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中国当局が公表したスカボロー礁上空をパトロールするH-6Kの写真
南シナ海に基地もリゾートも、裁定を完全無視の中国 世界の観光客が中国の豪華客船で南シナ海を旅する日
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47458
2016.7.28 北村 淳 JBpress
中国政府は、南シナ海そして東シナ海への支配権を拡張するに当たって、「歴史的権益」をその正当性の主な根拠としてきた。しかし7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、中国が主張している南シナ海における歴史的権益は国際法的には認められないという裁定を下した。
それに対して、中国政府やメディアはこぞって「裁定を受け入れない」、というよりは「常設仲裁裁判所にはそのような裁定をなす権限がないため、そもそも裁定なるものは無効であり、中国の立場には何の影響も与えない」との態度を表明している。
■戦闘空中パトロールを開始
中国は裁定に対する様々な反論やプロパガンダに加えて、軍事的示威行動にも打って出た。
7月18日、中国国営メディアは、人民解放軍空軍が発表した爆撃機による南シナ海での戦闘空中パトロールの写真を公開した。これは空軍の新鋭爆撃機「H-6K」がスカボロー礁上空を飛行しているものだ。時期が時期だけにきわめて挑発的な画像と言える。
フィリピンのルソン島沿岸から220キロメートル沖合(フィリピンの排他的経済水域内)に位置するスカボロー礁は、中国本土沿岸からは900キロメートル以上離れており、中国軍用機の発着が可能な西沙諸島永興島(ウッディー島)からは600キロメートルほど東南に位置している。フィリピン、中国そして台湾が領有権を主張しているが、2012年に発生したフィリピン海軍艦艇と中国監視船による睨み合い以降、中国が軍事力を背景にした実効支配を強めている。
今回の仲裁裁判所の裁定を完全に無視する中国は、南沙諸島同様にスカボロー礁でも埋め立て作業を開始するのではないかと考えられており、アメリカ政府は中国に対して警告を発している。しかし、先週中国で行われたアメリカ海軍と中国海軍のトップ会談では、中国側はアメリカの懸念を一切取り合わず、スカボロー礁を含む南シナ海九段線内は“中国の主権的海域”であるとの姿勢を維持することを再度アメリカ側に通告した。
スカボロー礁、西沙諸島、南沙諸島、海南島の位置
■南シナ海で実質的なADIZを設定準備
スカボロー礁上空をパトロールしたH-6Kは、中国空軍並びに中国海軍が長らく使用しているH-6型爆撃機の最新バージョンだ。強力なエンジンが搭載され、各種性能も向上し、対艦攻撃用ならびに対地攻撃用の新鋭巡航ミサイルも積載可能である。
今回スカボロー礁をパトロールしたH6-Kには、巡航ミサイルは装着されていなかった(巡航ミサイルは主翼下のパイロンに装着される。ただし巡航ミサイル以外にも胴体内に爆弾を格納することは可能)。だが、H-6Kがスカボロー礁近辺まで進出してくると、フィリピンを拠点にするアメリカ海軍艦艇は危険にさらされるため、アメリカ海軍関係者たちは神経をとがらせている。
中国当局によると、今後、人民解放軍は継続的に南シナ海で空中パトロールを実施し、H-6K爆撃機のみならず戦闘機、偵察機、そして空中給油機など各種空軍機をパトロールに投入するという。実際に、南シナ海上空では戦闘機による実弾射撃訓練なども開始された。
中国が東シナ海で中国版「ADIZ」(防空識別圏)を公表した際には、アメリカや日本をはじめとする国際社会からの猛反発を受けた。その経験を踏まえて、南シナ海では中国版ADIZを公表する前に、航空戦力や艦艇それに人工島を含む地上からの対空ミサイル戦力などを充実させて実質的なADIZを設定してしまおうという戦術と考えられる。
■海南島のリゾート開発会社が南シナ海クルーズを計画
中国メディアは、南シナ海での戦闘空中パトロール実施の発表と合わせる形で、「南シナ海クルーズ」計画のニュースも伝えた。
この計画を打ち出したのは、中国海南省の海南島・三亜市を拠点にリゾート開発やクルーズなどを手がけている「三亜国際クルーズ」(COSCO Shipping、香港ベースのChina National Travel Service Group、それにChina Communications Constructionのジョイントベンチャー)である。
三亜国際クルーズは今後数年間のうちに8隻の豪華客船を建造して、西沙諸島や南沙諸島を含む南シナ海でのクルーズ観光を行うという。同時に、クルーズの拠点となる三亜市には4つのクルーズターミナルを建造し、海南島をますますリゾート地として発展させるという大規模なリゾート開発計画を立てている。
現在、三亜国際クルーズは「Dream of the South China Sea」というクルーズシップを運行しており、来夏までには2隻のクルーズシップを追加するという。現時点では西沙諸島でのクルーズ観光が実施されているが、将来的には南シナ海全域でのクルーズを実施する計画とのことである。
すでに三亜市では、大規模な高級ホテルをはじめとする観光施設の建設が盛んに進められ、西沙諸島でもリゾート施設の建設計画が進んでいる。したがって、南沙諸島の人工島でもホテルやクルーズターミナルなどのリゾート施設の建設が着手されることは時間の問題であろう。
海南島・三亜市に出現したリゾート施設
■観光客の盾を用いる人民解放軍
このように、中国は南シナ海の軍事的支配を推し進めるために、軍事力の誇示と平行して非軍事的施設の建設にも力を入れている。
先週の本コラム(「仲裁裁判所の裁定に反撃する中国の「情報戦」の中身」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47395)でも指摘した灯台の建設はその一例であるが、クルーズ観光をはじめとするリゾート開発は、灯台や気象観測所それに海洋研究所以上に強力(中国の実効支配にとって)な民間施設となってしまう。
南シナ海で大規模なリゾート開発を進める中国は、すでにほぼ完全に領有権を手中に収めた西沙諸島はもとより、人工島建設により実効支配を強烈に推し進めている南沙諸島にまで、数多くの観光客や観光業従事者たちを送り込むことになる。
クルーズシップには中国人観光客のみならず日本やヨーロッパそれにアメリカからの観光客も多数乗船するであろう(すでに三亜市の高級リゾート施設などは、英語版それに日本語版の宣伝サイトなどで外国人観光客を海南島リゾートに誘致している)。
近い将来には、世界各国からの多数の観光客で賑わう西沙諸島や南沙諸島のリゾート施設と隣接して、人民解放軍の軍事拠点が南シナ海に睨みを効かすことになるのだ。
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