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戦死者冒涜で致命傷のトランプに強い味方現る 保守派論客2人が渾身の力を振り絞って書いた「ヒラリー性悪説」
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/781.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 04 日 00:15:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

米ペンシルベニア州フィラデルフィアで開催された民主党全国党大会で、イラクで死亡した息子について演説し、米憲法の冊子を掲げるキズル・カーンさんと、妻のガザラさん(2016年7月28日撮影)〔AFPBB News〕


戦死者冒涜で致命傷のトランプに強い味方現る 保守派論客2人が渾身の力を振り絞って書いた「ヒラリー性悪説」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47528
2016.8.4 高濱 賛 JBpress


■トランプを刺した「戦死した息子を持つイスラム教徒の父」


 米民主、共和両党の全国党大会が終わり、民主党はヒラリー・クリントン氏、共和党はドナルド・トランプ氏の両大統領候補が正式に決まった。


 11月8日の大統領選投開票日まであと100日弱。本選挙に向けた両陣営のキャンペーンが激しさを増す。


 民主党大会ではバラク・オバマ大統領夫妻、ビル・クリントン元大統領らが次々と演壇に立ってヒラリー氏応援演説を行い、やんやの喝さいを浴びた。


 そうした「重量級スピーカー」と勝るとも劣らぬスピーチをしたのは、イラク戦争で戦死した息子を持つパキスタンからの移民でイスラム教徒の父親だった。


 「トランプさんよ、あなたはこれまで米国憲法を読んだことがあるか。憲法は全米国民の自由と権利を保障している」


 「トランプさんよ、あなたはアーリントン墓地に行ったことがあるか。墓地には米国を守るために戦死した兵士が眠っている。その兵士たちは人種も宗教も異なる者がいる。少数民族もいる。みな米国のために犠牲になったのだ。あなたはこれまでに一度たりとも国家のために犠牲を払ったことがあるか」


■「大年増の厚化粧」vs「愛国シンボル冒涜」の代価


 共和党の有力議員はもとより保守系の政治評論家たちまで絶賛した。ところがトランプ氏はこの演説に反論した。翌日の遊説演説でトランプ氏はこう毒づいた。


 「あの父親のスピーチはどうせヒラリーが雇ったスピーチライターに書かせたものだろう」


 「あの父親が喋っている時に彼の妻は黙ったまま、突っ立っていただけだ。イスラム教では女性は喋ることを許されていないんだろう」


 案の定、これは裏目に出た。


 米国では、戦死した兵士やその遺族をけなすことは最大のタブーだ。なぜか。お国のために命を落とすことは「愛国のシンボル」だからだ。


 公衆の面前、しかも民主党全国党大会の場で、「米国憲法を読んだことがあるか」と言われてよほど癪に障ったのだろうが、それがクリントン氏ならともかく、息子を戦場で失った父親に対して言う言葉ではなかった。


 トランプ氏はまさに「虎の尾」を踏んでしまったわけだ。


 「愛国のシンボル」を冒涜し、返す刀で「イスラム教徒」を差別し冒涜したダブルパンチだったからだ。


 日本では東京都知事選の最中、無所属で立候補していた小池百合子元防衛相をつかまえて「大年増の厚化粧」と揶揄して顰蹙を買った元政治家がいた。その実害は自民党公認候補の惨敗の一端になったかどうか。


 しかしこの暴言自体についての追及はご当人の小池氏からもメディアからもないのは外国から見ると不可解に映る。これがもし米国での発言なら「女性蔑視」「人権侵害」で裁判沙汰になっていたかもれない。


 いずれにせよ、この暴言でトランプ氏が受けた傷は、「大年増の厚化粧」暴言の比ではなかった。


 共和党大統領候補の「公認証書」を手にした直後の暴言だっただけになおさらだった。共和党指導部から上下両院議員に至るまで一斉に批判を浴びせた。


 これまで露骨な人種差別発言、女性蔑視発言を繰り返したトランプ氏だが、今回の暴言の代価は途方もなく高くつきそうだ。


 期せずして、反トランプの保守系「ニューヨーク・ポスト」は、8月1日付け1面にトランプ氏の夫人、メラニアさんの若い頃の一糸まとわぬヌード写真とやらせっぽいレズ写真を一挙掲載した。


 「読者諸兄姉よ、ファーストレディーになりかねない淑女の全裸写真をこれまで見たことがおありか」という見出しが紙面に踊った。保守系メディアからのトランプ氏への「三下り半」だと言える。


