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2016年04月14日 (木) [NHK総合]
「韓国与党大敗の衝撃」
出石 直 解説委員
4月13日に投票が行われた韓国の総選挙は、パク・クネ大統領を支える政権与党の「セヌリ党」が議席を大幅に減らして大敗し、第一党の座を明け渡すことになりました。野党が2つに分裂して与党有利の展開ではないかとみられていただけに衝撃の結果です。今回の選挙結果と今後の日韓関係、北朝鮮との関係に与える影響について考えます。
今回の選挙は、任期残すところ2年を切ったパク・クネ大統領の政権運営を問うとともに、来年12月に行われる大統領選挙の前哨戦という重要な位置づけでした。
きょうのポイントです。
▽与党の大敗でパク・クネ大統領の求心力が低下することは避けられません。強権的との批判もあったパク・クネ大統領の政権運営に少なからぬ影響を与えるものとみられます。
▽次に、大統領選挙への影響です。韓国の大統領には再選はありません。有力候補だった与党の代表が敗北の責任をとって辞意を表明するなど、次の大統領選挙に向けた候補者選びの行方は混とんとしてきました。
▽そしてもっとも気になるのが日韓関係への影響です。とりわけ去年暮れに決着した慰安婦合意が約束どおり履行できるのかどうか。さらには挑発を続ける北朝鮮への対応がどうなるのか。こちらもまた暗雲が立ち込め始めています。
【パク大統領の求心力】
まずパク・クネ大統領の求心力から見ていきましょう。
政権与党の「セヌリ党」は現有の146議席から122議席と議席を大きく減らしました。
野党の「共に民主党」は102議席から123議席へと躍進し第一党となりました。
第三極を模索して「共に民主党」と袂を分かった「国民の党」は20議席から38議席へと2倍近くも勢力を拡大しました。
保守層、とりわけ高齢者層から圧倒的な支持を受け、かつては“選挙の女王”とも呼ばれたパク・クネ大統領ですが、今回は国民から厳しい審判を突き付けられた形です。
政権与党の敗因として2点、指摘したいと思います。
▽パク・クネ大統領を支持する主流派と批判的な非主流派の党内対立が解消せず最後まで尾を引いたこと。
▽加えて、低迷する経済に対して有効な手立てを打ち出せなかったことも大きな要因だったように思います。
韓国経済はひところの勢いを失っています。去年の成長率は2.6%、ことしも横ばいが続くものと予測されています。好調だった輸出も中国経済の変調が影響して去年は8%近く減少しました。そんな中で社会問題となっているのが貧富の格差です。
先月IMFが発表した報告書によりますと、韓国では所得の上位10%の金持ち層が国民所得全体の実に45%を稼いでいます。格差は日本でも問題ですが、韓国はそれ以上、アジア太平洋地域でもっとも格差の大きい国です。1995年には29%でしたから、富の集中と格差の拡大がこの20年ほどで急速に進んでいることがわかります。
若者の就職難も深刻です。15歳から29歳の失業率は12.5%、大学を出ても就職できない若者が増えています。こうした先行きに対する不安に十分応えられなかったことが、支持離れにつながったものとみられます。
【大統領選の行方】
今回の選挙結果を受けて次の大統領選びの行方も混とんとしてきました。
パク・クネ大統領とは距離を置いて次の大統領の座を虎視眈々と狙っていたキム・ムソン代表は、敗北の責任を取って党代表を辞任する考えを明らかにしました。 “保守のプリンス”オ・セフン前ソウル市長ら有力候補も次々と落選、指名争いから後退しました。もうひとりの有力候補、パク・クネ大統領の意中の人とされる国連のパン・ギムン事務総長は、立候補に前向きと伝えられています。今回の選挙結果を受けて「勝てる候補はパン・ギムン氏しかいない」という見方が広がる一方、何事にも慎重な性格とされるパン・ギムン氏が、与党劣勢ムードの中、敢えて火中の栗を拾うのか疑問視する声も出始めています。
一方、野党側では、政権交代に向けた機運が高まっています。
しかし第一党となった「共に民主党」も過半数には届かず、“韓国のビル・ゲイツ”ことアン・チョルス氏率いる第3党の「国民の党」がキャスティングボートを握ることになります。氏の動向が、今後注目を集めることになりそうです。
【日韓、南北関係は】
そしてもっとも気になる日韓関係、そして北朝鮮との関係です。
去年暮れにようやく決着した慰安婦合意では、
▽韓国政府が元慰安婦の支援のための財団を設立、
▽この財団に日本政府がおおむね10億円を拠出し、
▽日韓両政府が協力して医療や介護など心の傷を癒すための措置を取る、
となっています。
選挙明けには財団の設立準備委員会が組織され、合意の履行に向けた動きが本格化する予定でした。しかし合意に反対し再交渉を主張している野党側が勝利したことで、合意履行に向けた動きが滞ることが心配されます。「最終的かつ不可逆的に解決する」ことを約束したはずの合意が、万が一にも反故にされるようなことがあれば、日韓関係に深刻な悪影響を与えることは確実です。このあたりは、パク・クネ大統領の毅然たるリーダーシップに期待したいところです。
もうひとつが北朝鮮です。今回の野党側の勝利をもっとも喜んでいるのは、もしかすると北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記かも知れません。強硬な姿勢を崩さないパク・クネ大統領と違って、野党側は対話の重要性を強調しているからです。
韓国では、キム・デジュン政権、ノ・ムヒョン政権と北朝鮮に融和的な政権が2代10年間続き、その後、イ・ミョンバク政権、パク・クネ政権と北朝鮮に厳しい保守の大統領が政権を担ってきました。北朝鮮は、南北首脳会談を実現して莫大な経済支援を約束したキム・デジュン、ノ・ムヒョン政権の時のように、対話路線の大統領を誕生させようと、今後、あらゆる形で宣伝工作や働きかけを強めてくるものと予想されます。北朝鮮が新たな弾道ミサイルの発射準備を進めているとの情報もあります。日米韓の連携に緩みが出ないよう、ここは緊密な意思疎通を図っていく必要があります。
ダイナミックコリアという言葉どおり、韓国の政治は目まぐるしく変化します。今回の勝利で第一党になったとはいえ、「共に民主党」と第二党の「セヌリ党」との差はわずか一議席です。来年12月の大統領選挙に向けてこれからも離合集散が繰り返されることでしょう。これまで韓国の政治は、良くも悪くもパク・クネ大統領の強い個性とリーダーシップによって支えられてきました。与党大敗という今回の選挙結果を受け、韓国政治の流れがいっきに流動化することは間違いありません。
(出石 直 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/242548.html
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