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トルコのクーデターは何の「前兆」なのか? いよいよ複雑怪奇化する世界情勢 ドイツとの不穏な挑発合戦(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/796.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 05 日 11:24:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


トルコのクーデターは何の「前兆」なのか? いよいよ複雑怪奇化する世界情勢 ドイツとの不穏な挑発合戦
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49374
2016年08月05日(金) 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 現代ビジネス


7月15日、トルコで青天の霹靂のようにクーデターが起こった。


そのニュースがドイツで大々的に流れ始めたのが夜の10時頃。ドイツにはトルコ系移民が300万人も暮らすため、トルコは常に身近な存在だ。美しい地中海の沿岸で休暇を過ごすドイツ人も多い。したがって、クーデターのニュースは、週末気分でくつろいでいたドイツ人に大きな衝撃を与えた。


エルドアン政権に不満を持つ軍の分子が起こしたと言われるクーデターは、しかし、あっけないほどすぐに制圧された。


そして、この時点でのドイツ政府の意見は、クーデター側を非難するものだった。クーデターは、民主主義で選ばれたエルドアン政権の転覆を狙った悪辣なものとされた。つまり、ドイツ政府のエルドアン政権支持が確認されたのである。


ところが、まもなくエルドアン大統領は、反政府勢力を次々に粛清し始めた。それに伴い、ドイツ政府は速やかにポジションを変えた。21日、トルコ議会は非常事態宣言を承認し、大統領権限をさらに強化した。同日、それに対してメルケル首相が「大きな懸念」を表明し、それはエルドアン政権への批判と解釈された。


ドイツメディアによれば、現在トルコは、民主主義国家から独裁国家に変貌している最中なのである。


■エルドアン大統領の最大の敵


エルドアン大統領が非常事態を宣言してまで熱心に粛清しているのは、イスラム教の指導者フェトフッラー・ギュレン師のシンパだ。


ギュレン師というのは、元はイスラムのイマームだったが、80年代より政治に加わり、一時はエルドアン氏の同志でもあった。その後、袂を分かち、アメリカに亡命したのが1999年。今ではエルドアン大統領の最大の敵だ。


世界中でギュレン師のシンパの数は、800万人とも1000万人とも言われている。ドイツにも、もちろん大勢いる。


ギュレン師の活動や信条についての情報は、私が得られる範囲では矛盾しているものが多い。彼は世俗主義者で、政教分離が原則のはずのトルコでエルドアン大統領がイスラム宗教色を強めたことに強く反発しているという説があるかと思うと、一方で、実は彼はイスラム原理主義者で、いずれトルコを乗っ取って過激なイスラム教国にする意図を隠し持つという説まで、種々多様だ。


ただ、事実だけを述べるとするなら、ギュレン師は教育に重きを置き、90年代、私立学校や学生寮などを、まずはカザフスタン、キルギスタン、ウズベ キスタン、トルクメニスタンといった旧ソ連邦に作り始めた。


今では大学をも含めた各種教育機関を、世界のあちこちに1000校も経営する。師のシンパには知識層が多いといわれるが、彼の経営する学校がエリート養成を目的とした私立校であることを鑑みれば、これは不思議なことではないだろう。


ギュレン師の影響力は教育部門だけではない。彼は病院、通信社、銀行、保険会社、出版社をも所有する。彼所有のラジオ局やテレビ局は、今やトルコだけでなく、多くの国に拠点を持つ。また、トルコで一番読まれているZaman新聞も彼の会社だ。つまり、報道におけるギュレン師の影響力も甚大なのである。


ただ疑問は、どこからこれらの資金が出ているのかということだ。本人はアメリカに住み、西側メディアとの折り合いも良い。しかし残念ながら、それ以上の詳細について論じる十分な情報を、私は持たない。未だに謎の多い人物なのである。



 アンカラの大統領府前のデモでギュレン師のプラカードを手にする参加者〔PHOTO〕gettyimages


いずれにしても、これらギュレン師の活動が、エルドアン大統領にとって目の上のたんこぶどころか、大いなる脅威になっていたことは確かだ。


ここ1年ほどしょっちゅう取りざたされている「エルドアン政権による強引な言論抑圧」は、ギュレン師の影響下にあるメディアをターゲットにしたものであることは間違いない。


エルドアン大統領は、現在、今回の軍クーデターを画策したのがギュレン師だと主張し、アメリカに身柄の引き渡しを要請している(アメリカがそれに応じることはないだろうが)。


ギュレン師の影響力が強まれば強まるほど、トルコ情勢が不安定になることは確かだ。アメリカは、強く安定したトルコ政権を望まない。自分たちの制御の余地のある方がよい。だから、トルコを混乱させるため、裏で誰かが糸を引いていたのではないかという推測も、もちろん成り立たないわけではない。


とはいえ、今回のクーデターをギュレン師が企て、その背後にアメリカの何者かがいたとするには、クーデターが稚拙すぎる。ひょっとすると、まるで反対で、誰かがトルコ軍に失敗するクーデターを起こさせ、体良くギュレン師潰しが行われたのではないかとさえ考えられるほどだ。


クーデター以後2週間で、ギュレン師のシンパとされる1万8000人が拘束された。そのうち3500人は釈放されたが、約半数には逮捕状が出たという。逮捕者の多くは軍人だが、そのほか、学者、教師、裁判官、役人など多岐に及び、かなりの恐怖政治になっているようにも見える。


