（社説）クリントン氏の公約は「変化なき希望」オバマ政権の焼き直しから良い成果を約束　軽毛

（社説）クリントン氏の公約は「変化なき希望」オバマ政権の焼き直しから良い成果を約束　
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投稿者軽毛日時 2016 年 7 月 29 日 20:27:55: pa/Xvdnb8K3Zc　jHmW0Q

【社説】クリントン氏の公約は「変化なき希望」
オバマ政権の焼き直しから良い成果を約束
　
米民主党全国大会で大統領候補の指名を受けたクリントン前国務長官（27日、フィラデルフィア） PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
2016 年 7 月 29 日 19:08 JST
　米ペンシルベニア州フィラデルフィアに集結した民主党員は大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官について、苦難の多い人生を送ってきた疲れ知らずの強者（つわもの）であると同時に、新鮮で現代的かつ歴史的な人物になると激賞した。この矛盾が物語るのは、国民が変化を求めているこの時に、25年間にわたって国の檜舞台に立ち続けた人物を大統領候補として売り込むのがいかに難しいかだ。
　実際のところは、ここ数世代で最も予想通りの人物が民主党の候補指名を受諾したということだ。民主党は戦略的に曖昧な目標を持った比較的無名の候補者を擁立する傾向にあった。1992年のビル・クリントン氏しかり。2008年のバラク・オバマ氏もまたしかりだ。オバマ氏は「希望」と「変化」を掲げて選挙戦を戦い、本当の野心はホワイトハウスに入ってから見せた。
　対照的に、ヒラリー・クリントン氏の目標はずっと明確だった。オバマ氏の政治的また政策面での後継者になるのが望みだ。そのことはクリントン氏もオバマ氏も認めている。だが、これは「変化」を意味しない。クリントン一家がこの言葉を独特な意味で定義していない限りにおいてだが。ちょうど彼らが「機密情報」という言葉でそうしたように――。事実上の「3期目のオバマ政権」が意味するところは現状維持だ。
米民主党全国大会の様子やオバマ大統領の演説などについてWSJのビル・マックガーン論説委員が解説（英語音声、英語字幕あり）Photo credit: Getty Images.
　それに、政治面でも私生活でも「不変」というのがクリントン氏の特徴だ。有権者は1992年以降、全国的に注目を浴びる存在になったこの人物を十分に見てきた。そして彼女がいかに倫理上の問題を見て見ぬふりをし、それが発覚した際にはいかに時間稼ぎをしてごまかしてきたかを見てきた。だからこそ国民の実に68％がクリントン氏は不誠実で信頼できないと考えているのだ。
　クリントン氏と共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は、気質や世界観という点で大きく異なる。であるにも関わらず、クリントン氏の平均的な非好感度は55.4％と、トランプ氏の56.9％に近い。仮に有権者が「彼女と一緒に」歩むことを選んだ場合、何が得られるのか分からなかったと後になって釈明できる人は誰一人いないだろう。何が得られるのかと言えば、成長の鈍化と所得の停滞を生んだ政策の繰り返しだ。それに、より多くのスキャンダルが噴出するだろうことは疑いの余地がない。
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米民主党の大統領候補に指名されたクリントン氏が指名受諾演説を行った（英語音声のみ）Photo: Getty Images
　今年の大統領選は民主、共和両党ともに不安定なものになっている。低成長に対する国民の不満が鬱積（うっせき）しているためだ。民主党のエスタブリッシュメント（主流派）はこの停滞の一因となっている格差への従来のこだわりを、さらに強調するという反応を示してきた。民主党は、国民全体の生活が向上する成長ではなく、富の再配分に基づく経済と高い税金、厳しい規制に注力してきたのだ。
　クリントン氏の政策案はオバマ氏よりもさらに進歩主義的だ。信じるかどうかはともかく、この揺りかごから墓場までの社会保障国家でいまだに給付金格差があり、「ゼロ歳児から5歳児まで」のための制度を創設したいと、絶えず話しているのがこの候補者だ。
　クリントン氏の施策リストの一部を挙げてみる。公共事業のためとされる多額の拠出、連邦政府による最低賃金、残業手当、家族休暇手当の引き上げと男女同水準の賃金、チャイルドケア、大学の無料化、メディケア（高齢者・障害者向けの医療保険）に似た公的医療保険制度、新薬の価格統制、それにキャピタルゲイン税の上限を現行の23.8％から43.4％に2倍近く引き上げることなどだ。これらの施策が2007～16年よりも良い結果をもたらすと考える人がいるなら、その人は注意を払ってこなかったのだ。
米民主党全国大会、4日間のハイライトを振り返る
　米ペンシルベニア州フィラデルフィアで4日間にわたって開催された民主党全国大会は28日に最終日を迎え、ヒラリー・クリントン前米国務長官が米主要政党で初の女性大統領候補に指名された。

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Jerry Emmett, the 102-year-old honorary delegate from Prescott, Ariz., shows off her pin in honor of Democratic presidential nominee Hillary Clinton on Monday, the first day of the Democratic National Convention.T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Hillary Clinton walks on to stage to officially accept the Democratic presidential nomination and offer her vision for how she’d lead the ...
