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ケイコ・フジモリの足かせは、ペルー国民に根強く残る「父親」への抵抗感
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160417-00090931-hbolz-int
HARBOR BUSINESS Online 4月17日(日)9時21分配信
15世紀に最盛期を迎えたインカ帝国の中心地のペルー。2130万人の選挙民がいるそのペルーで4月10日大統領選挙が行なわれた。開票40%強の時点で上位3人の候補者の得票率はケイコ・フジモリ(40才)39.18%、ペドロ・パブロ・クチンスキー(77才)24.25%、ベロニカ・メンドサ(35才)16.57%という結果となった。(参照「El Comercio」)。どの候補者も過半数に至らないということで、6月5日に上位二人のケイコ・フジモリとクチンスキの決戦投票が予定されている。アナリストの間では、クチンスキが僅差で勝利するであろうと予想されている。
クチンスキの勝利を挙げている理由はメンドーサの大半の票田がクチンスキに流れる可能性が強いということと、反フジモリ派が今も根強く存在しているということだ。
ケイコ・フジモリには絶対に票を入れないと言う選挙民が49%もいるというのである。その理由の53%は彼女の父親の政治に反対しているため、彼女をも敬遠しているのだという。(参照「Infobae」)。
◆ケイコ・フジモリ候補の父親、アルベルト・フジモリ元大統領
ケイコ・フジモリの父親は、日本にも馴染みの深いアルベルト・フジモリ元大統領だ。彼の政権は1990年から2000年まで続いた。彼が政権に就く前のガルシア政権下では、当時のラテンアメリカは深刻な経済低迷にあり、ペルーもその例外ではなかった。ガルシア政権は人民革命と称して銀行の国有化やIMFへの債務返済を勝手に遅らせたりして国内経済の復活を目指したが、逆に経済は悪化の一途を辿りインフレ8000%という事態にまで深刻化した。しかもIMFへの債務遅延で外国からの投資もなく、国家破綻の寸前にまでなっていた。また社会的にもゲリラ組織センデロ・ルミノソが勢力を拡大して治安は乱れ社会不安は増大していた。
そのような国内情勢の中でフジモリ大統領が誕生したのである。彼はガルシア前大統領とは反対にIMFの指導に基ずいて国有財産の売却、鉱物資源などの開発の為に外資の導入を積極的に進めた。正に、ガルシア政権とは正反対の政策を実行して行ったのだ。それによってペルー経済は立ち直りを見せた。
しかし、ペルー議会は反対勢力が強く、彼の望む通りの政策が実行出来ないでいた。そこで1992年4月5日にフジモリ大統領は軍部の協力を得て「セルフクーデター」を行なったのある。議会を解散させ、国家非常事態の宣言をして戒厳令を敷いた。更に憲法の機能を停止。そのようにして大統領の権限をフルに駆使してゲリラ組織センデロ・ルミノソにもメスを入れたのである。それには彼の参謀的なモンテシノス国家情報局顧問と軍部の協力があった。
このゲリラ組織も、元々は貧困者を救済するのをその設立の根底においていた。ペルーは10%の白人社会が国の富の大半を享受している。それに白人とメスティソ(白人と先住民インディオとの混血)がその残りの富を受け、原住民の貧困層は殆んどそれが回わって来ない状態であった。それがフジモリ大統領が誕生する前のペルーの姿であった。彼はその原住民の貧困対策のひとつとして出生率を低下させることを目的に強制的に避妊手術をさせたという。それが後になって人権犯罪となって彼が糾弾されたのだ。
ただ、フジモリ大統領は特に貧困者への支援に強い関心をもっていたという。彼は熱心に貧困地域を訪問して彼らを励ました。それを実行した大統領は今まで誰ひとりいなかった。
◆アルベルト・フジモリ大統領時代への「抵抗感」が足かせに
しかし、彼が政治的判断を誤ったのはセルフクーデターの後に制定された新憲法を使って3度目の立候補を果たしたことである。旧憲法では2度しか大統領職は勤めらない。そこで、彼は新憲法を建て前に最初の立候補だとして3度目の就任を果たした。それが米国を始め国際社会から批判されるようになって、彼への攻撃が加速化されるのである。そのひとつがモンテシノスが議員を買収している映像が暴露されたことである。それに端を発して贈賄への疑惑が彼にも降り掛かるようになった。そして国民からの支持も失い訪日中に辞任することを決めたという経緯に及んだのである。
フジモリ大統領の「避妊手術の強制」は確かに極端過ぎるし、問題は多かった。しかし、経済を立て直し、それまで乱れていた治安の安定に貢献した業績は高く評価されるべきである。ところが、その功績はほぼ無視されている。ケイコ・フジモリが大統領選挙に臨ぶに及んでも、父親の代から続いている反フジモリ派は消滅することなく、彼のセルフクーデターで軍部によって被った被害や原住民を対象に行なった避妊政策などの批判がケイコフジモリ候補にも波及しているのである。彼女を批判する理由は、彼女も父親と同じ政治路線を歩むからだとし、また彼女が大統領になれば現在服役中の父親に恩赦を与えると懸念しているのだ。
もちろん、ケイコ・フジモリは、彼女の父親が果たした治安の安全回復や犯罪の取締りなどで彼女は他の候補者よりも上手くやってくれると期待している層も少なくない。その背景には彼女の政策ブレーンには父親に協力していた人材が彼女にも協力することもを約束しているからだ。
彼女と決戦投票を争うクチンスキは嘗て世銀に勤務したことがあり、首相の経験もある。今回の選挙では外国からの投資を促進させることを強調している。
フジモリ支持派とクチンスキにメンドーサらが連合した反フジモリ派の選挙の行方を見守ることにしよう。
<文/白石和幸 photo by Congreso de la República del Perú on flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
ハーバー・ビジネス・オンライン
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