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大胆予測!トランプ大統領誕生なら、アメリカの経済政策はこうなる 日本は「新時代到来」にいまから備えよ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48609
2016年05月09日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■「ハマコー」が首相になるぐらいありえない話だったのに…
米大統領選で、ドナルド・トランプ氏(69)が共和党候補になることが事実上確定した。あれだけ泡沫候補といわれ続けていたのに、驚きである。現時点では、共和党指導者のなかにもトランプ氏を拒否する者もいるだろうが、なにしろもう他に候補者がいない。
これまで、共和党候補では、トランプ氏の他に、16名、テッド・クルーズ上院議員、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事、リンゼー・グラム上院議員、ジョージ・パタキ元ニューヨーク州知事、リック・ペリー元テキサス州知事、スコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事、ジム・ギルモア元バージニア州知事、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、ベン・カーソン神経外科医、クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事。
そして、カーリー・フィオリーナ元ヒューレット・パッカード最高経営責任者、マイク・ハッカビー元アーカンソー州知事、ボビー・ジンダル・ルイジアナ州知事、ランド・ポール上院議員、マルコ・ルビオ上院議員、リック・サントラム元上院議員がいたが、いずれも撤退した。
すでにいろいろと報じられているが、このトランプ氏は共和党候補としては異例づくめである。暴言もすさまじい。
「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」
「メキシコは問題のある人間を(米国に)送り込んでいる。彼らは強姦犯だ」
「メキシコに対して国境に万里の長城を造る」
「移民なんかくそくらえ」
「世界同時株安は中国、お前らのせいだ!」
テレビのエンターテインメントがかすんで見えるくらいに、その発言は刺激的だ。
その暴言の度合いは、日本で探してもちょっと思いつかないくらいだ。トランプ氏が米大統領の共和党候補になるのは、ちょっと古い記憶であるが、政界の暴れん坊で「ハマコー」といわれた浜田幸一元衆議院議員が首相になるかどうかというほどの、あり得ない話であったはずだ。
■トランプが懐に隠し持つヒラリーへの「爆弾」
その発言をみていくと、外交面での考え方は従来の米国とは一線を画するもので。いわゆる「孤立主義」。もともとアメリカは、第二次世界大戦前まで「モンロー主義」に代表されるように、アメリカの国外には不干渉を原則とする孤立主義だった。
それが日本の参戦と第二次世界大戦後の冷戦によって、アメリカは世界に関与する「覇権主義」になった。
オバマ政権でも、アメリカはもはや世界の警察官でないというなど、「孤立主義」への回帰が見られた。これが、中途半端なオバマ外交という批判を招き、シリア問題、中国問題、ウクライナ問題などで中国やロシアの覇権の台頭を許し、世界平和を不安定にしたといわれている。
そこで、共和党としてはオバマ政権にかわってアメリカの覇権をしっかり主張できる候補者選びをしていたが、よりによって、そうした指導者層の思惑と真逆のトランプ氏が候補者選で勝ち抜いたのは、なんとも皮肉な状況だ。
トランプ氏の主張は、共和党の伝統的なそれとは真逆のことが多い。かつては、民主党側にも多額の寄付をしており、政治的なスタンスはどちらであるのか判別しにくい。また、トランプ氏とクリントン夫妻はいい関係であることも知られている。ちなみに、トランプ氏はクリントン夫妻に寄付し、クリントン夫妻はトランプ氏の結婚式に出席した過去もある。
こうしたこともあり、1年ほど前には「トランプ氏の米大統領選への出馬は、共和党内を混乱させてヒラリー氏を有利にするためのものだ」という観測もあったほどだ。
ところで、トランプ氏の言動がいくら嫌いでも、米国大統領になる可能性がある以上、日本としても対応を考えておかなければならない。ましてトランプ氏は、クリントン夫妻が無心したことがあるらしいので、ヒラリー氏の金銭的な弱点をつかんでいる可能性がある。もしそうであるなら、大統領本戦の終盤にその秘密兵器を持ち出したら、トランプ氏が大統領になるかもしれないのだ。
最近でも、トランプ氏は在日米軍の駐留経費を日本は負担すべきなどといっている。それを含めて、安全保障面での発言については、4月4日付けの本コラム(「「米軍撤退」「核保有容認」トランプ発言によって、安保反対論者は致命的なまでに追い詰められた」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48341)に書いてあるので、それを参照してほしい。
米国の孤立主義は、世界平和を脅かすので、日本としても、軍事力・経済力をしっかりつけておかなければ危なくなる。
トランプ氏が、各国に米軍駐留経費を全額負担せよというのであれば、日本駐留の米軍に対するメリットを伝えた上で、日本の負担率が世界最高水準であることを指摘し、他の同盟国が日本並みに水準になったら、日本と交渉しろとでもいったらいい。トランプ氏は、ビジネスの交渉スタイルを踏襲するようだから、日本としても他国より有利ではないか。
■TPPは、残念としかいいようがない
さて、今回は、トランプの経済政策を考えたい。
まず、貿易面では、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に反対で、日本からの自動車輸入に高額関税を課せという。これは従来の自由貿易主義をいうアメリカ、特に共和党とはまったく異質な政策だ。これに感化されたのか、本来TPP推進であったヒラリー氏までTPP反対を言い出す始末だ。
筆者は、本コラムを見ればわかるが、TPPの交渉参加には無条件で賛成で、交渉結果をみて最終判断すればいいという立場だ。今回の交渉結果は、アメリカから見れば不本意であっても、逆に見れば、日本から見れば合格点だ。
もっとも、アメリカが賛成しなければTPPは成り立たない。アメリカが交渉結果について不満でTPPから降りるのは、日本として引き留める価値があるものの、最終的にはアメリカの判断になるので、残念としかいいようがない。
■トランプは「ヘリコプターマネー」推奨派?