Attendees cheer Hillary Clinton on her historic nomination as the first woman on a major party ticket. at the Wells Fargo Center on Thursday.T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Democratic presidential nominee Hillary Clinton appears onstage following President Barack Obama's speech endorsing her on Wednesday, the third night of the Democratic National Convention. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Sen. Tim Kaine of Va., the Democratic nominee for vice president, gives his acceptance speech on Wednesday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Attendees recited ‘The Pledge of Allegiance’ at the start of the second night of the Democratic National Convention at the Wells Fargo Center in Philadelphia on Tuesday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Sheila Yancey, of Louisville, Ky., tallied on a campaign sign the nomination vote count of each state during the roll call on the on Tuesday, as Hillary Clinton went on to become the first woman to win a major party nomination. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Attendees cheered when Hillary Clinton captured the Democratic presidential nomination on Tuesday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Terry Tucker, center, of Lakewood, Colo., joins other Bernie Sanders supporters in marching out of the Wells Fargo Center after the Vermont senator moved to give Hillary Clinton the Democratic presidential nomination by acclamation on Tuesday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
A Hillary Clinton supporter listened to speakers at a caucus meeting during the first day of the Democratic National Convention in Philadelphia on Monday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
An attendee with a donkey hat, symbolizing the Democratic Party, on the second night of the Democratic National Convention in Philadelphia on Tuesday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
A supporter of Sen. Bernie Sanders holds an upside-down American flag during a protest at Philadelphia City Hall during the Democratic National Convention in Philadelphia on Monday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Jerry Emmett, the 102-year-old honorary delegate from Prescott, Ariz., shows off her pin in honor of Democratic presidential nominee Hillary Clinton on Monday, the first day of the Democratic National Convention.T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
Hillary Clinton walks on to stage to officially accept the Democratic presidential nomination and offer her vision for how she’d lead the country during the fourth night of the Democratic National Convention in Philadelphia on Thursday. T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