 トランプ発言を受けて、同じく8月2日には共和党の中からもクリントン支持を表明する下院議員も現れた。


■世論調査支持率でもトランプ急降下


 各種世論調査では、7月22日時点ではクリントン氏をわずかにリードしていたトランプ氏は、29日以降31日段階ではクリントン氏に6%から9%リードされてしまった。


 支持率はあくまでも「瞬間風速的」なその時々の人気投票。「これが各州ごとに選挙人を選ぶ本選にどのような影響を与えるのかははなはだ疑問」(世論調査を研究してきたシンクタンク上級研究員)だが、有権者はやはり勝ち馬に乗りたがるもの。支持率が全く票に影響を与えないとは言い切れない。


 誰が大統領候補であれ、全米50州は伝統的に両党による「縄張り」が出来上がっている。カリフォルニア、ニューヨークといった大きな州をはじめ東部、西部は民主党が取る。一方、テキサス州など南部、中西部は共和党の地盤だ。


 勝敗を決めるのは、「スィング・ステーツ」(揺れる州)と呼ばれるオハイオ、コロラド、アイオワなどの7州。


 選挙のたびごとに民主党が取るか、共和党が取るか、分からない州だ。その州を獲得した方が大統領選を制するというのがこれまでの経験則になっている。


 現時点ではあらゆる面からクリントン氏有利と言えるのだが、そのクリントン氏にもアキレス腱がある。とにかく好感度が低いことだ。


 その理由として第1位に挙げられているのが「信頼度の低さ」。それに「傲慢」「嘘つき」「既存体制派」「クリントン王朝の女王」といった理由が続く。「頭脳明晰」「経験豊富」「百戦錬磨の闘争心」「女性らしからぬ女性」といった長所が逆に短所になっているわけだ。


■かってのクリントン超側近の「ハルマゲドン」説


 当選すれば、米国史上初の女性大統領になるクリントン氏にトランプ氏が勝つ手立てはあるのか――。


 今回紹介する2冊の本は、その「虎の巻」と銘打った新著だ。


 デック・モリス氏が妻で弁護士兼コラムニストのエイリーン・マクガンさんの協力を得て著した「Armageddon: How Trump Can Beat Hillary」(ハルマゲドン:トランプはこうすればヒラリーを打ち負かせる)。


 モリス氏は1978年、ビル・クリントン元大統領がアーカンソー州知事だった頃から側近の参謀として仕えていた。


 クリントン氏が大統領再選を目指していた当時、選挙対策本部戦略担当を務めていたが、女性スキャンダルで失脚。その後保守系フォックス・ニュースの選挙解説者などを務めたのち、現在はタブロイド紙『エスクワイアー』の政治コラムニストとして終始、かってのボスだったクリントン夫妻についての批判記事を書き続けている。



Armageddon: How Trump Can Beat Hillary(ハルマゲドン:トランプはこうすればヒラリーを打ち負かせる) by Dick Morris & Eileen McGann Humanix Books, 2016
 保守派の重鎮、ウィリアム・クリストル氏などからは「モリスはインテリジェンスは高いが、山師で目立ちたがり屋」とバッサリ切られている。


 モリス氏は「ヒラリー大統領」を阻止せねばならない理由についてこう書いている。


 「2016年の大統領選挙はまさにハルマゲドンだ。ハルマゲドンとは、聖書にある世界の終末における善と悪との大決戦のことを指す。今年の大統領選挙がなぜハルマゲドンかと言えば、選挙結果が米国のこれからを決定する分岐点だからだ」


 「もしヒラリーが大統領になれば、米国の立憲政治は抹殺され、一握りの勢力によって司法制度は独占され、最高裁は左翼が決定権を握ってしまうからだ」


 「それでなくともオバマの7年半はその方向性を固めており、万一ヒラリーがホワイトハウス入りすれば、それは第3期オバマ政権になる。ヒラリーを絶対に大統領にさせてはならない」


 「この選挙は、社会主義的均等、汚職、行政権乱用をストップさせる最後のチャンスだ。米国の経済・社会システムを破壊させる医療保険制度改革(オバマケア)を阻止できる最後のチャンスだ。国境の安全警備体制を強化し、主権を守る最後のチャンス。テロと戦う最後のチャンス。憲法修正第2条(銃保持の保障)を守る最後のチャンスだ」


 「ハルマゲドン」といい、「ヒラリーを打ち負かす手段」といい、見出しは仰々しいのだが、読み進んでみても、具体的な手段は出てこない。その意味では羊頭狗肉だ。


 だが、1つ、浮き彫りになってくるのは、クリントン氏の弱みを安易な言葉で理路整然と列挙している点だ。


 クリントン氏を忌み嫌う選挙民の大半は低学歴、低所得の白人男性層である。


 著者はその層を対象に、タブロイド紙(これら白人男性層の購読紙)で鍛え上げた「安易な言葉と表現で、おどろおどろしく、語りかけるテクニック」(『ニューヨーク・タイムズ』)で"教育"しているのだ。