マクロ政策はどうだろうか。トランプ氏は、財政政策では必ずしも緊縮派ではない。これも、従来の共和党とまったく違う方向だ。歳入面で主張するのは、所得税減税、一部富裕層増税、法人税引き下げ、歳出面ではオバマケア廃止(これは歳出増)、インフレ投資と、まるで民主党の政策のようだ。
さらに、財政再建についてほとんど言及しないばかりか、債務解消公約を撤回している。債務管理について、中央銀行を活用しようとしていることは注目に値する。トランプ氏は、自らを「借金王」といいながら、低金利を歓迎する意向を示している。といっても、今のイエレンFRB議長はよくやっているといいながら、交代を示唆している。その上で、自分の政策を共有できる人を、次期FRB議長にしようとしているようだ。
このままイエレンFRB議長が続投するようであれば、インフレ率はせいぜい2%どまりになるだろう。そのうちに利上げになるはずだが、トランプ氏はもっと低金利の継続を狙っているのではないか。
最近のトランプ氏の発言をみていると、いよいよ「ヘリコプターマネー」を言い出すのではないかと筆者は思っている。
ヘリコプターマネーのもともとの意味は、中央銀行がカネを刷ってヘリコプターから人々にばらまくというものだ。ただし、実際にこれを行うのは難しい。いつどこにヘリコプターが来るのか教えてほしい、というジョークすらある。現在のように中央銀行と政府が役割分担している世界では、中央銀行が新発国債を直接引き受けることで財政赤字を直接賄うことを言うことが多い。
このアイデアはかつてノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏によって論じられ、2003年にベン・バーナンキ氏(当時FRB理事、その後FRB議長)によって再び取り上げられたものである。バーナンキ氏のそれは名目金利ゼロに直面していた日本経済の再生アドバイスであったが、具体的な手法として、国民への給付金の支給あるいは企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債の買い入れることを提案していた。
中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が、給付金や減税を通じて国民や企業にばらまかれていることになる。その意味で、バーナンキ氏の日本経済に対する提案はヘリコプターマネーというわけだ。
なお、この提案は、ノーベル賞経済学者のスティグリッツ氏が主張した政府紙幣発行によって給付金・減税を行うものと本質的には同じである。
現在、各国で行われている量的緩和は、財政政策と同時であれば、その経済的な効果はヘリコプターマネーと同じである。黒田総裁を含めて、各国の中央銀行がヘリコプターマネーを否定するのは、政府の意図と無関係に、自分たちの判断として量的緩和していることを強調したいからである。
いずれにしても、トランプ氏のマクロ政策は、積極財政、金融緩和であれば、当初アベノミクスが目指していたものと同じである。安倍政権では、民主党時代に仕組まれた消費増税を実施したので、積極財政が後退して、アベノミクスが変質してしまった。ひょっとしたらそのことをトランプ氏の周辺は研究しているのかもしれない。
積極財政と金融緩和を行うつもりであれば、トランプ氏の「中国の人民元、日本の円などが不当に安いのはけしからん」という主張と整合的になる。アメリカが金融緩和すれば、ドルは安くなって、結果として、人民元や円は強くなるからだ。
となれば、日本はインフレ目標が許す範囲で金融緩和しないと「刷り負け」になる可能性がある。仮に各国で金融緩和競争があっても、各国にインフレ目標があれば、通貨安競争にはならない。こうした意味で、トランプ氏の積極財政、金融緩和は世界経済にとってはそれほど不味いことにならないだろう。
トランプ氏の政策、対外面での孤立主義は世界平和に害悪であるが、内政面での積極財政・金融緩和は意外といい政策で、民主党のお株を奪うのではないだろうか。いずれにしても、日本も備えあれば憂いなしだ。
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