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市販の総合感冒薬の恐ろしい話…副作用で死亡例も:外箱と添付文書は絶対捨てたらNG
http://biz-journal.jp/2017/11/post_21409.html
2017.11.18 文=小谷寿美子/薬剤師 Business Journal
レジを打ち「お大事に」と頭を下げた瞬間に、患者さんは帰られました。頭を上げるとレジカウンターには今さっき包んだ紙袋とレシート、薬の外箱と添付文書が残されていました。投げ捨てたと言ったほうがいいでしょうか、紙が散乱していたのです。買ったそばから箱を開けて、薬だけ持って帰ったのです。あまりの「瞬間芸」に何もできず、今度こそ全部持って帰ってほしいと視線で追っかけました。
紙袋を破り、箱を開けて中の薬だけをポケットやカバンに入れるのです。誰がそんなことをするのか。毎日のレジ打ちで観察をした結果、30〜40代の男性、そして50〜60代の女性に多かったようです。統計を取っているわけではないので、厳密にみて正しいかどうかはわかりません。「一人でも多くのレジを打て!」と当時の店長から圧力があったので、統計を取っている時間はもちろんありませんでした。
添付文書には、薬を飲むのに必要な情報がすべて書かれています。時間の関係ですべての情報を販売前に伝えられるわけではありません。だからこそ、添付文書を持っていて必要なときに読み返せるようにしてほしいのです。今はインターネットで添付文書をすべて見ることができます。だから紙の情報を持っていなくていいという意見があるかもしれません。紙でもパソコンの画面でもいいので、すぐに読める状態になっていることが必要です。
副作用については代表的な事柄を伝えることは時間的に可能ですが、あまりに多いのですべては伝えていません。そこで添付文書を読んでほしいのです。すべて書いてあります。
特に総合感冒薬は配合成分が多いので、それだけ副作用の種類が多いのです。
「それでは副作用について説明します。発疹・発赤、かゆみといった皮膚症状があります。吐き気・嘔吐、食欲不振といった消化器症状があります。めまい、頭痛といった精神神経系の症状があります。泌尿器系では排尿困難の副作用があります。ほかには、顔のほてり、異常なまぶしさ、過度の体温低下があります」
ここまででお腹いっぱいですよね。もしこれを薬局のレジで口頭で説明すれば、「いいから早く薬を飲んで寝かせろ!」と患者さんからお叱りを受けると思います。さらに「副作用のうち、死に至る可能性のある重い症状についてこれから説明をします。肝機能障害ですが、これの初期症状は……」ときたら、「いい加減にしろ!」と怒られると思います。
だから薬剤師は患者さんに対して、添付文書を読んでもらうことを前提にポイントだけ説明をして薬をお渡ししているのです。レジカウンターに置いて帰ってしまってはこの前提が崩れてしまいます。風邪で熱が出ていて薬を飲んでいたら、少しは下がってきたけどまた上がってしまって、全然治らないという症状が出たらどうしますか? 風邪の治りが悪いと思って薬を飲み続けますか?
添付文書を読むと肝機能障害と腎機能障害の初期症状に「発熱」とあります。副作用かもしれないと気付くことができれば対処ができます。しかし、添付文書を読んでいないとこの副作用に気付くことは難しくなります。「風邪をひいてこの薬を飲んでいたのですが、2日間飲んでいるのに熱が全然下がりません」と言って受診すると、医師の判断は副作用なのか単に効かないだけなのか血液検査をしてみようとなります。肝機能障害や腎機能障害が起こっていれば血液検査でわかります。
市販薬のなかで副作用の件数が最も多いのが、総合感冒薬です。副作用のなかでも死亡例や死に至らなくても重い症状が出た例が最も多いのも総合感冒薬です。市販薬のなかで一番なじみがあるものだけに、注意が必要です。
■添付文書で命拾い
購入した薬について問い合わせるときは、購入した店またはメーカーの連絡先に電話をするよう添付文書に書いてあります。そこが買った店かどうかの証明にはレシートが必要です。レシートもレジカウンターに置いて帰ってしまうと証明できません。
以前私が勤務していた大手ドラッグストアチェーンでは、防犯カメラの映像を検索して該当人物かどうか検証していました。さらに該当レシートをPOSレジデータで検索をかけて見つけ出します。この作業に30分程度かかっていました。一方、まちの薬局では防犯カメラの映像検索はできません。POSレジではないので、検索をかけることもできません。
しかし、添付文書を薬局に持ってきてもらえれば、この薬を飲んだという証明にはなりますから、薬剤師は患者さんの問い合わせに答えることが可能です。私が担当した患者さんで副作用が疑われたため、メーカーに問い合わせてすぐに受診をしてもらったことがあります。ちなみにこの方の治療費はメーカーから補填されました。
外箱には、添付文書には書いていない重要な情報があります。それは使用期限と製造番号です。PTP包装(押し出して薬を取り出す包装)の場合は、外箱を開けても使用期限までぎりぎり薬を使うことができます。薬は製造番号ごとに管理されています。市販薬ではほとんどないのですが、この製造番号に不具合があったから回収したいということがあります。そのとき外箱があればすぐに回収できます。しかし外箱が手元になければわからないので、知らずに飲んでしまうかもしれません。
副作用は高い頻度で起こるわけではありません。だから必要ないと捨ててしまうかもしれません。しかし、本当に副作用が起こったときには、適切な処置を早くする必要があります。そのためには添付文書と外箱を手元においておくようにしてください。
(文=小谷寿美子/薬剤師)
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