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クローズアップ2016
反薬物、露裏切り 部屋の壁に穴、検体すり替え
毎日新聞2016年7月20日 東京朝刊
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ドーピング違反へのロシアの国ぐるみの不正発覚を受け、国際オリンピック委員会(IOC)は判断を先送りした。世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームの報告書では、検査体制の信頼性を根底から覆し、スポーツの高潔性を損なう指摘が並ぶ。来月5日に南米で初めてとなる歴史的なリオデジャネイロ五輪が開幕をするのを控え、「平和と友好の祭典」の足元はぐらついている。【小林悠太、藤野智成、モスクワ杉尾直哉】
103ページに及んだWADAの調査チームの報告書ではロシアが確立した計画的かつ悪質なドーピング隠蔽(いんぺい)の手順を検査機関の内部の証言などをもとに生々しく記した。
報告書によると、モスクワの検査機関では陽性反応を示したロシア国内選手の577検体のうち、スポーツ省の指示でメダリストと有望選手を中心に312検体を「救済」に指定。大半をWADAに陰性と虚偽の報告をした。一定数の陽性反応を確保することで、検査が正常に行われていることを偽装していたとみられる。
また、2014年ソチ五輪の期間中は、現地の検査機関には世界中のスタッフが集まるため、虚偽の報告はできない。そこで、他国のスタッフのいない夜間に検体をすり替えた。特定の選手を対象に大会前の禁止薬物を使用していない時期に尿を採取して、冷凍保存。検査機関の部屋の壁にネズミが通れる程度の穴を開けておき、隣の部屋から手を伸ばして、試合後に採取した陽性反応が出る可能性のある検体と保存していた“クリーン”な検体とすり替えたという。
ドーピング違反の隠蔽手順は金メダル3個と不振に終わった10年バンクーバー冬季五輪後、スポーツ省やロシア連邦保安庁(FSB)、反ドーピング機関が関与して出来上がった。プーチン大統領が任命した副スポーツ相がドーピング違反を推し進めるのに重要な役割を果たしていたとされる。
米ニューヨーク・タイムズは国ぐるみの組織的関与の背景について「ロシアの当局者は大会前に大きなプレッシャーを感じていた」と指摘。検査機関の現場レベルは不正への関与に従わざるを得ない状況だったという。ソチ五輪でロシアは、参加した国・地域の中でトップの13個の金メダルを含む33個と飛躍的にメダル数を伸ばした。
五輪、揺らぐ意義
ロシアは旧ソ連時代から世界有数のスポーツ大国として知られる。12年ロンドン五輪で獲得した金メダル数は24個で、米国、中国、開催国・英国に次ぐ4位だった。IOCにとっては、ロシアは競技会としての五輪の価値を高め、テレビ放映権料やスポンサー料の収入にもつながる存在だ。その大国が不在となれば、東西冷戦下の1980年代にボイコットの応酬を繰り広げた五輪の苦い過去を思い出させるだけに、IOCは簡単には「ロシア不参加」との答えは出せなかった。
WADAがロシアのドーピング違反の組織的な隠蔽を公表して、リオ五輪・パラリンピックからのロシア選手団の締め出しを勧告すると、米国側が即座に反応した。米国オリンピック委員会は「巨大な違反には適切な制裁をIOCやWADA、国際競技団体に委ねたい」とコメントした。
すると、ロシアのプーチン大統領は「スポーツへの政治介入だ」と反発。「人類統合に大きく貢献してきた五輪運動が、またも分裂の危機にある」と主張した。米露のやりとりは東西冷戦再現の様相を呈していた。
80年モスクワ五輪で、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して、日本を含めた西側諸国が出場をボイコットすると、五輪の価値は下がって84年五輪の開催都市に立候補したのはロサンゼルスだけだった。そのロス五輪は報復措置として東側諸国が出場をボイコットした。危機に直面したIOCはテレビ放映権料やスポンサー収入を柱にした商業化路線にかじを切り、財政を立て直すことに奔走した。
それにより、選手が得る収入も膨らみ、テレビ映りの良さを志向した五輪は開催国の威厳を示す場ともなった。その延長線上にドーピング違反もある。プーチン氏が大統領に就任したのは00年。ソ連崩壊で国力が落ち、スポーツ界でも有力選手や有能なコーチが好待遇を求めて海外に流出していた。国の威厳を取り戻すにはスポーツの活躍は有効だ。WADAが違反がまん延したと指摘した14年ソチ五輪はプーチン氏が招致の先頭に立って勝ち取り、開催費として夏冬五輪で史上最多の5兆円を投じて国威を発揚する場となった。
ドーピング対策は4年後に東京五輪開催を迎える日本にとっても深刻な問題だ。ある政府関係者は「勝てば、多額のお金が入り、ルール違反をしてでも利益を得ようとする。五輪の闇といわずして何を闇というのか」。ドーピングを巡る混乱は五輪が再び曲がり角に来ていることを物語る。東京五輪はその未来像を提示することができるだろうか。
http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20160720/ddm/003/050/201000c
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