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[グローバルオピニオン]「米国第一」、真剣に議論を
米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏
米共和党から大統領選挙に立候補している不動産王ドナルド・トランプ氏が大統領になることはない。理由の一つは女性の支持の低さだ。4年前のオバマ大統領再選では女性票も原動力だった。4月初めに発表された世論調査でトランプ氏支持の女性は23%にすぎない。共和党候補になっても大統領選の勝利はない。しかし、同氏の外交政策を吟味しなくていいというわけではない。その見解への支持は大統領選後も続くからだ。
一般的な認識とは異なり、トランプ氏は孤立主義者ではない。米軍の強化を望み、シリアに米地上部隊を派遣する可能性を示唆したこともある。場合によっては核兵器を使って過激派組織「イスラム国」(IS)を「たたきつぶしてやる」と言い、テロ容疑者の拷問を認めると語っている。貿易に反対しているわけでもない。過去の不公平な貿易協定を破棄し、米国に有利な条件で新たな協定を結びたいと言っているだけだ。
トランプ氏は、米同盟国のほとんどは力が弱く、ワシントンの愚直ともいえる寛大さを利用していると考えている。そして同盟国や機関が米国の行動を制約しているうえ、金がかかりすぎると批判する。例えばフランスやドイツなどが軍事支出を大幅に増やさない限り、北大西洋条約機構(NATO)から脱退すべきだと主張する。また、米国が他国の安全保障の責任まで負わなくて済むように、日本や韓国、そしてサウジアラビアにさえも核武装を認めるべきだと主張する。
確かに、米国の伝統的な同盟国は、米国よりも大きな危険に直面している。欧州は中東の混乱やロシアの野心に米国よりも影響を受けやすい立場にある。中国の拡張や北朝鮮の脅威は、米国よりも日本や韓国にとって大きな懸念だ。ISは米国よりもサウジアラビアにとってはるかに大きな脅威だ。しかし、米国人はかつてほどサウジアラビアの石油を必要としていない。多くの米国人は今や貿易は雇用の喪失につながるというトランプ氏の主張を支持しているようにみえる。最近では、グローバル化が米経済を強化すると考える米国人はほとんどいなくなった。
私は最近、トランプ氏が「米国第一(アメリカ・ファースト)」の外交政策を掲げていると書いた。本人がこれを吹聴しているのを知って驚いた。ほめたつもりはなかったが、米国はこうした意見が正しいかどうか、なぜそうなのかについてオープンで真剣な議論を必要としている。
貿易相手により多くの経済的利益をもたらす貿易協定はよい協定なのか。他国の負担を軽くするために米国がより多くの負担をすることは、米国の国益にかなうのか。不安定化が進む世界で、米国は安全を守り繁栄を続けられるのか。世界中の航行の自由を保障するために米海軍が他国よりも多くのことをするのは、米国の国益に本当にかなうのか。集団安全保障に伴う費用やリスクを同盟国がもっと負担する必要があると米国の政策決定者は主張すべきか。米同盟国と米有権者はもっと多くのことを知る必要がある。
トランプ氏が大統領になることはないと分かっていても、その外交政策を無視するのは愚かだ。同氏が提起している問題や代弁している怒りに対応しなければ、今後もそれらは課題として残る。
それだけに、対立候補がいまだにこうした議論を回避できると考えているのは残念なことだ。
Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。ユーラシア・グループは米調査会社。著書に「スーパーパワー――Gゼロ時代のアメリカの選択」など。46歳。
[日経新聞4月18日朝刊P.4]
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