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エリザベス女王に嫌われてもどうでもいい中国の本心
周辺国は野蛮人、大事なのは外交より内政
2016.6.7(火) 川島 博之
英マスコミの「野蛮人」は礼儀教育必要 中国紙、英女王の発言で
英ロンドンのバッキンガム宮殿で開かれた公式晩さん会で、エリザベス女王(右)と乾杯する中国の習近平国家主席(2015年10月20日撮影、資料写真)。(c)AFP/DOMINIC LIPINSKI〔AFPBB News〕
厳戒態勢の中で行われた伊勢志摩サミットは大きな混乱もなく無事に閉幕した。G7=主要7か国の首脳会議は、世界の経済や平和について話し合う会議であり、第1回会合はG5として1975年にフランスのランブイエで開かれた。その後、イタリアとカナダが加わってG7になり、1998年からはロシアが加わってG8となった。ただ、ウクライナ問題が原因でロシアの参加は2014年から停止されている。
一度はロシアもメンバーになったくらいだ。世界第2位のGDPを誇る中国にも十分に参加資格がある。正式メンバーになりたい。中国は心の底ではそう考えているはずである。また、現在G7のメンバーだって世界経済について話し合うのであれば、中国を仲間に入れた方がよい。そう思っているはずだ。
だが、それは今のところ表立った動きにはなっていない。そして、習近平が主席になってから、中国を正式メンバーに加えようとする動きはどんどん弱くなっているように思える。その最大の原因は南シナ海を巡る問題だろう。
今回の会合では南シナ海での中国の動きに対して国際法を順守するように苦言を呈したが、中国はこれに対して強く反発している。これでは先進国会議の正式メンバーになるどころが、一時は招待されていたように、客人として迎えられることも難しいだろう。
不思議なキャンペーン「中国の夢」
中国を見ているとその発想に古さを感じることが少なくない。そして習近平政権になってから、その度合いは加速しているように思える。
その良い例が「中国の夢」と言う不思議なキャンペーンである。「夢」が具体的に何を指すのか明らかにされていないが、清朝以来の屈辱の歴史を晴らして、世界に冠たる大国として振る舞うことを「夢」と称していることは確かなようだ。南シナ海の環礁の埋め立てもその延長上にあると思ってよい。
だが、少し冷静に考えれば、その「夢」は帝国主義が跋扈した19世紀の発想であることは明らかである。人やモノや情報が自由に行き来する21世紀に、領土拡張を目的に南の環礁を埋め立てて軍事基地を作るなどという発想は尋常ではない。
現代社会では、無人島を無理やり占領して軍事基地を作っても、得られるものはほんの僅かだ。海底油田の領有を強調する向きもあるが、南シナ海から得られる石油や天然ガスは僅かなもの。
そして、原油価格が低迷する昨今、海底から石油を生産することは現実的ではない。遠い将来を考えても、南シナ海を領有する経済的なメリットはほとんどないと言わざるを得ない。
経済的なメリットがないのに、中国はなぜこのように世界から嫌われる行動をとるのであろうか。
現に、多くの国が中国を嫌い始めている。日本だけではない。ベトナムやフィリピン、そして穏健な外交政策を推し進めていたオバマ大統領でさえも、南シナ海の環礁埋め立てに怒り、軍艦を派遣する事態にまで発展した。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明し、良好な関係が喧伝されていたイギリスも、エリザベス女王が先の習近平の訪問を非礼と酷評したように、中国を嫌い始めている。中国の外交は世界中で失敗している。
中国にとって周辺国は野蛮人
なぜ、このようなことになってしまったのであろうか。その答えは中国の歴史にあると考える。それはアヘン戦争以来の屈辱の歴史ではない。東洋の大国として君臨してきた3000年の歴史である。
世界は中国とその周辺の小国から成り立つ──これが中国人の世界観だ。周辺の国は小さくてかつ野蛮だ。時に西域や北方の国が武力で中国を侵略することがあったが、そのような強国でさえ文化を持たない国として馬鹿にしてきた。
