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[大機小機]風前のTPP
6年がかりで調整してきた環太平洋経済連携協定(TPP)が風前の灯(ともしび)になっている。参院選を前に与野党の攻防が激化、甘利明前経済財政・再生相の金銭問題を巡る地検の強制捜査も響き国会は一時空転した。関連法案の成立は今国会では困難との見方が強まってきた。しかし、根はもっと深い。
震源は米国である。大統領選挙がヒートする中、有力候補は全員TPPに反対だ。暴走を続ける共和党候補のトランプ氏は相変わらず「ばかげた協定」と切って捨てる。本来、自由貿易論者の保守強硬派のクルーズ候補も反対派に転向している。民主党陣営では国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏も「今のTPP法案には反対だ」と言う。民主社会主義者を自称するサンダース氏も「破滅的だ」と激しく批判する。
それだけではない。大統領選と並行して上下両院で議会選挙が行われる。TPPの発効には両院それぞれで過半数の議員の賛成が必要だ。労働組合を支援団体に持つ民主党内のTPPへの抵抗感は根強い。自由貿易に理解があるはずの共和党には感情的なオバマ嫌いがある。選挙戦が熱を帯びれば保護主義に傾き、反TPP議員が増える可能性は少なくない。
もっとも希望の明かりがないわけではない。“レームダック作戦”である。新大統領は11月8日に決まる。だが実際の就任は来年の1月20日。新議員の就任もほぼ同じ時期である。そこで浮かぶ策が、このレームダック期間中の法案成立だ。オバマ政権下で引退議員や落選議員が残っているうちに法案を成立させてしまうという奇策である。
選挙が終わっているから冷静な判断に戻る、という期待もある。だが、そう簡単に手のひらを返すことになるだろうか。日本と違い党議拘束もない。安倍政権はこれまで「日本が率先して法案成立をめざす」と強調してきたが、無駄弾になりかねない。
さて、最終的にどうなるのだろうか。次期大統領に最も近いのはやはりクリントン氏だろう。考えられるのは、新政権に移行してからのTPP再交渉提案だ。「ちゃぶ台返し」である。日本や参加各国はこの翻弄に耐えられるか。なんともやりきれない気が遠くなるような危うさが生まれている。
(横ヤリ)
[日経新聞4月14日朝刊P.19]
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