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寿命を画期的に延ばす物質が発見、日本で普及始まる…がん・認知症リスク低減にも期待
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19998.html
2017.07.31 文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー Business Journal
今後30年間で、私たちの生活は激変するといわれている。
昨今、AI(人工知能)の進歩が注目され、AIが囲碁の世界チャンピオンに勝ったことも大きなニュースとなった。人間の知能を超えたAIによって、働き方が大きく変わることも予想されている。
また、エネルギー分野でも再生可能エネルギーが、従来の化石エネルギーや原子力に取って代わりつつある。医療分野でも、iPS細胞に代表されるような再生医療の発展もめざましい。
その医療分野で、近年、急速に注目されているものがある。それが「テロメア」だ。AIなどのテクノロジーは私たちの環境を変えるものだが、テロメアの研究は人間の寿命を延ばす可能性があり、人生観そのものを変えてしまうインパクトを持っている。テロメアは、「いつまでも若々しく長寿でいたい」という人類の長年の夢を実現するかもしれないのだ。
2015年1月4日に放送された『NHKスペシャル ネクストワールド 私たちの未来』では、30年後には「寿命革命」によって人類の平均寿命が100歳に到達するという衝撃的な未来予測が紹介された。さらに17年5月16日に放送された『クローズアップ現代+』(NHK)では、「生命の不思議“テロメア”健康寿命はのばせる!」というテーマで、ノーベル賞生物学者エリザベス・ブラックバーン博士のテロメア研究から、寿命を延ばす方法が紹介され、大きな話題となった。
ブラックバーン博士は、テロメア研究をまとめた著書『The Telomere Effect』を今年1月に出版し、世界的ベストセラーとなっている。同書でも、健康寿命を延ばす方法が紹介されている。いまや、世界的にテロメアは大きなトレンドになっているのだ。
■テロメアとは何か
では、テロメアとは、一体何なのだろうか。
テロメアは私たちの体を形づくる細胞の細胞分裂に大きくかかわっている。人間の体内には37兆個の細胞があるといわれ、その細胞の中には遺伝情報を伝える染色体がある。この染色体の端にあるのがテロメアである。
細胞分裂するごとにテロメアが短く減っていき、50〜60回分裂すると、それ以上テロメアが短くならない限界に達する。細胞分裂ができなくなると寿命となり、その後機能を停止する。いわば細胞の老化だ。
回数券のように減っていくことから、テロメアは「命の回数券」と呼ばれるようになった。テロメアの長さを調べれば、寿命を正確に予測することが可能になる。
しかし、自然界にはテロメアの回数券が復活する不思議な生物が存在する。ロブスターがその代表的な生物である。ロブスターは驚くべきことに「老化しない」体を持っている。ロブスターは、細胞分裂で減っていくテロメアを修復する「テロメラーゼ」という酵素をつくる機能を体内に持っているのだ。テロメラーゼは、いわば細胞を若返らせる酵素である。だからといって不老不死ではない。環境の悪化や天敵による捕食によって死んでしまうため、どれほど長く生きられるか正確にはわかっていない。
また二枚貝も同じ機能を持っており、ロブスター同様に「老化しない」体であることが知られている。13年、アイスランドで取れた二枚貝が、調査の結果507歳であることがわかった。つまり、日本が戦国時代だった頃から生きていたことになる。この二枚貝の超長寿の秘密も、テロメラーゼの働きにあるのだ。
テロメラーゼを発見したのが、先述したブラックバーン博士だ。同博士は、1984年に単細胞生物の中にテロメラーゼを発見し、09年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。しかし、当時は人間の体内では発見することができず、ヒトへの応用研究はなされないままだった。
しかし90年初頭、ビル・アンドリュース博士という人物が、人間の体内に「ヒトテロメラーゼ」を発見する。長らく、人間の細胞にはテロメラーゼをつくる仕組み、すなわち細胞が若返る仕組みがないと思われてきた。言い換えると人間の細胞は、細胞分裂を繰り返せば、いつかはテロメアの長さの限界に達して細胞の寿命が尽き、細胞老化は避けられないと考えられてきたのだ。
ビル博士は、人間の細胞の中に、例外的にテロメラーゼをつくる細胞があると考えた。それは生殖細胞だ。仮に生殖細胞がテロメラーゼをつくることができなかった場合、親の老化した細胞のまま、次の世代(赤ちゃん)が誕生することになり、人類は早々に滅亡してしまう。それを避けるために、生殖細胞にはテロメラーゼをつくる仕組みが備わっているのだ。ビル博士は、「ひとつの受精卵から分化したのだから、すべての細胞に、細胞を若返らせる仕組みがあるのではないか」と仮説を立て、研究を続けた結果、画期的な発見をすることになる。