また、90人近い外交官が呼び戻されており、その他、4万9000のパスポートが無効にされたというから、外国に出られなくなった人もいるわけだ。


■ドイツがトルコを責める2つの理由


この動きを、ドイツ政府とEUは激しく非難しているものの、拳の上げ方にもう一つ躊躇が見えるのは、もちろんトルコの微妙な立ち位置のせいである。


その一つは難民問題だ。トルコ政府に保護されている中東難民は、250万人を超えるという。その中の何十万人もの人間が、今日も必死でEUへ密航する機会を窺っている。それをどうにかして、トルコ政府に阻止してもらおうと、去年の秋以来、メルケル首相は熱心にトルコ詣でを続けていた。


その努力が実って、ギリシャにいるシリア難民を引き取ってもらう話までがまとまりかけていたのに、今さらエルドアン大統領が“悪者”であったとなると、メルケル首相の戦略のポンコツぶりが浮き立ってしまう。


しかし、もっと困るのは、トルコがNATOの加盟国であり、しかも重要なポジションを占めているという点だ。


たとえばトルコのインジルリク空軍基地は、地中海からもシリア国境からも近く、現在、ISとの戦いの最前線だ。主にアメリカ軍とトルコ軍が使用しているが、ドイツ軍も240人の兵隊を駐屯させている。毎日ここからシリアやイラク北部へ爆撃機や偵察機が飛び立っているのである。



 7月31日、ケルンで開かれたトルコ系移民の集会〔PHOTO〕gettyimages


ところがドイツとの関係がおかしくなりはじめた6月ごろから、トルコ政府は同基地へのドイツ議員や報道陣の視察を認めなくなっており、これがドイツ政府の頭痛の種だ。トルコはNATOの中で、米軍に次いで大きな兵力を持っている。関係が緊張してより困るのはNATOのほうなのだ。


それにもかかわらず、現在、ドイツメディアはすごい勢いでトルコを攻撃している。もちろんトルコも負けていないから、ドイツ・トルコ関係はかなり悪い。


トルコが腹を立てているのは、EUが、トルコが難民を引き取ればトルコ人のEU入国ビザを廃止すると約束していたのにもかかわらず、現在、それを反故にしようとしていることだ。トルコは当然、態度を硬化させ、「だったら難民は引き取らない」と言い出したが、これをドイツの政治家が「トルコの脅迫」と決めつけたものだから、関係はさらに悪くなった。


しかし、一連のやりとりを見ていると、一体どちらがどちらをより多く挑発しているかがよくわらない。EUの挑発もかなりえげつない。


7月31日には、ドイツ内のトルコ系移民が、ケルンでエルドアン大統領支援の集会を行った。約4万人が集まったと言われ、見渡す限りトルコ国旗の波。同時に左翼と右翼の対抗デモもあったため、2700名の警官が出動、放水車まで並ぶ物々しさだった。事前にはメディアがさんざん、暴力沙汰が起こると思わせる不穏な空気を伝えた。


デモ会場の広場に設置されたスクリーンを通じて、エルドアン大統領がトルコからスピーチをするという計画は、ドイツの司法が介入し、認められなかった。トルコ側はこれを、言論の自由の抑圧だとして抗議している。


結局このデモは、事前のいざこざにもかかわらず平和裡に終わったが、しかし、夜7時のニュースではアナウンサーがなおも「しかし、今夜、何があるかわからない」と不吉な予言をした。何かが起こるのを待っているような口調だったが、もちろん、何も起こらなかった。


ドイツにいるトルコ移民の多くは、ドイツで生まれ育っている。彼らはエルドアンを支援していても、今のところ、極めて冷静だ。


ドイツ人が大騒ぎしているもう一つのテーマは、エルドアン大統領がトルコに死刑を復活させるかどうかの国民投票を行うかもしれないことだ。それについて、あたかもトルコが中世に逆戻りするかのような激しい攻撃がなされている。


しかし、だったらアメリカや中国はどうなるのか? アメリカは死刑のある国にもかかわらずドイツの重要な同盟国だし、中国はメルケル首相の言では「ドイツにとってアジアで一番大切な国」である。独中は二国間政府サミットの協定まで結んでいる。死刑のある国が野蛮国なら、世界には日本も含め野蛮国はまだまだ多い。



■これは何かの前兆なのか


さて、では、今後エルドアン大統領が失脚したりすることになれば、ヨーロッパ・中東情勢はどうなるのか?


トルコはNATO加盟国なので、NATO軍は“トルコの治安維持のため”にドッとトルコに流れ込むのか? もしそうなったら、ロシアが黙っているはずはない。そういえば南シナ海では、ロシア軍と中国軍が共同で軍事演習をしたばかりだ。


一方、バルト海諸国やポーランドでもここ数ヵ月、NATOが急速に軍備を増強している。これらの軍拡は、不穏なトルコ情勢と関係があるのだろうか? そもそもトルコをここまで引っ掻き回したのは誰だろう?


1939年、平沼首相は「欧州情勢は複雑怪奇」といったが、今、世界は当時にも増して複雑怪奇を極めている。共通点は、ドイツとロシア(ソ連)が大きく噛んでいることと、日本がまたもや蚊帳の外にいることだろう。


新しく加わったプレーヤーは中国とトルコ。アメリカ、イギリス、フランスは、いったい何を胸にこの光景を俯瞰していることやら……。


こんなことを考えていると、夏の夜長、なかなか寝付けない。


 

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コメント
 
1. 2016年8月05日 18:08:24 : hKRNRNsg7U : ZKs9_WJa1ss[13]
>さて、では、今後エルドアン大統領が失脚したりすることになれば

おいおい、やっと現ビの本音が出たようだが、失脚は難しいんとちゃうか。
きみら一回失敗してるし。

ドイツもトルコも仲たがいしながら内実やっていることはアメリカの締め出し。
トランプが大統領になればそれがさらに加速するが。

ヒラリーが大統領になって世界大戦になる前に各国はやれることをやろうとしている。


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