 上記の主張は、まさにトランプ氏が言い続けてきたリベラル派粉砕、オバマケア阻止、メキシコ国境における壁の建設、イスラム教徒入国禁止、銃規制反対――。


 著者はそれらを箇条書きにすることで反トランプの白人男性層を「理論武装」させているのだ。


■ヒラリーが目論む「左翼勢力による貪欲な資本主義国家」


 一方、「Hillary's America: The Secret History of the Democratic Party」(ヒラリーのアメリカ:民主党の隠れた歴史)の著者デネイシュ・デソーザ氏は、インド系キリスト教弁証家で保守系コメンテーター。ダートマス大学卒業の映像作家でもある。


 超保守派でエバンジェリカルズ(キリスト教原理主義者)の支持をがっちりとつかんでいた共和党大統領候補だったテッド・クルーズ上院議員の父親、ラファエル・クルーズ牧師が彼の2度目の結婚式を取り仕切っている。


 本書の論点はモリス氏と共通している。


 「米国は今、亡国の瀬戸際に立っている。オバマの8年をヒラリー・クリントンが引き継ぐようなことがあれば、米国は『約束の地』ではなくなり、オバマ一族、クリントン一族、そして彼らの仲間たちがのさばる貪欲な資本主義国家になってしまう」


 「ヒラリー・クリントンは史上最も信用できない大統領候補だ。彼女は女性尊重を掲げているが、その私生活では女性をことごとく敵に回してきた」


 「そもそも民主党の歴史を振り返ってみると、この党は黒人奴隷、人種差別、優生学尊重(つまりダーウィン論を信ずる)の政党だ。そして今も人種主義とばら撒き福祉ファシズムの党なのだ」



Hillary's America: The Secret History of the Democratic Party(ヒラリーのアメリカ:民主党の隠れた歴史) By Dinesh D'Souza QUALITY FLIX 7 D'SOUZA ENTERTAINMENT, 2016
 本書の論点はモリス氏と共通している。


 「米国は今、亡国の瀬戸際に立っている。オバマの8年をヒラリー・クリントンが引き継ぐようなことがあれば、米国は『約束の地』ではなくなり、オバマ一族、クリントン一族、そして彼らの仲間たちがのさばる貪欲な資本主義国家になってしまう」


 「ヒラリー・クリントンは史上最も信用できない大統領候補だ。彼女は女性尊重を掲げているが、その私生活では女性をことごとく敵に回してきた」


 「そもそも民主党の歴史を振り返ってみると、この党は黒人奴隷、人種差別、優生学尊重(つまりダーウィン論を信ずる)の政党だ。そして今も人種主義とばら撒き福祉ファシズムの党なのだ」


 「ヒラリー・クリントンが14歳の時に酔心したのは、ルシファー(キリスト教の悪魔・堕天使)を信ずるサウル・アリンスキー(1960年代に活躍した社会活動家、アシュケナジー系ユダヤ教徒)だ。


 「クリントン一家の外交政策の基本は自らの利益第一主義、米国益は二の次だ。ヒラリーが大統領になれば、米連邦官僚組織をその左翼主義で染め、米国は末代その影響を受けかねない」


 共和党大統領候補の1人だったベン・カーソン元神経外科医は共和党全国党大会の演説でクリントン氏がソウル・アリンスキーの薫陶を受けていると批判した。おそらくデソーザ氏のこの本を読んでいたに違いない。


 モリス氏の本が低学歴の白人男性を対象に書かれたものだとすれば、デソーザ氏の本は大統領選予備選でカーソン博士やクルーズ氏を熱烈に支援したエバンジェリカルズを対象に、クリントン氏の非キリスト教的な面を特に強調したように思える。


 『ニューヨーク・タイムズ』をはじめ米主要紙やCNN、MSNBCといったニュース専門ケーブルテレビ局がヒラリー・クリントン氏を支持する傾向が目立っている。現に8月1日、トランプ氏は遊説先でこれら主要メディアの「偏向報道」を口汚く非難している。


 自戒の念を込めて言えば、在米の日本メディア関係者はややもすると、大統領選を報道する中で、これら米主要メディアの大統領選報道に左右されてきたきらいが少なくない。


 その意味では、今回紹介した2冊は、米主要メディアとは正反対の立ち位置で今回の大統領選を見る「もう1つの視点」を提供してくれているように思う。


 そしてもう1つ、クリントン氏が大統領に当選したとしても、この2人の著者とそれに共鳴する多くの選挙民の「もう1つの米国」があること。そのことを頭のどこか片隅に置いておく必要がありそうだ。


 しょせん「米大統領選挙は有権者の3分の1の票で決まる」(米有力紙政治記者)のだから。



 

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