ビル博士は、ヒトの細胞にもロブスターや二枚貝のような細胞を若返らせる「テロメラーゼ遺伝子」があることを発見し、それが発動していない仕組みも解明したのだ。ヒト細胞は若返らないように“鍵”がかけられているという。ヒト細胞のテロメラーゼ遺伝子の近くには特殊なタンパク質があり、それが遺伝子を発動させないように抑制していた。簡単にいえば、ヒト細胞を若返らせる遺伝子を眠らせるための「眠りのスイッチ」の役割をしている特殊なタンパク質があり、それをビル博士が発見したのだ。
ビル博士は、この研究成果によって97年、米国の「その年の著名な発明・発案者」(National inventors of the year)を受賞する。
さらにビル博士は、この特殊なタンパク質を取り除く物質があるかもしれないという大胆な仮説を立て、99年から07年にかけて約6万の化学物質を調査した。その結果、「眠りのスイッチ」のタンパク質を取り除く画期的な物質「TA65」を発見した。ビル博士は、その物質を「テロメラーゼ誘導活性物質」と呼び、この発見に伴う特許も50以上取得している。ビル博士の発見は、細胞を若返らせる可能性があるのではないかと大きな話題となった。
■寿命を延ばす可能性
今年5月18日、ビル博士が来日し、最新の研究に関する講演会が東京・虎ノ門ヒルズで行われた。会場には日本中から500名を超える専門家や大学教授、医療関係者などが集まり、ビル博士の発表に注目していた。
虎ノ門ヒルズで行われたビル・アンドリュース博士の講演
ビル・アンドリュース博士
この講演会でビル博士は、自身が発見したテロメラーゼ誘導活性物質・TA65の80〜300倍の効果を持つ「TAM818」を発見したことを発表した。実に40万近くの物質を新たに調査して発見したという。さらにビル博士は、最近のテロメアブームによる誤解についても説明を行った。
「テロメラーゼを体に取り入れればテロメアが伸びるという誤解があるようです。テロメラーゼを直接摂取しても、胃で分解されるだけで細胞には何も影響はありません。テロメアを伸ばすには、テロメラーゼ遺伝子を抑えているタンパク質を取り除くしかありません。それが、テロメラーゼ誘導活性物質であり、それを体内に取り入れることによってテロメアを伸ばす可能性があるのです」(ビル博士)
ブラックバーン博士は、健康寿命を延ばす方法として、「瞑想」「運動」「禁煙」「食生活改善」を推奨しているが、それはあくまでもテロメアが短くなるスピードを遅らせるだけで、テロメアを伸ばすことはできないと、ビル博士は言う。
「運動不足や喫煙など、ストレスのある生活によってテロメアが短くなるスピードが速まります。それを遅らせるためには、瞑想や運動、禁煙などの生活改善が役立つでしょう。しかし、それはテロメア短縮を遅らせるだけで、伸ばすことに寄与しません。人間は理論的には120歳まで生きられるといわれていますが、それは理想的なテロメア短縮が行われた時であり、ほとんどの人はその前にストレスや病気で寿命を迎えてしまいます。私が発見したテロメラーゼ誘導活性物質によって、テロメアを修復させ、本来来るべき寿命を延ばす可能性が出てきたのです」(同)
ビル博士は、がんについても20年間研究を続けており、テロメア短縮ががんの要因のひとつであることが明らかになったという。これはブラックバーン博士も同様に指摘している。さらにテロメアが短くなることが、認知症や数々の病気の要因になっていることが近年の研究でも次々にわかってきている。
ビル博士は、日本国内でのテロメア関連の医療及び事業展開のため、defytime Science Japan(ディファイタイムサイエンスジャパン、dSJ)と協力していくことを発表した。今後、日本全国のクリニックと提携し、テロメア分析キットの普及や、テロメラーゼ誘導活性物質の普及を行っていくという。
dSJの西平隆代表取締役は、次のようにその意義を語る。
「テロメアは、これからの健康の重要なキーワードとなっていきます。ヒトテロメラーゼの発見者であるビル博士と協力し、日本人の健康寿命を延ばしていくよう貢献していきます。今年から来年に向けて、大規模な展開を準備しています」
また、dSJと呼応するように、再生エネルギーの専門会社であるアースコムも、テロメア関連の普及事業に乗り出すという。
「弊社は、再生エネルギーという新分野において先駆者となりました。自然が持つポテンシャルを引き出すのがこれまでの事業だとすれば、テロメア関連の事業は、人間が本来持つポテンシャルを引き出す事業だと確信しています。21世紀のまったく新しいフロンティアがテロメアにあると思いますし、ひとりでも多くの方に健康で長生きしていただきたいという大義もあります。弊社はそこに挑戦していきたいのです」(アースコム代表取締役・丸林信宏氏)
今後、起こると予想される「寿命革命」のひとつに、テロメア研究が含まれることは間違いないだろう。人類は新たな領域へ踏み出したといえる。
近年、人生の質(QOL=Quality of life)が重視されるようになった。6月に亡くなられたフリーアナウンサーの小林麻央さんは、闘病生活のなか人生を一日一日大切に生きるQOLの大切さをブログというかたちで世間に伝えられた。「一日でも長く健康で過ごしたい」という願いは、いつの時代もなくなることはない。今年に入り、テロメアが大きなトレンドになってきているのも、QOLの大切さに目覚めた社会の要請なのかもしれない。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー)
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