実際、西域や北方の軍事強国も、満州族が中国を乗っ取って清朝を樹立すると満州族自身が中国化してしまったように、文化の面では中国を尊敬してきた。
そんな歴史を持つ国である。中国にとって外交とは周辺の野蛮人との交流を意味する。だから、外交を重視していない。
現在、中国の外務大臣は王毅だが、彼は中国共産党では約200人いる中央委員の1人に過ぎない。China7(政治局常務委員)どころか、18人いる“平(ひら)の政治局委員”でもない。そのような軽量級の人物に外交を担当させている。
中国が外交を軽視している証拠である。なお、王毅より序列が上の政治局委員は北京、上海、重慶の市長や広東省の書記を務めており、日本でいえば都知事や大阪や京都の府知事、また北海道知事の方が外務大臣より序列がずっと上ということになる。
外交より内政が大事。これが中国政治の現実である。共産党が政権を担当しているからではない。中国の歴史がそうさせている。自国が世界で一番優れていると思い込んでいるから、他国の指図は受けない。また、一度言い出したら改めることはない。
これは広大な国を治める上で考え出された知恵である。中国の歴代王朝が周辺の国や民衆に妥協することはなかった。論語にある“由らしむべし知らしむべからず”が中国の伝統である。
世界第2位の経済力を誇るようになった中国は対外関係についても、その伝統を踏襲するようになった。そうであれば、エリザベス女王でなくとも、中国の外交使節に接する人びとが中国人をとても非礼な人びとだと思ってしまうのは仕方がないことであろう。
「中国人」とは仲良くなれても
本稿は、なにも中国を非難しようと思って書いているわけでない。筆者は何人もの中国人留学生を教えてきた。その一部とは今も交流している。中国人は世界の中で特に変わった人びとではない。
最近、JBpressで人気を集めている“中国人家族の日本訪問記”(「ここに来て伊勢丹ですか!中国人家族が京都で紛糾」jbpress.ismedia.jp/articles/-/46937 ほか)に見られるように、ごく普通の人たちである。たしかに、ちょっとガサツで厚かましいところもあるけれど、微笑ましい家族愛に満ちた人びとだ。
だが、それが政府となると途端に強硬な態度を取る。それに対して、日本だけでなく世界が辟易とし始めた。
世界は多様である。現代の世界で、中国の皇帝だけが天帝の意を受けて即位したのだからその他の国は中国皇帝を敬いその意に沿うべきだ、などといった考えが通じるわけはない。外交は妥協の産物である。相手の言うことを聞くことは外交的敗北ではない。この道理を理解しなければ、中国が国際社会で生きていくことは難しい。
GDPが世界第2位になったと言っても、1人当たりのGDPは8000ドルに過ぎず、いまだ中進国の域に留まる。その段階で歴史意識に目覚めてしまい、“中国の夢”を語り始めたことは、その進路を不安定なものにしている。
中国では既にバブルの崩壊が始まっている。筆者は急激な崩壊はないと考えるが、それでも投資に重点を置いた成長を続けられないことは明らかであろう。
今後、成長するにはサービス産業を充実させなければならないが、それには世界と交流し、また言論の自由を保障することが欠かせない。そのような時期に、自分の論理だけを声高に叫んで南シナ海の問題を悪化させ、G7に入れてもらえないことは、中国の国益を大きく毀損している。
その行動が短期的な政治的理由ではなく歴史意識に基づいているだけに、中国がちょっとやそっとのことで対外姿勢を軟化させることはないだろう。そうであれば、中国は永遠に主要国首脳会議のメンバーになれない。そして国際的に孤立してしまえば、今以上の繁栄することも難しい。
中国は自ら日本の“嫌中派”が喜ぶような道を選択して、それを突き進み始めたようである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47010
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