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ベネズエラのカラカスで、治安部隊と衝突する、深刻な食料と医薬品不足に抗議するデモの参加者(2016年6月8日撮影)。(c)AFP/RONALDO SCHEMIDT〔AFPBB News〕
食糧求めて国境を越えるベネズエラ人 迫り来る人道危機の兆し、コロンビアのスーパーに買い物客殺到
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47352
2016.7.14 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年7月12日付)
オマール・トーレスさんは妻と娘たちとともに、コロンビアとベネズエラをつなぐシモン・ボリバル橋を渡ったとき、感動がこみ上げてきた。「コロンビアに入り、ベネズエラにない食糧をやっと買えるんだと思ったとき、泣きそうになりました」と言う。
トーレス一家は、10日日曜日にコロンビアになだれ込んだ推定3万5000人のベネズエラ人の一員だった。ベネズエラが慢性的な物資不足に苦しむ中、ニコラス・マドゥロ大統領率いるベネズエラ統一社会党(PSUV)政権が14時間に限り、橋を渡ることを許した後のことだ。マドゥロ氏は昨年8月、犯罪と密輸を取り締まることを理由に国境を封鎖した。
観測筋は今回の一件を、ベネズエラの下方スパイラルを断ち切るために何の対策も講じられない場合に生じる人道危機の前兆と見なしている。コロンビア政府高官らは、推定300万人のコロンビア人が暮らしている隣国で社会の内部崩壊が起きた際に、難民を受け入れる「計画がすでにある」と話している。
日曜の大量脱出は、7月5日の出来事に続くものだ。少なくとも500人のベネズエラ人女性――キューバの反体制運動に敬意を表し、「平和のシンボル」として白い洋服を身にまとっていた――が国境封鎖を無視し、家族のために生活必需品を見つけようとベネズエラの警備隊を押しのけて国境を突破したのだ。ベネズエラの国境地帯に位置するタチラ州の知事でPSUV所属のホセ・ヴィエルマ・モラ氏は、この行動は「カオス」を生み出すために野党によって指揮されたものだと語った。
だが、コロンビアのククタ市では日曜、国中から集まったベネズエラ人がスーパーマーケットに押し寄せ、運べるだけのコメと食用油、トウモロコシ粉を買うために、静かに商品をかき集めた。こうした商品は自国で供給が不足しているか、闇商人によって法外な値段で売られているものだ。
「食糧供給の状況が危機的になりつつあり、人口の大部分がとにかく十分な食糧を見つけられていないことを示す指標がいくつもある」。インターナショナル・クライシス・グループのシニアアナリスト、フィル・ガンソン氏(カラカス在勤)はこう話す。
「また、治安部隊が食糧や他の生活必需品の不足から生じる社会不安に対処するのが次第に難しくなっていることも明かだ。ベネズエラはまだ飢饉(ききん)に直面していないが、食糧危機の時期に入る国に特有の指標がいくつか見られる」
こうした指標の1つが、栄養不良の発生率の上昇だ。略奪と食糧暴動も当たり前の光景になりつつある。PSUVの幹部らは大抵、これらの問題を、米政府から支援を受けた右派野党勢力と企業経営者が仕掛けた「経済戦争」のせいにする。ベネズエラのデルシ・ロドリゲス外相は先月、米州機構(OAS)の総会で、ベネズエラが人道危機に苦しんでいることを否定した。
「私は薬がないせいで亡くなった人や栄養不良の子供たちを見てきたのに、あの嫌な女はベネズエラに人道危機がないなんて言い放つんですよ」。コロンビアに近いベネズエラ・サンクリストバル市から来た看護師のイスレイ・マルケスさんは、ククタ中心部のスーパーの外で商品が詰まったプラスチックバッグを抱えながら、こう話す。
世論調査会社データナリシスによると、主力商品の80%以上がカラカスのスーパーの棚から消えている。業界関係者らの話では、物価統制と通貨管理、そして食品業界の国営化の影響のために、食糧生産が急減している。カラカスに本拠を構えるコンサルティング会社エコアナリティカによれば、政府は民間の供給会社と輸入業者に対して300億ドルの未払い金を抱えているという。
物資不足が今後悪化するのは必至だ。消費財メーカーが、輸入に依存しているベネズエラ国内で事業を何とか継続するのに苦労しているからだ。ベネズエラで操業している企業は原材料を購入したり、外貨を取得したりすることができず、生産者は困窮した消費者と同じように、国際通貨基金(IMF)が今年481%、2017年に1643%に達すると予想している高インフレに苦しめられている。
今月9日には、米キンバリー・クラークが他社に続き、ベネズエラでの操業停止に追い込まれた。トイレットペーパーやおむつ、ティッシュを生産している同社は、「経済、経営を取り巻く環境の継続的な悪化のために、ベネズエラでのすべての業務を即刻、無期限で停止する」と述べた。
ベネズエラの有力食品メーカー、エンプレサス・ポラールは、必要な材料を調達する外貨を得られるようになるまで、ビールの生産を停止している。
ベネズエラ人たちが日曜の帰途にシモン・ボリバル橋を渡ったとき、緑と白の標識が彼らに別れを告げた。「さよなら、友よ。またすぐに来て」。当面、トーレスさんのようなベネズエラ人には、そうするほか選択肢がない。
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