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EU離脱を問う国民投票が6月26日に英国で行われる。
まず確認しておきたいのは、投票結果がキャメロン政権の判断を縛るものではないということである。国民の意向を投票で確認した政府がどうしなければならないのかは、法律で定まっているわけではない。
むろん、60%を超えるような圧倒的多数で離脱への支持が表明されたら、キャメロン政権も政治的に離脱に向けて動かざるをえない。
キャメロン首相は残留支持を呼びかけているが、労働党やスコットランド民族党の党首たちのような「EU信奉者」ではなく、英国とEUの関係を変える(桎梏を外す)かたちで残留したいと考えている。
昨年5月の総選挙では選挙結果の“管理”が行われたとみているが、それは、この国民投票の結果を“管理”するための準備でもあったと考えている。
政府としては、残留・離脱のいずれが多数派になるにしろ、大差がつく結果は拙いと考えている。
僅差と言える結果であれば、多数派が残留でも離脱でもいいと思っているはずだ。
結論的に言えば、キャメロン政権は、国民投票の結果がどうであっても、EUとの関係性を調整し残留するという方針に変わりはないのである。
ユーロを採用しなかったことでもわかるが、英国はEUのコントロールに甘んずる国ではないという英国民の意思を見せることで、EU(ユーロ圏)との関係性でより高い主権性及び自律性を認めさせるための強い交渉力を手にしたいとキャメロン政権は考えている。
EUは、今後、ユーロ参加国と非参加国で加盟国家としての位置づけを変えていくほかないと考えている。
ギリシャ危機でわかるように、ユーロ圏EUは、財政統合すなわち政治統合に向かわなければ、今後も繰り返し債務危機に見舞われることになる。
政治統合には長い期間を要するが、ユーロ参加国は、金融政策に加え財政政策も徐々にEUに委ねることになる。
英国をはじめユーロ非参加国は、とうていそのような流れに付き合うことはできない。
EU残留をめぐる英国の国民投票は、EUの二層構造化を推し進める契機になると考えている。
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[FINANCIAL TIMES]英離脱が招く破壊ドミノ
チーフ・ポリティカル・コメンテーター フィリップ・スティーブンズ
欧州連合(EU)離脱を問う6月23日の英国の国民投票は、EUと英国両方の運命を左右する。離脱となれば、EUの残る27加盟国にも深刻な結果を及ぼす。ドイツとフランスは間違いなく、英国以外の加盟国の結束をどう高めるか必死に考えている。より深刻なのは、離脱によって分裂の危機にさらされる英国だ。
離脱派の背景には強力なナショナリズムがある。保守党の離脱派は自分たちのロジックを打ち捨て、ファラージュ党首率いるポピュリスト(大衆迎合主義者)の英国独立党と運命を共にしようとしている。両者に共通しているのは移民、支配階級、知識人などあらゆるものへの反発。怒り作戦とでも呼ぶべきものだ。
結果がどうであろうと、有権者の票は地域によって割れるだろう。ロンドン、北アイルランド、スコットランドの3地域はEUとの関係を維持しようとしているはずだ。ウェールズは予想が難しい。
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ロンドンが欧州寄りの立場を取るのは欧州と同様、グローバル都市として、欧州や世界から労働者や移民を受け入れてきたからだ。30万人のフランス人を受け入れ、フランス第6の都市とも呼ばれる。イタリア、ポーランド、スペイン、ポルトガルやもっと遠くの国々から来た人々にとっても第2の故郷になっている。
多様性も享受してきた。5月の市長選では保守党のザック・ゴールドスミス氏が恥知らずな反イスラム運動を繰り広げたが、市民は圧倒的に英国生まれのイスラム教徒、サディク・カーン氏を支持した。
英国らしさを意識しすぎ、離脱に傾いている周辺地域とは一線を画する。ロンドンには貧困も存在するが、イングランド南部の東海岸の一部の町に見られるような民族対立はない。私が思うに、ロンドン市民は「どちらかを選べ」と迫られたら、ポーランド人医師やインド人技師が来るのを拒絶するよりも、英国の地方から移ってくる英国人の流入を厳しくするはずだ。
北アイルランドでは、最近の世論調査で残留派が大多数を占めることがわかった。大まかに言うと、カトリックは残留派で、プロテスタントは離脱派と残留派にほぼ二分しているが、全体でみると、この地域は残留を選ぶだろう。
それでも国民投票で離脱が決まれば、様々な懸念が生じる。かつて北アイルランドが英国に属すべきと主張するユニオニストと、アイルランドへの帰属を訴えるナショナリストを長年の対立から和平に向けて説得できたのは、英国とアイルランドの両国がEU加盟国だったからだ。以来、北アイルランドが経済的発展を遂げてきたのも、アイルランドと開かれた国境を持ち、EUからかなり多くの補助金や投資優遇策を得られてきたことによる。
しかし離脱となれば、今は無きに等しいアイルランドとの国境が、EU加盟国でなくなった英国とEUの境界線になる。つまり単一市場から離れ、英国として移民制限を強行すれば、アイルランドとの往来にも貿易にも国境審査が必要になる。英国では、北アイルランドを経済的な重荷だという人も出てくるだろう。
スコットランドは保守党に近いせいか、欧州懐疑派が根付いたことはない。ファラージュ氏の英国独立党も限定的な支持を得ているだけだ。ロンドンや北アイルランドと同様、スコットランドでも残留派が多数を占めそうだ。だが国民投票で離脱が決まれば、英国からの独立を求める一派を勢い付かせることになる。
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スコットランドの独立は2014年の住民投票で否決された。独立推進派のスコットランド国民党は5月の議会選でも敗北した。過半数を失い、独立を再度問う住民投票を行うことができなくなった。英国の離脱が決まれば、独立を求める議論が再燃するだろう。欧州大陸にバリケードを築くような英国に縛られているぐらいなら、今は英国の一部でいいと思っているスコットランド人も考え直すのではないか。
英国がEUの一部であり続けるのがいいのと同じように、英国も連合王国として結束しているべきだ。その方が国家としての能力を高められるからだ。イングランドがEUを離脱したなら、スコットランドは英国の一部でいるより、EUに加盟した方がいいと考えてもおかしくない。
ロンドンの独立の可能性を論じるのは現時点では早すぎるが、離脱が決まればこの都市が自治の拡大を求めるのは当然だ。明白なのは離脱が連合王国の分裂につながっていくということだ。EU加盟国でなくなった英国は、もはや魅力的ではなくなる。
(3日付)
[日経新聞6月5日朝刊P.13]
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