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「トランプ大統領」に迫る利益相反問題
自身の巨大なビジネス「帝国」が政策に影響しかねない
トランプ氏が大統領になった場合の利益相反の懸念について、WSJ記者が同氏にインタビュー（英語音声、英語字幕あり） Photo: Phillip Montgomery for The Wall Street Journal
By MONICA LANGLEY
2016 年 7 月 5 日 14:00 JST
【ニューヨーク】ある日の遊説先から戻ったドナルド・トランプ氏は、トランプ・タワー26階のオフィスで机に向かい、5センチほど積み上がった小切手にサインをし始めた。ホテル建設現場の燃料に1万ドル、コンクリートに2万1000ドル、契約業者に9万9000ドルといった具合だ。
トランプ氏はこのようにして、日常のビジネスにかかる費用の多くを自ら管理している。だが同氏は、大統領に選出されれば自らの所有資産をブラインド・トラスト（白紙委任信託）に移して「トランプ帝国」を切り離し、事業から生じ得る利益相反を回避するつもりだと述べている。ブラインド・トラストの受託者は、同氏の成人の子たちになる可能性が最も高いという。
同氏は最近のインタビューで、「ブラインド・トラストで構わない。私がすることは1つだけ。この国を再び偉大な国にすることに集中する。自分の会社のことなど考えもしない」と語った。
共和党の指名獲得を確実にしたトランプ氏が大統領選の本選に向かうなか、この利益相反の問題は大きく複雑になっている。その理由は、同氏が単独で所有する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」が主に受動的な投資ではなく、営業資産で構成されているからだ。国内外にある何百もの事業体がホテルや事業用・居住用不動産、ゴルフ場の所有と管理を行っているほか、リアリティー番組「アプレンティス」の一部権利についても所有・管理をしている。
大統領候補を父に持つエリック・トランプ氏とイヴァンカ・トランプ氏（6月21日、トランプ・オーガニゼーション）
「トランプ帝国では前例のないほどの利益相反が生じる恐れがある。所有資産の規模が大きく、家族経営の株式非公開企業であるうえ、1つの業界に集中しているためだ」とミネソタ大学のリチャード・ペインター教授（法学）は指摘する。同教授はブッシュ前大統領時代にホワイトハウスで倫理を担当する法務顧問を務めた。
「トランプ氏のケースではブラインド・トラストが全く機能しないだろう。彼の資産はブラインド（見えないもの）ではなく、既知のものであり、子どもたちは独立した受託人にならないからだ」と同教授は指摘する。ルーズベルトやケネディといった現代の裕福な大統領は「分散された世襲財産」を所有していたとし、トランプ氏のように事業に直接携わっていなかったという。
専門家によると、トランプ氏が大統領になった場合に事業運営を完全に切り離すことを義務付ける連邦法はない。だが、同氏は不動産取得にかかる資金の一部を借り入れ、組織を海外へ拡大してきただけに、どんな政策的立場を取ったとしても厳しい精査を受けることになるだろう。大統領の政策は、銀行業界や不動産業界のほか、同氏が不動産を所有する国に影響を及ぼすからだ。
トランプ氏はこうした懸念を一蹴し、自らの事業が銀行・不動産業界や外交政策へのアプローチに影響することはないと述べた。子どもたちが自分に近すぎて受託人になれないと考えられる場合は、他の幹部にトラストを運営させるとも述べた。「必要なことは何でもする。人々を安心させるためなら何でもする。とても簡単なことだ」
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