　これらの施策の大半は、共和党が下院で多数を維持すれば阻止されるだろう。だが、連邦議会の重要性はかつてより薄らぐことになろう。クリントン氏はオバマ氏と同じぐらい、大統領令を通して統治を試みるだろうからだ。クリントン氏は5月に、移民制度の抜本的な改革を「連邦議会が拒否するなら」、不法移民の強制送還を一部免除するというオバマ大統領の方針を「酌量すべき」不法移民すべてに適用すると約束した。オバマ氏のこの計画は最高裁の意見が二分されたため、これに無効判決を下した下級裁判所の判断が維持され、事実上阻止された形になっている。　
　こうした無法性の一部を司法が阻止することは可能だが、裁判所は今、進歩主義的な判事が多くなりつつある。クリントン氏がホワイトハウスに入れば、ほどなくして最高裁も同じ状況になるだろう。
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　クリントン氏を支持する中道派の一部やトランプ氏に辟易（へきえき）している有権者は、クリントン氏のリベラルな選挙公約が何であれ、彼女なら実利的に国を率いてくれると自分を納得させている。クリントン氏は抜け目なく、こうした「経験より希望」に託す有権者を勝ち取るために、1990年代の繁栄を彼らに思い起こさせているのだ。
　だが、ビル・クリントン氏は左派が3回連続で大統領選に敗北した後、中道派として選挙に出馬した。だが当時でさえ、クリントン政権の最初の2年間に所得税率が引き上げられたほか、化石燃料に対するBTU税やヒラリーケア（ヒラリー氏が主導した医療保険改革）の導入が試みられた。ヒラリー氏の政治的信念の中核部分は90年代の「ニューデモクラット」よりオバマ氏に近い。
　そして、クリントン一家に常についてまわっているのがスキャンダルだ。ヒラリー氏がアーカンソー州で駆け出しの弁護士だった頃、取り巻きの一人が仲介した畜牛先物で1000％に近いリターンを得た。その30年後、ヒラリー氏が国務長官在任中にクリントン財団は外国の政府や財界重鎮らから寄付を受け取った。数カ月間にわたってヒラリー氏がうそをつき通した電子メールの私的サーバー使用問題では、米国の機密情報を敵国にさらす可能性があった。ヒラリー氏とクリントン一派が再び最高権力を握った場合、今後もこうしたスキャンダルがあると思った方が政治の世界では確実だ。
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　民主党員は今週、トランプ氏の知識不足や気まぐれな性質を考えれば、クリントン氏の外交面での経験や最高司令官としての資質は強みであることを強調した。だが、彼女が本当に成し遂げたことは何か。ニューヨーク州選出の上院議員だったクリントン氏は2003年にイラク戦争に賛成票を投じた。ところが、政治的な潮時とみるや、07年の米軍増派には阻止を試みた。国務長官在任中は、世界的に最前線から手を引くというオバマ大統領の政策を率先して推進し、冷戦終結以降のどの時代よりも地球上を危険な状況に陥れることになった。
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民主党全国大会で娘のチェルシーさん（赤のドレス）に紹介されて登壇したヒラリー・クリントン氏 PHOTO: AARON P. BERNSTEIN/GETTY IMAGES
　クリントン氏はオバマ政権の失敗に終わった対ロシア関係の「リセット」政策を支持したが、今はプーチン大統領を実在の敵だと公言している。彼女はイラクからの時期尚早な米軍撤退を擁護し、過激派組織「イスラム国」（IS）の台頭を許した。彼女のIS打倒計画は、ISを打ち破る計画があると主張することだ。情報屋として長い間つきあいのあるシドニー・ブルーメンソール氏からの内密なアドバイスに従い、リビア侵攻を訴えた。ブルーメンソール氏はオバマ政権からは締め出されていたが、クリントン氏の助言者として復活するだろう。
　クリントン氏の気質はオバマ氏よりタカ派的だ。大統領になった暁には、より賢明な現実主義に向かうよう期待したい。だが、貿易政策で示してきたようなご都合主義を続ける可能性もある。リベラル派の支持基盤をなだめるために、枠組み作りを手助けした環太平洋経済連携協定（TPP）を見捨てたようにだ。
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　格差に加え、民主党員がもう一つこだわっているのが特定の社会的集団の利益を代弁するというアイデンティティ政治だ。知らない人のために念のため言っておくと、クリントン氏が大統領になれば、米国初の女性大統領となる。女性であることを理由に、この特定の女性に報いようという訴えは、より平等な社会で生まれ育ってきた非ベビーブーマー世代の女性や男性にも果たして通用するのかどうかは疑問だ。
　28日の夜に示した楽観主義にも関わらず、世論はクリントン氏に冷ややかだ。これは、大統領選で勝つためには、オーバルオフィスにふさわしくない人物だとしてトランプ氏に不適格者のレッテルを貼るネガティブキャンペーンを絶えず行っていかなければならないことを意味している。トランプ氏は危険を冒すほどの価値がないと思う国民がいるのもうなずける。だが、希望の泉は枯れないという。その希望が間違っていたとしてもだ。トランプ氏にかける価値はないと思う向きは、オバマ氏とクリントン氏による3期目の政権のリスクを過小評価すべきではない。
ヒラリー・クリントン氏の半生、写真で振り返る
　民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏は、成人してから大半の期間で世間の注目を浴びてきた。大学時代から2人目の孫の誕生まで、同氏の半生を写真で振り返る。

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Chelsea Clinton carries her newborn son, Aidan, as she leaves Lenox Hill Hospital in New York with her husband Marc Mezvinsky, second from left, and her parents on June 20. Aidan is the Clintons’ second grandchild. WILLIAM REGAN/ASSOCIATED PRESS
Hillary Rodham as a student at Lake Waban at Wellesley College, west of Boston. She graduated from the school in 1969. WELLESLEY COLLEGE ARCHIVES/REUTERS