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米民主党のメール漏洩に陰謀説:プーチンの影
The Economist
2016年8月4日(木)
The Economist
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「他の国の内政に干渉すべきではない」と主張している。だが、他の国を侵略したり、悪辣な政治家に資金を援助したり、恐らくは米民主党とその大統領候補を困惑させるために陰謀を企てたりするのは、同氏の言う“干渉”には当たらないのだろう。
(写真=AP/アフロ)
民主党全国委員会の電子メールを巡るスキャンダルにロシア政府がどのような役割を果たしたか、その目的は何か、そしてこのスキャンダルで誰が一番大きな打撃を受けるのかは、まだ明らかになっていない。分かっているのは、内部告発サイトのウィキリークスが7月22日に、同委員会のアカウントからハッキングされた1万9000件を超える電子メールを公開したことだ(ウィキリークスはこの5日後、ハッキングされたボイスメールも公開した)。
バーニー・サンダース上院議員を支持する人々の間では、同党幹部が予備選挙において、ヒラリー・クリントン前国務長官に肩入れしているとの見方が出ていた。今回暴露された電子メールの一部は、サンダース議員の支持者が抱いていた確信を裏付けるものだった。
極めつけは、「サンダース氏が無神論者だという話を流したらどうか」というある幹部の発言だ。サンダース議員の支持者は憤りをあらわにし、フィラデルフィアの党全国大会で抗議行動を起こす意図を明らかにしていた。
フロリダ州選出の下院議員、デビー・ワッサーマンシュルツ氏は7月24日、混乱の責任を取って同委員会の委員長を辞任した。
ロシア関係の2つの組織が関与か
サイバーセキュリティー会社のクラウドストライクは、すでにロシアの関与を確認している。同委員会は5月に同社に協力を要請していた。同社によれば、ハッキングは昨年夏に始まった。それ以降、ロシア情報機関と関わりがあるとみられる2つの組織が、度々ハッキングを繰り返した。この判断は電子的に残されている手がかりに基づく。他のサイバー調査機関――米国のスパイを含む――も見方を同じくしている。
この2つの組織は、この世界に詳しい人たちが「ファンシーベア」および「コージーベア」と呼ぶもの。後者は国務省、ホワイトハウス、統合参謀本部にサイバー攻撃を仕掛けたと言われる。
ロシアの安全保障を専門とするアンドレイ・ソルダトフ氏は別の仮説を示している。2つの集団のうち1つは民間のハッカーで、もう1つは同社の政府関係顧客だと言うのだ。自分がやったという自称ルーマニア人――ルーマニア語はしゃべれないという――の匿名ハッカーの証言は信憑性が薄い。
プーチン氏は“タカ派”のクリントン氏が嫌い
ウィキリークス――創始者のジュリアン・アサンジ氏はかつてロシアのプロパガンダテレビ局でトークショーの司会を務めていた――は今回のメール漏洩とロシアとのつながりを否定している。ロシア政府も冷ややかに疑惑を全面否定した。
そうであるにもかかわらず、プーチン大統領がクリントン氏を嫌っており、このことがクリントン氏を貶める動機となっている可能性があるとの見方には十分な説得力がある。クリントン氏が2011年に「ロシアの議会選挙は公正に行われなかった」と抗議したことにプーチン大統領は反発。クリントン氏が「(国内の活動家を)煽り」、「(ロシアの活動家に)合図を送った」と非難した。
プーチン大統領の見方に立てば、ソ連崩壊後に生じた混乱の陰には、いつも米国の陰謀があった。モスクワにおいてクリントン氏は総じて、好戦的で経済制裁を声高に主張するタカ派とみなされている。
トランプ氏が抱えるロシア人脈
一方、共和党の大統領候補となったドナルド・トランプ氏はクリントン氏よりもロシアにとってはるかに好ましいと受け止められている。トランプ氏は複数の同盟国との話し合いよりも二国間協議を、国際問題に関与することよりも孤立主義を優先する意向を打ち出している。ロシアの人権無視やその解決に向けた米国の役割に重きを置いてはいない。そしてプーチン大統領にとってとりわけ心強いことに、NATO(北大西洋条約機構)を軽視し、相互防衛義務を履行するかしないかは米国が判断できると示唆している。
見方によっては、これらはすべて、トランプ氏の大統領就任をロシアが後押しする材料となる。陰謀説を唱えたがる人々の中には、トランプ氏の選挙運動とクレムリンとのつながりを疑う者さえいる。その証拠として、トランプ氏のロシアでの事業展開や、プーチン大統領を持ち上げるような発言、側近たちの過去の行ないを挙げる。
例えば、トランプ氏の選挙運動で責任者を務めるポール・マナフォート氏は、元ウクライナ大統領のビクトル・ヤヌコビッチ氏――大統領を解任されたあとロシアに逃亡した――の顧問だった。外交政策顧問の1人、カーター・ページ氏は、ロシアの国営ガス会社ガスプロムとつながりがある。
トランプ氏も同委員会のメール流出問題を冷笑した――その後、驚くべきことに、クリントン氏の私的な電子メールをハッキングするようロシアに促すともとれる発言をした。さらにトランプ氏は、ロシアによるクリミア編入に関する承認を検討する考えを示した。
それでも、ロシアと関わる人材をトランプ氏が多用していることは陰謀ではなく、相関関係によって説明できる。プーチン大統領のために働くのもトランプ氏のために働くのも、罪の意識があってはできないことだ。
ロシアが関与しているとすれば…
ジョージ・ワシントン大学の機関誌「カウンターポイント」の編集者、マリア・リップマン氏によればロシア政府は、同政府が米国政治に大きな影響を与えることはできないと理解している。電子メールの流出にロシア政府が関与しているとするなら、その目的は大統領選においてトランプ氏を有利にするという野心的な試みにあるのではなく、米国の民主主義が安直で多くの欠点を内包していることを、衆目の下にさらすことにあると思われる。
FBIの捜査が進めば、このハッキングが不都合な政治家を暴露するためにクレムリンが採る常套手段――会話を盗聴したり、浮気の証拠となるぼやけた写真を盗み撮りしたり――に類するものかどうか、判明するかもしれない。その意図がどのようなものであれ、クリントン氏よりもトランプ氏のほうが、今回の電子メール・スキャンダルで大きなダメージを受ける可能性が大きいだろう。トランプ氏が困惑するなどということがあリ得るとすればだが。
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