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腫瘍マーカーの多くはがん細胞の死骸を調べている
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/235808
2018年08月21日 日刊ゲンダイ
写真はイメージ(C)PIXTA
医師やがん患者と話すと必ず出てくる言葉がある。「腫瘍マーカー」だ。
「広辞苑」(第6版、岩波書店)によると「腫瘍」とは「体細胞が過剰に増殖する病変。多くは臓器や組織中に腫れ物・瘤として限局性の結節をつくる。発生母細胞により上皮性と非上皮性、また増殖の性質から良性(腺腫、脂肪腫、線維腫、骨髄など)と悪性(肉腫、がん腫など)に分ける」とあり、「マーカー」とは「目印、標識」とある。つまり、がんの目印ということだが、一体どんなものなのか? 国際医療福祉大学付属病院内科学の一石英一郎教授が言う。
「がん細胞の中にはそのがん特有のタンパク質を産出することがあります。そのような物質のうち、主に血液中で測定可能なものを腫瘍マーカーと呼んでいます」
現在、病院で使われている腫瘍マーカーは約40種類。前立腺がんのPSA(前立腺特異抗原)、乳がん・胃がん・膵がん・大腸がんなどで使われるCEA(がん胎児性抗原)などが知られている。
ならば、この腫瘍マーカーを使えばがんは簡単に早期発見できるのではないか? そう思う人もいるだろうが間違いだ。
「血液中からがん特有のタンパク質を発見するには、がんがある程度大きくなっていなければなりません。大きくなったがんは、腫瘍の中心まで血液が届かずにがん細胞が死んでしまいます。その死骸がバラバラになって血液中に入り、全身を巡ります。腫瘍マーカーの多くはこの現象を利用しているため、早期の微小がんを発見することはできないのです」
そもそもがん細胞自体は正常細胞から変化したもの。腫瘍マーカーのなかには正常細胞にも存在するタンパク質もあり、それを目印にしてがんを見つけることは難しい。
では、何のため腫瘍マーカーを調べるのか?
「治療効果や病状の進行をみるためです。例えば、ある患者さんに抗がん剤や放射線の治療を行ったとしましょう。その前後の腫瘍マーカーを調べてその変化をみれば、治療がどの程度効いたのか、再発リスクがどうかを推測することができます」
では、治療効果をみるためのPSA検査が健診でがん発見のために使われているのはなぜか。欧米ではPSA検査を受けても死亡率が下がらないか下がってもごくわずかとの研究発表もあり、検査後に手術などの治療を受けて尿失禁などの副作用を受ける例などが報告されている。
「ほかに有効な手段がないからかもしれません。PSAは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク質です。多くは精液中に分泌され、血液中に分泌されるのはごく微量です。この数値が高いと前立腺がん、前立腺肥大、前立腺炎が疑われます。血液中に存在するPSAのうち、他のタンパク質と結合していない遊離型PSAの割合が低いとがんの確率が高いとか、PSA値が高い人ほどがんが見つかる確率が高いことがわかっています」
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