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米メリーランド州ヘイガーズタウンの選挙集会で支持者らに語り掛けるドナルド・トランプ氏(2016年4月24日撮影)。(c)AFP/MOLLY RILEY〔AFPBB News〕
米大統領選、来るべきヒスパニックの逆襲
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46716
2016.4.28 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月25日付)
我々が欲しいものは何か? ドナルド・トランプ氏は群衆に向かってこう問いかける。「壁だ!」と群衆は返す。誰が壁の建設費用を払うのか? 「メキシコだ!」 さて、ここにトランプ氏が決して聞かないことがある。記録的な数で私に反対票を投じるのは誰か、という問いだ。その答えは「ヒスパニックだ!」というものになるはずだ。違う点は、最後の問答がほぼ確実に現実になることだ。
カリフォルニア州での最後の予備選に向けてカウントダウンが激しくなる中、同州の保守派層はまた別のことを自問するかもしれない。共和党がこのゴールデンステート(黄金州)で歩んだのと同じ道のりをたどることを望むか、という問いだ。
もし答えがノーならば――そしてノーであるべきだ――、なぜトランプ氏は6月7日の同州予備選の世論調査でリードしているのか?
米国の未来を垣間見たいのであれば、カリフォルニアに目を向けるといい。2014年、トランプ氏が大統領選への出馬を検討していた頃、同州はルビコン川を渡った。ヒスパニックの数が白人の数を超えたのだ。その2年前、カリフォルニア州はこれと関連した政治的な節目を突破した。史上初めて、全州を管轄する公職に共和党員が1人も選ばれなかったのである。
州知事のジェリー・ブラウン氏が民主党であるだけでなく、州議会の上下両院とも、民主党がざっと3分の2の議席を押さえている。共和党の人間が州知事に選ばれたとしても、議会が知事の拒否権を覆すことができる。ロナルド・レーガンとリチャード・ニクソンを生み出した州は彼らの率いた政党を、拒否権が通用しない少数派の座に追い落した。そして共和党はその座にとどまる可能性が高い。
トランプ氏は全国政党としての共和党のために似たような進路を描くことに最善を尽くしている。2012年の前回の大統領選では、ミット・ロムニー氏がヒスパニックの票の27%しか確保できず、ジョージ・ブッシュ前大統領の得票率を大きく下回った。これがロムニー氏の敗北の大きな要因だった。同氏はヒスパニックに「自主国外退去」するよう迫った。当時は彼の言葉が強硬に聞こえた。
トランプ氏はメキシコ系の不法移民を「強姦魔」「殺人犯」と呼び、力ずくで国外退去させると誓うことで、これを数段階引き上げた。驚くまでもなく、ヒスパニックの間でのトランプ氏の支持率はぎりぎり2ケタだ。
一世代前には、中南米系の米国人はカリフォルニア、テキサス、シカゴに集中していた。今では全国に散らばっている。コロラドやノースカロライナ、フロリダ、バージニアといった州では、キューバ系以外のヒスパニック有権者が選挙戦の勝敗を決する可能性がある。すべての兆候を見る限り、ヒスパニックのグループは2016年にこれを現実のものにする決意を固めている。
ハードルはかなり低い。支配的なスペイン語のテレビ局ユニビジョンは、新たに300万人のヒスパニックを有権者登録する運動を率いている。陣頭指揮を執るのは、同局の花形ジャーナリスト、ホルヘ・ラモス氏。トランプ氏が昨年、記者会見から力ずくで追い出した人物である。
ヒスパニックはテレビをつけたり、フェイスブック上の自分のページを訪れたりするたびに、有権者登録するよう迫られる。これと肩を並べる唯一の運動は、バラク・オバマ氏の選対本部が2008年にアフリカ系米国人の有権者に対して展開したもので、それは爆発的な成功を収めた。
ユニビジョンはオバマ氏の選挙運動以上に普遍的だ。視聴率が英語のネットワークテレビのそれを上回ることも多い。もしユニビジョンが有権者動員の目標を達成できれば、どうすればトランプ氏がホワイトハウスを勝ち取れるのか、分からない。
だが、これはほんの手始めに過ぎない。ヒスパニック系の米国人は、白人の米国人より若い。これは、今後選挙が行われるたびにヒスパニックが占める投票の割合が高まっていくことを意味する。ピュー・リサーチ・センターの「ヒスパニック・トレンズ」によると、ヒスパニックの年齢中央値は28歳。これに対して白人は43歳だ。
年齢の尺度を若い方へ下がっていくほど、ヒスパニックの割合が高くなっていく。昨年は史上初めて、5歳未満の米国人の間で白人が半数を割り込んだ。これは大雑把に言って、30年前のカリフォルニアと同じだ。
そこへ共和党のカリフォルニア州知事、ピート・ウィルソン氏が登場した。1994年に、不法移民に緊急時以外の公共サービスの利用を禁じる「プロポジション187」を可決し、不法移民を特定するスクリーニング制度を立ち上げた人物である。
有権者登録した正規のヒスパニック系移民にとっては、「プロップ187」はトランプ氏の壁に相当するものだった。カリフォルニア州の共和党は、あれ以来ずっと、下り坂を歩んでいる。
トランプ氏とヒスパニックの迫り来る列車衝突には、2つの大きな皮肉がある。1つ目は、不法移民に対する抗議の叫びは数年遅いということだ。この5年間で100万人以上がロムニー氏の助言に従い、「自己国外退去」した。
米国の国勢調査によると、不法移民の数は1270万人から1100万人に減った。米国の移民危機は終わり、流れはある程度、反転し始めている。米国の国境警備隊によれば、2016年第1四半期に米国とメキシコの国境を渡っているところを捕まった人の数は、1969年以来の低水準に落ち込んだ。
政治は現実よりも認識の問題だから、このような事実はトランプ氏の支持者に何の影響も及ぼさないだろう。彼らは正しいか間違っているかは別として――ただし、おおむね間違っている――、自分たちの賃金減少と不法労働者の影響の間に関係があると考えている。
2つ目の皮肉は、共和党は以前にも同じ経験をしたということだ。同党は自分たちの記憶喪失の代償を払うことになるだろう。1920年代に、プロテスタントが大多数を占めた共和党は、次世代までカトリック教徒の米国流入を制限することになった規制を押し通した。シチリア、アイルランド、ポーランドから大量に流れ込んでいた移民は、滴のように細った。
そうすることで共和党は次世代まで、民主党に対するカトリック教徒の忠誠心を固めた。「レーガン・デモクラット」たちが共和党に投票できると感じたのは、1980年代になってからだ*1。
共和党はどれくらい、トランプ氏の反ヒスパニック発言の代償を払い続けることになるだろうか。歴史が何らかの指針になるとすれば、長期に及ぶだろう。米国の未来がまた別の指針になるとすれば、トランプ氏を大統領候補に指名することは、もう後戻りできない地点を刻むことになるかもしれない。カリフォルニアは、言うなれば「壁の文字(writing on the wall、災いの前兆の意)」を提供している――共和党がその費用を払う壁である。
*1米国の北部、中西部の白人労働者階級を中心に、伝統的に民主党を支持してきた有権者が1980年代に共和党のロナルド・レーガン大統領の支持に回った。
By Edward Luce
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