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中国の万里の長城。世界の人々は中国のことをどう見ているのか?(写真はイメージ)
直視すべき現実〜欧州はこんなに中国を評価している 親中化する欧州諸国、米国の存在感は低下する一方
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47193
2016.6.29 部谷 直亮 JBpress
日本人の対中嫌悪は非常に高まっており、しばしば日本では「中国は世界から孤立している」との議論も展開される。だが、各種の世論調査を見ると、必ずしもそうとは言い切れないのである。
例えば、6月12日付ブルームバーグは「中国は欧州でソフトパワーを確立している」という記事を掲載し、欧州における親中感情が高まる一方で米国が没落するとの見方が広まっているという調査結果を紹介した。
まず、その記事の要旨を紹介しよう。
■欧州で高まる中国の存在感と影響力
国際的に著名な米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」の2015年6月の調査によれば、主要な欧州諸国の大多数の人が「中国が米国に代わって世界の超大国としての立場を獲得しつつある、もしくは既にそうなっている」と認識していることが明らかになった。特にドイツとフランスでは多くの人が、米国よりもむしろ中国が世界経済を先頭に立って牽引している存在だと考えている。
無論、エリザベス女王は「中国政府は非常に失礼な連中だ」と思っている。しかし、バッキンガム宮殿を一歩出れば、中国は影響力と友人を多く獲得しているのである。
この調査が行われたのは中国経済が減速する前だったが、それは影響を与えないだろう。なぜなら、今や欧州諸国では中国製品が店頭を席巻しているからである。
欧州の人々の認識が以前とは変化してきた第1の原因は、欧州を訪れる中国人観光客の数がこの4年で倍増したからである。旅行者たちの半数は若い世代であるが、彼らは欧州の若者と価値観を共有している。彼らは自由(筆者注:この場合の「自由」が“liberty”ではなく“freedom”であることに留意)を愛し、享楽的で、愛される存在である。
第2の原因は中国系移民である。中国系移民は欧州で一生懸命、長時間の労働をこなしている。
第3は、中国の対欧州投資が増加していることである。中国が東欧に集中投資したり、インフラ建設を手掛ける理由は、習主席が推進する「新シルクロード構想」を中欧にまでつなげるためである。中国は最優先して欧州に直接投資しており、昨年、中国企業は230億ドルをEUに投資した(米国からのEUへの投資は150億ドルだった)。米国の対欧州投資の総額は1930億ドル以上であり、いまだに優勢を保ってはいるが、勢いは中国にある。特に東欧や南欧のような貧しい国々は、中国の国営企業の投資を歓迎し、積極的に受け入れている。
欧州諸国にとっての米国はいまだに同盟国である。だが、欧州大陸の貧しい国々や地域では、中国の忍耐強い努力が成果を上げ始めている。女王が中国の役人を気にかけないことは些末な問題である。彼らはひっきりなしにやってくるのだ――。
以上のように、ブルームバーグ誌は米国の存在感の低下に警鐘を鳴らしているのである。
■世論調査やEU対中戦略を見ても際立つ中国シフト
この指摘は正しいのだろうか。ブルームバーグ誌が引用しているピュー・リサーチ・センターが世界40カ国で実施した調査結果をもう少し詳しく見てみよう(詳細なデータを文末にまとめた)。
データを見ると、確かに欧州では、「中国が現在の世界経済を主導している」とする見解が多数派の国が出てきている。英国、スペイン、ドイツ、フランスはその典型だ。「あくまでも米国」とするのはポーランドやイタリアぐらいである。全世界を見ると半数の国で「米国が主導している」との見方が主流であり、欧州が世界の平均以上に中国の経済的存在感を高く評価していることが分かる。
そして、「中国は、米国に代わり世界で唯一の超大国の座を占めているか、もしくは将来的になるか」についても、欧州の主要国(英国、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、スペイン)は肯定的に見ている。
