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やりすぎ禁物! 経済制裁に潜む罠
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160511-00010000-wedge-int
Wedge 5月11日(水)12時10分配信
ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、3月29日付同紙で、ルー財務長官のスピーチを引用して、経済制裁を多用しすぎると制裁の有効性が害され、米国に有害となり得る、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。
経済制裁は相手に圧力を加えるのに、軍事力より安上がりでより有効なので、最近の米外交政策の特効薬となった。
■制裁を発動しすぎるとどうなる?
しかし、ルー財務長官は、最近のスピーチで制裁の行き過ぎを警告した。
ルーは制裁の効果と弱点を指摘することで、21世紀の米国の力につき重要な問題提起をした。制裁が有効なのは、米国の金融市場が世界経済の神経の中枢となっているからである。しかし、あまりに多くの制裁が課され、米国の制度が外国人にとって複雑で厄介になり過ぎると、外国人は米市場以外で決済をする方法を見出すであろう。それは米国の制裁と、それを支える米国経済を弱めることになる。特効薬は毒薬になる。
イランに対する制裁は、米国のいわゆる「二次的」制裁が、イランでビジネスをする会社に米国の銀行や他の金融機関の利用を禁止し、制裁が多国間の協調で行われたため、有効であった。
これに対し、50年にわたるキューバに対する米国一国の制裁は、効果が無かった。
ルーはさらに「制裁の目的は相手国に政策の変更を迫ることなので、相手国が政策の変更に同意したら、利益を与えなければならない。そうでないと米国の信頼性が失われ、制裁で政策の変更を求めることが困難になるだろう」と言っている。
ルーはまた、制裁の効果が無い場合に追加制裁を課すことに懐疑的である。クリミアと東部ウクライナに関わる西側の制裁に対し、ロシアは何もしていないが、追加的制裁ではなく、忍耐が必要であると述べている。
制裁は抗生物質と似ている。抗生物質は与えすぎると、効かなくなる。
同様に制裁も過度にしないよう注意すべきである。
出典:David Ignatius,‘A grim warning against America’s overuse of sanctions’(Washington Post, March 29, 2016)
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制裁は有効な外交政策であるが、使い方には注意が必要である、との指摘です。その通りでしょう。
米国の制裁の一番の武器が、米国の銀行や他の金融機関へのアクセスを禁じることであるという、ルー長官の指摘は正しいです。イランへの制裁が効いたのは、まさにこの点でした。
また、制裁は相手国が要求を呑んだら、相当の利益を与えるべきである、というのもその通りでしょう。イランが核開発を規制したら、イランが世界市場に戻ることができ、イラン経済を活性化できる、ということが、イランが核開発の規制に合意した最大のインセンティブでした。
■制裁が効かない好例は北朝鮮
他方、制裁が効かないこともあります。キューバに対する制裁が一つの例ですが、これは論説が言っているように、米国一国だけが実施していたということのほかに、キューバのような国は、厳しい生活に耐えることが可能で、いわば制裁慣れしていたとも言えます。ちなみにキューバに対する制裁については、キューバのカストロ政権を罰するということが、実質意味を失っていたことが指摘されます。
制裁が効かないいま一つの例は北朝鮮です。北朝鮮については、北朝鮮の経済の生命線を握っている中国が、真剣に制裁を実施しないことが、制裁が効果を上げない最大の理由であり、今後とも中国は表面的には制裁の強化に合意すると言っても、実施面では手を抜き続けるでしょう。
なお、米国等西側は、北朝鮮が核を放棄することを制裁解除の条件としていますが、西側が、どのような政治的、経済的インセンティブを与えようとしても、北朝鮮が核を放棄することはあり得ないでしょう。従って北朝鮮に対する制裁は今後とも続くことになります。
岡崎研究所
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