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米ワシントン州リンデンで開かれた選挙集会で演説するドナルド・トランプ氏(2016年5月7日撮影)。(c)AFP/Jason Redmond〔AFPBB News〕
日米同盟を揺るがすトランプ発言、米国内の反応は? これを機に脱却すべき「日米同盟ありき」という思考回路
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46801
2016.5.12 北村 淳 JBpress
アメリカ共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏が、「アメリカはドイツ、日本、韓国などの同盟国を守っているのだから、それらの同盟国は米軍駐留経費の全額を負担すべきだ」と公言した。
日本ではこの言動がメディアに大きく取り上げられ、日本政府も反発している。だが、アメリカでは極東軍事戦略に関与している軍関係者以外にはほとんど関心が持たれてはいない。それはトランプ候補の発言の内容が、専門知識のある人々以外の多くのアメリカ人にとってはさしたる疑問も感じられず、「当然」と受け止められているからかもしれない。
8年前の大統領選挙の際には、当初は優勢であったヒラリー・クリントンにせよ現オバマ大統領にせよ、民主党候補者が大統領になれば「間違いなく軍事費が削減されアメリカの軍事力が低下するであろう」と多くの米軍戦略家たちが危惧していた。その危惧は現実のものとなったどころか、オバマ政権が2期続いたため国防費は大削減され、米軍戦力は予想を大きく上回って弱体化してしまった。
トランプ候補に対しては、少なくとも米軍戦略家の間ではこのような危惧は囁かれていない。同候補は、基本的には国防予算を増額して(といっても大削減された軍事費を10年前の水準に戻す努力を開始するということになるのであろうが)軍事力の弱体化に歯止めをかけ、“世界の警察官”としての地位を復活させると公言しているからである。
■“まとも”なアドバイザーがいないトランプ陣営
ただし、極東軍事戦略に関与する人々にとっては、この限りではない。アジア地域においてアメリカの軍事力が低下することを懸念している。
というのは、日本のメディアも盛んに取り上げているように、トランプ氏が日本をはじめとする同盟国に「米軍駐留費の全額を要求する」と公言しているからだ。
米軍の日本駐留に話を絞ると、先週訪米中であった石破氏も公の場で苦言を呈したように、トランプ氏の日米同盟に関する言動はあまりにも稚拙に過ぎる。もっとも、このような言動はトランプ氏本人の問題というよりは、トランプ陣営には安全保障あるいは極東政策の“まともな”ブレーンが存在していないことの何よりの証左ということができよう。
元国務長官も務めた民主党のヒラリー・クリントン陣営の場合、安全保障並びに東アジア戦略に関する強力なアドバイザーをずらりと揃えている(ただし、対日戦略に関しては決してそのようには見受けられないのであるが・・・)。
それに反して、トランプ陣営ではそのようなアドバイザーが、まったく見受けられないというのが米軍戦略家たちの見方であった。まさにその結果として、上記のような稚拙な暴言が飛び出してしまったと言えよう。
■トランプ氏の認識は本選に向けて「是正」される?
そもそも、在日米軍に関係する費用を全て日本に出させるというならば、在日米軍は日本の傭兵部隊ということになり、当然ながら日本防衛以外の任務を遂行することを日本が拒絶することが可能になる。
つまり、アメリカは傭兵派出国家に転落し、とても国際社会から頼りにされる“世界の警察官”とはなりえない。トランプ氏の標語である「偉大なアメリカの復活」という理想は、日本をはじめとする同盟国から米軍駐留費全額を徴収しようとした瞬間に消えて無くなってしまうのだ。
もちろん、軍事同盟を金銭面でしか捉えていないトランプ氏や、そのような暴言を支持する無知な聴衆たちと違って、米軍関係戦略家たちはトランプ氏の言動が実現可能であるとは微塵も思っていない。
共和党の大統領候補になったからには、安全保障や極東戦略を担当する“まとも”なブレーン集団が雇われて、トランプ氏の日米同盟をはじめとする軍事同盟に関する認識が是正されるものと、それらの戦略家たちは考えている。
したがって、「現段階でトランプ大統領候補による日米同盟の無理解を、必要以上にとやかく騒ぎ立てることはあるまい」というのが日米同盟の内容を知る“まとも”な米軍関係者たちの考えである。
■オプションのあるアメリカ、オプションのない日本
とはいうものの、日米同盟の内容を十分に理解していないトランプ氏の言動に疑義を呈するのは、米国では一握りの事情通の軍関係者だけである。アメリカ社会における日米同盟に対する認識はその程度であることを、日本防衛当局や国会は理解しておかねばならない。
つまり、米国でトランプ氏のような「米軍駐留費全額を負担しろ」といったような無理難題が浮上して、日米安全保障条約が大幅に変容(あるいは廃棄)される日を想定した国防戦略を準備しておくことも、日本の国会や政府の責務である、ということだ。
少なからぬ米軍関係戦略家たちは常日頃次のように述べている。
「日米安保条約に頼りきり『国防戦略といえば日米同盟』といったゼロオプションの日本と違い、我々は日米同盟が機能しなくなった場合のいくつかのオプションを用意してある。もちろん、米軍戦略家に日米同盟の継続を望まない者が存在するとは思えない。だがいずれにせよ、オプションのない日本と違い、アメリカにはオプションがあることだけは確かだ」
米海兵隊は沖縄にはできる限り居続けたいと考えている。その理由は、沖縄が東北アジア地域の戦略要地である上に、ジャングル戦闘訓練センターという得難い演習場も存在するからである。だが実際には、沖縄から総撤退した場合の極東戦略の仮案をいくつか立案しているという。
もっともアメリカ海兵隊の格言の1つに「我々には、永遠の友もいないし、永遠の敵もいない」というものがある。そうである以上、永遠に日米同盟が継続し、永遠に海兵隊が沖縄や岩国に基地を構え続けるなどとは海兵隊自身も想定はしていない。
トランプ氏の暴言を1つのきっかけとして、日本国防当局も「すべての国防戦略は『日米同盟ありき』を出発点とする」というこれまでの思考回路から脱却するべきであろう。日米同盟がなんらかの理由によって機能不全に陥った事態を前提にした国防戦略の立案に着手することが望まれる。
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