また、「中国が米国をしのぐ超大国になる、もしくは既にしてそうである」と見ているのは全世界平均では48%。それに対し、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、スペインは60%前後が肯定的に見ている。この問いに対する全世界平均は48%、日本は20%であるから、これもかなり高い数値であろう。
要するに、欧州諸国は「米国が没落しつつあり、中国がとって変わる」と見ているのである。
欧州では親中感情も悪くない。ポーランド、イタリア、ドイツ、スペインでは 中国が好きな国民は少数派だが、ほとんど半々である。一番少ないドイツでさえ、中国が好きな国民は日本のそれより4倍近くも多いのだ。
こうしたデータを見る限り、「中国は欧州でソフトパワーを確立している」というブルームバーグの指摘はおおむね正しいことが分かる(もちろん、経済力も含めてソフトパワーと見做すことへの異論はあるにしても)。
実際に、今年6月22日、EUが今後5年間の対中戦略を策定したが、その内容は中国の役割を国際秩序と経済面の双方で高く評価し、中国に期待を寄せるものだった。
具体的には、まず中国からのEUへの投資を一層拡大し、共同研究およびイノベーションを拡大・深化させるとしている。そして、EUと中国はイラン、シリア、アフガニスタン、移民、地球温暖化などの問題解決に向けて一体となって協力を進め、より関係を緊密にしていくという。
■どんな手を打つにしても現状を冷静に把握しておくべき
こうした欧州諸国の反応に違和感や疑念を持つ日本人は多いことだろう。それは日本人として当たり前の反応である。というのは、日本は、人口の89%が中国を嫌悪しているという、世界でも突出した反中の国だからだ(全世界平均は34%)。
だが、日本人は現実を知っておく必要がある。世界のどの国も、日本人と同じ対中観を持っているわけでは決してない。中国が人権を侵害していることは問題視していても、反中になるわけでもないのだ。
実際、この調査でも「中国政府は基本的人権を尊重しているか」という問いに欧州諸国のほとんどは世界でもトップクラスの否定的な反応であり、日本(1位)やカナダ(2位)の数値に近い。が、それは他の面には影響していない。
実際、ピュー・リサーチ・センターの調査では、欧州以外の国を見るとマレーシア、インドネシア、豪州、フィリピンは親中感情が比較的高い結果となっている。特にマレーシアでは78%の国民が中国を「好ましい」としている。世界で最も「中国を好ましくない」とする日本(89%)にかろうじて近いのは、ベトナム(74%)、ヨルダン(64%)、トルコ(59%)ぐらいである。
これはフィリピンの新大統領の政策、「天秤の支柱」なる両天秤外交をモットーとするインドネシアの現政権、アジア諸国のほとんどがAIIBに加盟しようとしたことからも明らかだろう。
以上のように、中国の存在感がその経済力によって着実に高まりつつあることは、数字を見ても明らかである。実際、全世界平均では55%が中国を好きとしている。これは日本でのそれの6倍以上である。
世界の多くの国にとって、南シナ海問題や人権問題は、中国という国を捉える際の1つのファクターでしかない。欧州から見ると、南シナ海や尖閣諸島問題が、我々にとってのウクライナ問題のように遠い世界の出来事なのだ。
日本が、中国を封じ込めるにせよ、抑止するにせよ、協調するにせよ、バンドワゴンする(勝ち馬に乗る)にせよ、こうした点は必ず留意する必要がある。でなければ、情勢判断を誤り、国益を失う、独りよがりの外交や安保政策を展開してしまうだろう。
なお、断っておくが、筆者は別に中国に屈せよと主張するつもりは決してない。抑止力よりも、その基盤となる軍事的対処力を重視するべきであり、中国に対して自由主義と民主主義の攻勢を仕掛けるべきとの立場である。
ただ、たとえそうだとしても、あくまで情勢認識は冷静にすべきだということを言いたいだけなのである。
(参考)【ピュー・リサーチ・センターの調査結果】
(※)この調査の「全世界平均」は中東・アフリカ・アジア・南米等も含む。
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