大統領が署名した議会制定法(Patriot Act)。米国内の政府機関の情報収集規制を緩和した。2011年にはオバマ大統領が盗聴を合法化するなどの強化策を盛り込んだ愛国者法の延長に署名した。
FBI、CIAや他の政府機関がNSAから情報を入手するには裁判所命令が必要であったが、2008年法改正で、裁判所命令なしで情報を入手することが可能となった。NSAのデータベースにアクセスして、FBIや CIAは「監視下にあるテロリストや疑いのある人物」に関する情報を入手していることは、ビニー氏だけでなく、ロバート・ミュラーFBI元長官の上院司法委員会での公聴会でも明らかにされている。
ミュラー氏は「もしFBIが必要とすれば、今すぐにでもデータベースにアクセスし、全てのクリントン電子メールと民主党全国委員会幹部たちのメールを入手できる。」と指摘している。
FBIがクリントン氏を不起訴
FBIは、クリントン氏が国務長官在任中に公務で、機密メールを私用サーバーで通信を行っていたことに対し、「軽率な取り扱いを行ったが刑事訴追する根拠がない」として不起訴処分にした。ビニー氏が指摘するように、 FBIはNSAデータベースから「消えたメール」を入手可能であれば、FBIはすでに入手していることになるので、何らかのクリントン氏を起訴できない理由があるとしか考えられない。
その理由となる背景は次のふたつである。クリントン財団と深い利権関係にある政治家や政府機関関係者の構造とコミーFBI長官が取締役を務めているHSBCとクリントン財団との関係である。HSBCは麻薬カルテルの資金ロンダリング、人身売買組織の資金ロンダリング、LIBOR、為替、貴金属価格などの市場操作で起訴されてきた銀行である。クリントン氏を起訴すれば、「消えたメール」で暴露されるクリントン財団を通じての汚職問題が米国の政治と司法の基盤を揺るがすスキャンダルとなる。また、これまで、NSAは否定をしてきた個人の全ての通信手段が監視されていることを否定できなくなる。
NSA 内部リークの可能性
クリントン氏が個人サーバーで国家最高機密資料を扱ったことで、GAMMA分類(注3)の情報が危険にさらされたことはNSAが明らかにしている。そのため、NSA内部でクリント氏に対し、情報の扱いに不満を持つ職員が多くいるといわれている。ビニー氏は、民主党の機密情報を含む電子メール流出はロシアではなく、NSA内部の情報リークの可能性が高いと指摘している。
(注3)NSAが扱う国家安全保障に絶大な損害を与える最高レベルの機密情報。
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