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1990年代から広告会社の役割は重要度を増し、国際戦略でなくてはならない存在になっている
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201605160001/
2016.05.17 04:45:35 櫻井ジャーナル
商品をヒットさせるためには人びとが望むものを作るか、望むように仕向ける必要がある。報道も例外ではなく、顧客(読者や視聴者)にとって不愉快な事実を伝えてはビジネスとして成功しない。
また、マスコミの利益は広告に頼っているのが現実で、広告主にとって不愉快な事実も伝えられない。マスコミは営利企業であり、銀行から融資を受けているのだが、その融資を打ち切られれば、即、倒産である。つまり、金融資本には逆らえない。勿論、スキャンダルを抱えていれば、治安当局の顔色を伺うことになる。暴力にも弱い。
広告と融資に大きな影響力を持っているのが広告代理店、特に電通である。この電通は1901年7月に光永星郎が創設した日本広告と電報通信社から始まった。1906年に電報通信社は日本電報通信(電通)に改組改名、07年に電通と日本広告が合併、35年に電通は新聞聯合社と合併して同盟通信社になり、36年に電通は通信部門を同盟通信社に委譲、同盟の広告部門を吸収して広告代理業を専門とする電通が発足した。敗戦直後の1945年10月に同盟は共同通信社と時事通信社に分離、一方日本電報通信は1955年に正式社名を電通に改称している。このように電通は歴史的に通信社、特に共同通信との関係が深く、別会社になってからも情報の遣り取りはあるという。
国際的に見ると、1990年代から広告会社が国際戦略で果たす役割は大きくなった。その幕開けとも言える出来事が1990年10月にアメリカ下院の人権会議(非公式)で行われた少女「ナイラ」の発言。アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置、赤ん坊は死亡したと訴えたのだが、その話は全て嘘だった。
その嘘を人びとに信じさせる演出は広告会社のヒル・アンド・ノールトンが行った。その少女はアメリカ駐在のクウェート大使の娘で、イラク軍が攻め込んだときにクウェートにはいなかったことがわかっている。この演出のため、クウェート政府がヒル・アンド・ノールトンに支払ったカネは1000万ドルだという。「砂漠の嵐作戦」の宣伝のため、レンドン・グループに毎月10万ドルを支払ったとも言われている。
イラクをアメリカ軍が先制攻撃した際、報道統制のために「埋め込み取材」が実行されたが、これを考え出したドナルド・ラムズフェルド国防長官のスポークスマン、ビクトリア・クラークはヒル・アンド・ノールトンの出身だ。(Solomon Hughes, “War On Terror, Inc.”, Verso, 2007)
当初、アメリカ政府は侵略戦争の口実に「アル・カイダ」を使ったが、後にイラン、イラク、朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、宣伝し始める。この名称は広告の専門家やロビーストたちが考えたのだが、その中心にもクラークがいた。
コリン・パウエル国務長官が次官に据えたシャルロット・ビアーズはふたつの大手広告会社、オグルビー・アンド・マザーとJ・ウォルター・トンプソンのトップになった人物で、「単純化」と「浅薄化」が彼女の手法だった。イラクへの先制攻撃をアメリカ政府は「イラクの自由作戦」と命名したが、これもビアーズのアドバイスに従っている。日本では小泉純一郎が「単純化」と「浅薄化」を採用、効果はあった。
ユーゴスラビアを破壊した際に雇われた広告会社はルダー・フィン・グローバル・コミュニケーション。セルビア人を悪役に仕立てるため、クロアチア政府は1991年8月にこの会社と契約している。
日本でも人びとに戦争するよう仕向ける仕事を広告会社は請け負っているだろうが、それ以外にもTPPや原発の推進でも「活躍」していることだろう。
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