http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/784.html
Tweet |
米大統領選で民主・共和両党でそれぞれ候補指名獲得を目指すヒラリー・クリントン前国務長官(右、2016年2月4日撮影)とドナルド・トランプ氏(2016年5月10日撮影)。(c)AFP/dsk〔AFPBB News〕
地滑り的にトランプ勝利?まさかが現実になる可能性 ますます結末が分からなくなってきた大統領選
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46866
2016.5.18 古森 義久 JBpress
米国大統領選挙の本選でヒラリー・クリントン候補とドナルド・トランプ候補の一体どちらが勝利を飾るのか――。こんな問いかけが米国のニュースメディアなどで頻繁に提起されるようになった。
予備選はままだ終了していないが、クリントン、トランプ両候補がそれぞれ民主、共和両党の指名を獲得する見通しが強くなった。その後の本番選挙の予測について、現段階でのさまざまな情報を集めてみた。
■5月に入って様相が変わった
「本選挙ではドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを地すべり的な勢いで破るだろう」
こんな大胆な予測を述べたのは全米ラジオの政治トーク番組で最大の聴取者数を誇る評論家ラッシュ・リムボウ氏だった。トランプ氏の共和党指名獲得が確実となった5月4日の発言である。
リムボウ氏はトランプ支持こそ表明はしていないが、保守本流の強烈な反リベラル派であり、その発言にはバイアスがかかっているだろう。だが、党派を超えたかつてない大きな潮流がトランプ氏を盛り上げており、民主党の基盤に頼るクリントン氏はその勢いにはかなわない、とする解説はそれほど乱暴ではなかった。
リムボウ氏の予測は、最新の世論調査の結果に基づいている部分もある。4月末まで、主要な世論調査機関やメディアが発表した数字はほとんどがクリントン氏優位を示していた。以下は、全米の有権者に「本選挙ではどちらの候補を支持するか」と問いかけた際の答の割合だ。クリントン氏が数ポイントから10ポイントほどリードしている。いずれも4月中旬から4月下旬にかけての調査結果である。
・「リアル・クリアー・ポリティックス」(クリントン46%、トランプ43%)
・「CBSニュース」(クリントン50%、トランプ40%)
・「USAトゥデー」(クリントン50%、トランプ39%)
だが5月に入るとその差が縮まり、「ラスムセン・リポート」(クリントン39%、トランプ41%)のようにトランプ氏がリードする結果も出始めた。
■ヒラリーも負けず劣らず嫌われている
さらに5月中旬になると、各州での調査でトランプ氏の優勢が伝えられるようになった。しかも本番選挙では重要な役割を果たす「競合州」(民主党と共和党がほぼ同水準の支持率で、競り合っている州)でトランプ氏が優位に立つようになったのだ。
例えばオハイオ州では「クリントン39%、トランプ43%」、ジョージア州では「クリントン41%、トランプ45%」という結果が出た。
ご存じのようにトランプ氏は予備選で型破りの暴言や放言を重ねてきた。敵とみなす相手にはののしりの言葉も平然と放つ。政治の経験がないから政策面でも粗雑な発言が目立ち、共和党の「エスタブリッシュメント」(既成勢力)と呼ばれる主流派を敵に回してきた。
各種世論調査でも、トランプ氏を「好きか、好きでないか」と一般に問うと、「35%対60%」というような数字が出る。近年の大統領選挙の候補者では突出した嫌われようである。
ところがクリントン氏も、民主党側の候補としては異例なほど嫌われている。「好き」が40%、「好きでない」が56%という結果が出ているのだ。そのうえクリントン氏は民主党の指名獲得が確実視されても、今なお同党のライバル、バーニー・サンダース上院議員に激しく挑戦されている。
トランプ氏が共和党の他の16人の候補をすべて倒し、本番選挙の準備に集中できるのに対し、クリントン氏はいまだに党内の戦いに精力を使わなければならない。すでにトランプ氏は、「ヒラリーは女性であることだけを売り物に大統領職を目指している」などと個人攻撃のネガティブキャンペーンを開始している。
■これまでの枠組みでは民主党が有利だが・・・
ただし、選挙戦の展望をアメリカ全体の政治構図から点検すると、今なおクリントン氏が有利にみえる。
よく知られるように、アメリカ大統領選挙の本番では、全米各州に人口比で配分された合計538人の選挙人を有権者が選ぶ形をとる。選挙人はどの党の候補を支持するかを表明しているので、一般からの投票はその候補への支持につながる。
各州では、他より1票でも多く集めた候補者が州全体の選挙人をすべて獲得する。そして、その過半数の270人以上の選挙人を得た候補者が、大統領となるわけだ。
この方式のもと、1992年以来の24年間、6回の選挙で18の州はいつも民主党候補を選んできた。18州の選挙人の合計は242となる。一方、共和党は合計13州で常に勝ってきた。選挙人の合計は102である。18州と13州を足した31州は、両党にとって基礎票が動きそうにない州であり、「安全」とみなされてきた。
こうした近年の数字を見る限りでは、明らかに民主党候補が有利である。当選するには、新たに28人の選挙人を獲得すればよいからだ。この構図が続く限り、クリントン候補が優位ということになる。
実際の選挙戦では「固定傾向」のない残りの19州が主戦場となり、194人の選挙人の争奪戦となってきた。トランプ候補にとっては、競合州とされるオハイオ(選挙人18)、バージニア(同13)、ペンシルベニア(20)、ミシガン(18)などでの勝利が不可欠となる。
だが、トランプ候補はこれまでの固定傾向を破壊する勢いを見せている。例えば、トランプ候補が圧勝したフロリダ州の予備選では、投票者は共和党が約230万、民主党が170万だった。フロリダ州の登録有権者は共和党が430万、民主党が460万である。共和党側は登録有権者の全体数が民主党より30万も少ないのに、60万も多い数がトランプ候補に触発された形で投票場所に足を運んだのだ。
中立系のベテラン政治評論家ブライアン・クロウリ―氏は、「トランプ候補支持者たちの現状への爆発的な怒りとエネルギ―の結果だ」と分析する。これまで投票したことのない層までが多数投票してトランプ旋風を後押ししているというわけだ。この層の動きが、これまでの大統領選の固定された枠食みを破壊してしまう可能性もある。
■クリントン氏も脛に傷
一方、トランプ氏には負の要因もなお多い。ヒスパニック(中南米系)層から強く反発されていること、女性や高学歴・知識層から支持を得られていないことなどである。
トランプ支持層の中核は低学歴の白人男性であり、工業地帯の労働者層である。こうした支持層の熱意が民主党側や無党派層の似た立場の人たちにどこまで広がるかが注視される。
クリントン氏の政治歴や政策論は傑出している。初の女性大統領誕生という期待もかかる。だが、彼女への反発や不信も強烈である。国政では無名に近かったサンダース氏に多くの州の予備選で敗れたのも、民主党内での不人気ぶりを証明している。
また、クリントン氏の国務長官時代の私的メールの乱用は、政府機密保護の点で明らかな規制違反であり、今も連邦捜査局(FBI)の捜査対象となっている。リビアのベンガジで米国大使が殺されたテロ事件への同氏の対応についても、なお追及が続く。中国関連の疑惑献金や、クリントン財団への不透明な巨額寄付も霧に包まれたままだ。
クリントン氏か、トランプ氏か。次期大統領が誰になるかの予測は従来の選挙よりもはるかに難しい。なにしろトランプ氏が共和党の指名候補になることさえ、アメリカでは誰も予測できなかったのだ。それだけにまったく予想がつかず何が起きるか分からない大統領選挙となりそうである。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。