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中国、製油所でくさび 日タイ主導のミャンマー経済特区
広東振戎、3200億円投じ建設 日本勢、計画練り直しも
日本、タイ両国政府が開発を主導するミャンマーの「ダウェー経済特区」の近くに中国の資源商社、広東振戎能源(広東省)が製油所を建設することが7日明らかになった。投資額は約30億ドル(約3200億円)。ミャンマーにとって初の大規模製油所となる。広東振戎の背後には中国政府の影もちらつく。同特区の開発事業で商機を探る日本企業は計画練り直しを迫られる可能性がある。
ミャンマー投資委員会(MIC)が3月末に広東振戎の投資計画を認可した。プロジェクトにはミャンマー国軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(UMEHL)や地場大手財閥企業も参加、2019年以降の稼働を目指す。
地元紙によれば製油能力は日量10万バレルで、タンカーが寄港する港湾や液化石油ガス(LPG)関連設備の建設も計画する。ミャンマー国内には近代的な製油設備はなくガソリンなど石油化学製品を輸入に頼っていた。広東振戎は製品の大半をミャンマー国内に供給することになる。製油所の完成で周辺での石油化学産業の集積も期待できる。
広東振戎は02年の設立で、大株主は中東から原油を輸入する中国の大型国有企業だ。中国のエネルギー安全保障の一端を担う国策企業がミャンマー経済を支える大事業に乗り出す。その裏に中国政府の後押しを感じる向きは多い。
これまでダウェーと中国の結びつきはなかった。最初に開発に着手したのは地理的に近いタイのゼネコン最大手イタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)。工業団地の造成を始めたが、資金難もあって12年にはミャンマー・タイ両政府の国家プロジェクトになった。
それでも1兆円超という総事業費をまかなうのは至難の業。そこで声がかかったのが日本だ。15年夏までに日本政府がこの提案に応じ、3カ国共同開発の体制が固まった。日本にとっては三菱商事など3商社が主導する「ティラワ経済特区」に続くプロジェクトだ。
そんな「日・タイ・ミャンマー」主導の特区に中国がくさびを打ち込む。背景には、3月末に発足したアウン・サン・スー・チー氏主導の新政権の現実路線がありそうだ。
中国はミャンマーが国際的な孤立を深めた時期に接近し、影響力を強めてきた。だが11年春の民主化後にテイン・セイン前政権が欧米との関係改善を進め、その影響力は相対的に低下した。
スー・チー氏は最大の貿易相手国で投資国でもある中国との関係にも配慮する。外相を兼務するスー・チー氏が就任後に最初に会談した海外要人が5日の王毅・中国外相であることからも、日米欧であろうと、中国であろうと、実利で付き合う姿勢が見て取れる。
もっとも、ダウェーで発電所の建設や重化学コンビナートを開発する青写真を描いていた日本企業にとっては今回の製油所建設は青天のへきれきだ。建設候補地は経済特区の外だが、ダウェー開発に参加する日系企業関係者は「中国に先行されれば特区計画全体の練り直しを強いられる」と身構える。
ミャンマーのビジネス環境に浮かび上がる変化の芽。中国企業に対するミャンマー当局の今回の投資認可が日本企業にもたらす影響は小さくない。
ヤンゴン=松井基一
[日経新聞4月8日朝刊P.]
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[一目均衡]中国、外資「4倍買い」の光と影
編集委員 梶原誠
「また中国マネーか」と思った人も多いはずだ。米大手ホテルチェーン、スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ・ワールドワイドの身売り交渉で、その姿が浮いては消えた。
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中国勢は昨年、買収に興味を示した。11月には同業の米マリオット・インターナショナルが買収を決めたが、今年に入り中国の別の買い手がより高い価格で名乗り出た。先週身を引いたとはいえ、企業買収での中国の存在感を見せつけた。
国有の中国化工集団が農薬世界最大手のスイス・シンジェンタを430億ドルで、海爾集団(ハイアール)が米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を54億ドルでそれぞれ買うなど、今年は中国発のメガディールが続いている。
トムソン・ロイターによると、中国企業による外国企業の買収は今年の1〜3月で1020億ドルに及んだ。過去最大だった昨年1年間の実績に早くも並んでおり、このペースが続けば今年は昨年の4倍になる。
背景にちらつくのは、世界経済の主導権を握ろうという中国の意思だ。昨年11月、海南省の三亜で、中国経済のグローバル化をテーマとする国際会議が開かれた。中国の参加者からはこんな発言が飛び出した。
「(アジアから欧州に向けて経済圏をつくる)一帯一路政策を通じ、人材も文化も輸出しよう。そうすれば中国の標準は国際標準になる。世界の主要500社の70%はいずれ中国企業だ」。壮大な構想に、会場は拍手に包まれた。
先月、中国はくしくも同じ三亜でメコン川流域5カ国と首脳会談を開いた。浮き上がったねらいは、やはり覇権だ。メコン川流域の開発向けに100億ドルの融資枠を設け、自らの経済圏に組み込んでいく。
ただ外国への拡張は、中国経済の苦境の裏返しでもある。まず国内景気の失速懸念だ。「国内に限界がある以上、食べていくには外国に出るしかない」とは、ラオスで事業を拡張する中国企業トップの本音だ。
外資の買収が今増えるのは、経済の変調を背景に経営者が人民元の先安観を持っているからともいえる。買収の形を借りた資本逃避という暗い側面だ。
そして、産業の高付加価値化が避けられないという切迫した事情だ。長年競争力の源泉だった人件費は高騰している。採算を維持して生き残るには、世界先端の技術や人材を短期間で確保しなければならない。
中国が出て行く世界は今、内向きになっている。
大統領選本番の米国では、民主党のクリントン氏が環太平洋経済連携協定(TPP)に難色を示し、共和党のトランプ氏はイスラム教徒の入国禁止を掲げる。欧州でも反移民の機運が高まっている。排他的な空気が漂う中に「中国の標準は世界の標準」と飛び込めば、衝突は避けられない。
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中国の勢いと苦悩、退潮もささやかれるグローバリゼーション。世界経済の地殻変動を、中国の外資爆買いは映そうとしている。
[日経新聞4月5日朝刊P.15]
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