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仏ニースの遊歩道「プロムナード・デザングレ」で、トラック突入事件の犠牲者を追悼してろうそくをともす人々(2016年7月19日撮影)。(c)AFP/VALERY HACHE〔AFPBB News〕
もうどこにも安全な場所がないフランス人の生活 独ミュンヘンでも銃乱射、壊れていく欧州の治安
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47435
2016.7.25 山口 昌子 JBpress
フランス革命記念日の7月14日、南仏ニースの遊歩道でトラックが花火の見物客に突入、児童10人を含む84人が死亡し、202人が重軽傷を負った。
このテロを受けて、7月20日、フランスの国民議会が「非常事態宣言の6カ月延長」を賛成多数で可決した。
「非常事態宣言」は、2015年11月15日のパリ同時テロ直後に発令された。当初は12日間だったが、その後、3か月ごとに延長された。フランソワ・オランド大統領は、7月14日午後1時から革命記念日の恒例となっているテレビ会見に臨み、「7月26日に非常事態宣言を終了する」と宣言したところだった。まさに舌の根も乾かないうちの前言撤回となってしまった。
■「政府は何をやっているのか」
今回のトラック突入テロでは、「イスラム国(IS)」が犯行声明を出すまで、テロ犯のモハメド・ラフエジブフレル(31歳)はISとの関連は薄いと見られていた。
モハメドはチュニジア出身で、数年前にニースに移り住んだ。チュニジア系フランス人の妻との間に3児を設けたが、離婚した。仕事は小型トラックでの配送だった。信仰心は薄く、ショートパンツを愛用し、飲酒の習慣があり、モスクへの出入りもなく、ラマダン(イスラム教徒の断食期間)も実行していなかったという。
フランスには公安の監視対象のリストとして「Sリスト」があるが、モハメドの名前は記載されていなかった。ベルナール・カズヌーブ内相はこの点について、「急激に過激化したようだ」と言い訳をしている。
Sリストの有効性については批判が多い。2015年1月の「シャルリ・エブド」襲撃テロの犯人であるクアシ兄弟や、11月のパリ同時多発テロのテロリスト10人のうち大半がリストに記載されていたが、十分に監視されていなかった。リストの記載者数は約3000人と多いため、監視困難という理由で実質的に放置されているのだ。
国民議会のテロ調査委員会は、ニース事件の直前にSリストの記載者全員を収容する留置所の設立などを求める報告書を内相に提出した。だが、内相には一蹴されている。
こうした対応に、国民の間には「政府は何をやっているのか」という怒りの声が上がっている。
ヴァルス首相が、7月17日に現場で行われた犠牲者を悼む式典に出席した時には、住民から激しいブーイングが起きた。
遺族の中には、当局の警備不備を告訴する動きもある。
当日は、花火見物の3万人の人出が予想されていたのに、警官、憲兵隊など警備の人員は約100人だった。また、現場の遊歩道は車両の進入を禁止していたが、市警の警官がトラックの突入を阻止できなかったことも批判の的となっている。テロが予想される観光名所などには「ロケット砲を準備するべきだ」(アンリ・グエノLR議員)との声も出ている。
■一本釣りでテロリストを確保するIS
一方、ISはこのところ戦略を変えてきている。
米英仏など有志連合軍による空爆の激化でISは領土の半分近くを失い、幹部も次々に殺害されて勢力が弱まり、勧誘したテロリスト予備軍を軍事教練する余裕がなくなってきている。
以前は、シリアやイラクにテロリスト予備軍を渡航させてカラシニコフなど銃の使い方や爆弾の製造方法などを教え込み、装備や準備の資金提供も行ってきた。しかし、最近はインターネットや携帯電話でテロリスト予備軍の“一本釣り”を行い、「自分の車やナイフで異教徒を殺せ」という指令を出すケースが増えている(治安当局筋)。
一本釣りの“獲物”として狙われるのは、失業者や貧困階級、家庭不和、犯罪歴などで精神的に不安定になっているアラブ系やアフリカ系(主要主教がイスラム教)の移民などだという。
ニースのテロ犯、モハメドはその典型と言えよう。離婚の原因は家庭内暴力だった。チュニジア在住の父親によると、2004年には鬱病で精神科の診察を受けた。ニースに移住後の2010年から2016年にかけては、暴力事件や窃盗事件などの数件の犯罪歴がある。今年1月には交通事故の相手を木材で殴って重傷を負わせ、執行猶予付きの6カ月の有罪判決を受けた。離婚後は近所の人と挨拶も交わさず孤立していたという。
モハメドはテロの前に貯金を全額引き出し、めぼしい所持品を売り払っている。テロの3日前にはレンタルした大型冷凍車で現場検証を2回入念に行っており、綿密に計画していたことをうかがわせる。おそらくISからの指令があったのだろう。その後の家宅捜査では携帯11個が発見され、通信記録から共犯容疑で5人が本格的取り調べを受けている。共犯容疑者の家からはカラシニコフも発見され、ISによる犯行を裏付けている。
フランスでは6月中旬にパリ郊外イブリーヌ県で、警官の夫と内務省勤務の妻が刃物で殺害されたが、これも“一本釣り”の犯人によるものだった。逮捕されたアラブ系フランス人の犯人は「3週間前にISに忠誠を誓った」と告白。犯人の自宅からは警官や治安関係者らの名前が記載された標的リストが見つかった。
■ドイツでもISによるテロが発生
7月19日には、ドイツ南部ヴァビエール地方を走行中の列車内で、17歳のアフガニスタンからの難民の少年がナイフで乗客を襲う事件が発生した。4人が重傷、1人が軽傷を負い、犯人は逃走中に警官に射殺された。
事件後にISの通信部門「Amaq」が犯行声明を出したことで、ドイツでは初めてのISによるテロ事件であることが確認された。ドイツには2015年だけで約100万人の難民が到着しており、この事件を契機に「テロと難民」との関係が問題視されている。
また、7月22日午後6時頃、何者かが独南部バイエルン州の州都ミュンヘンの中心街にあるマーケットを銃で襲った。少なくとも9人が死亡し、16人が重軽傷を負った。犯人はイランとドイツの国籍を持つ移民出身の男(18歳)で、犯行後に自殺をしたとみられる。
東欧諸国の中には、「シェンゲン協定」(ヨーロッパ内で国境検査なしで国境を越えることを許可する協定)を中止して難民阻止の壁を設置しようとする国もある。フランスでも極右政党「国民戦線」(FN)が「シェンゲン協定」の破棄を求めている。
フランスでは、2012年から現在までにテロ未遂事件が16件発生している。2016年6月10日〜7月10日にフランスで開催されたサッカー大会「EURO 2016」も、大規模テロの標的として狙われていた。
今年3月にはベルギー・ブリュッセルの空港と地下鉄で同時テロが起きたが、ブリュッセルはパリから特急で約1時間であり、フランス人の感覚では隣町でテロが起きたのも同然だ。
パリ市は今回のトラック突入テロを受け、毎月第1日曜に実施しているシャンゼリゼ大通りの歩行者天国を中止し、毎年夏にセーヌ河畔を浜辺化するイベント「パリ・プラージ」(毎年数百万人が訪問)の警備を強化することを決定した。
今やフランス人の間では「いつでも、どこでもテロは起こりうる」「もはや100%の安全はない」が合言葉になりつつある。フランス人はテロと隣り合わせで暮らさなければならない暗黒と恐怖の時代を迎えている。
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