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「薬の副作用完全リスト」この症状は、この薬が原因でした 咳が止まらない、疲れやすい…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51854
2017.06.05 週刊現代 :現代ビジネス
疲れやすい、足腰が痛い――そういった症状は年齢や体調のせいにしがちだが、実はいつも飲んでいる薬の副作用が原因の場合がある。思いもよらない形で健康をむしばむ「副作用リスト」。
ロキソニンでむくむ
「半年ほど前、引っ越して新しい医者にかかりました。それから、やたらと空咳が出るようになった。最初は新しい家のハウスダストかなにかが原因で、生活環境が変わったせいではないかと疑っていました」
こう語るのは、大阪府在住の井上晃一さん(67歳、仮名)。
「医者に行って咳止めをもらいましたが、一向によくならない。そこで引っ越す前のかかりつけ医に相談に行ったところ、『引っ越した先の病院で、新しい薬をもらいませんでしたか?』と聞かれた。
それで新しい医者にかかったときに出された降圧剤が咳と関係していることがわかったのです。
新しく処方された薬はアデカットというもの。これはACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬という種類の降圧剤で、副作用に咳があるのです。
それで降圧剤をもともと使っていたカルシウム拮抗薬に戻してもらったところ、ぴたりと咳は治まりました」
井上さんのように、一般の患者は、まさか血圧の薬が慢性的な咳の原因になるとはなかなか気づかない。
病院に行っても、「3分診療」で患者がどんな薬を飲んでいるかすらきちんとチェックしない医者ならば、咳止めを出されておしまいだろう。
このように体のちょっとした不調、なんとなく気分が優れないといった症状が、実は飲んでいる薬の副作用で起こっていることがある。その場合、薬をやめることで症状が治まってしまうことがほとんどだ。
投薬など医療行為が原因でなる病気を「医原病」と呼ぶ。しかし医者がそれを医原病だと見抜けず、疾患があると診断すれば、さらに新しい薬が処方されることになる。
そうなるとさらに新しい副作用が加わって、病気を治すどころか、「飲めば飲むほど体調が悪くなる」という負の連鎖に陥りかねない。
井上さんの場合も本来は不要な咳止めを処方されていた。もし、そのまま咳が続いて状態が悪化していれば、抗菌薬などの新しい薬も追加されて、薬漬けの副作用まみれになっていただろう。
このような悪循環に陥らないためにも、患者は薬が引き起こす諸症状を知っておいたほうがいい。いろいろな症状別に、その原因となりうる薬の例を見てみよう。
むくみは副作用の可能性大
東邦大学医療センター大森病院の石井孝政医師が語る。
「病気かと疑ったけれども、実は薬の副作用によるものだったというケースで非常によくあるのはむくみです。
降圧剤のカルシウム拮抗薬(ノルバスク、アムロジンなど)、解熱鎮痛剤のロキソニンやボルタレン、糖尿病薬のチアゾリジン(アクトスなど)を服用している人に見られる場合が多いですね。
解熱鎮痛剤は経口薬だけでなく、貼り薬でもむくみが出ることがある。成分が体内に吸収されて、貼っている部分だけでなく全身にむくみが出るのです」
もう一つ、非常に頻繁にあるが患者がなかなか薬の副作用だと気づかない例が肝不全、肝機能障害、肝炎、黄疸などである。北陸大学薬学部の三浦雅一教授が語る。
「薬の副作用は医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告されることになっていますが、そのなかでも最も多いのが肝硬変、肝炎などの肝疾患です。
肝臓は障害が起きていても、これといった自覚症状が出にくい臓器。健康診断などで検査をしたら、いつの間にか肝・胆道機能検査の数値が悪化していて気づくこともあります」
松田医院和漢堂院長の松田史彦氏が続ける。
「肝臓が弱まるとなんとなく元気が出ない、怠いといった症状が出ます。これは、ありとあらゆる薬の副作用として現れうるものです。複数の薬を飲んでいる場合、それらの相互作用によるものもある。
私の経験から言うと、降圧剤(ミカルディス、オルメテック、ディオバンなど)やコレステロールの薬(リバロ、リポバス、クレストールなど)といった生活習慣病薬を飲み続けていると疲れやすくなります。
すべての薬は肝臓で分解されますから、薬を飲み続けていると肝臓はフルに働くことになる。肝臓に余裕がなくなれば、体全体に疲労感が出ます」
また血圧を下げすぎると、血の巡りも悪くなり、なんとなく元気が出ない、怠いという症状にもつながりやすい。
「コレステロールの薬も同様に元気を落とす原因になります。コレステロールは副腎皮質ホルモンの原料になっています。
このホルモンはドーピングの対象になるくらいで、いわば『元気の素』。それを作る材料が減ってしまえば、元気が出にくくなります」(松田氏)
なんとなく疲れる理由
なんとなく疲れる、元気が出ないといった症状は、ついつい「もう若くないのだから」と歳のせいにしてしまいがちだが、健康のために飲んでいる薬が活力を奪っていることがあるのだ。
降圧剤の飲みすぎが、精神的活力を奪い、うつ状態を招くこともある。それで精神科を受診したら、本物のうつ病だと誤診され、抗うつ剤や抗不安薬を処方される。
これらの薬はやめようとすると離脱症状(禁断症状)が出るので、長期の投薬になりがち。ますます肝臓に負担がかかり、生きる活力が奪われていくはめになるのだ。
原因不明の筋肉痛に悩まされている人も要注意だ。特に激しい運動をしたわけではないのに、片方の脚の一部だけに筋肉痛が出るケースでは副作用の可能性が大きい。
「10年間にわたって脚の激痛に悩んでいる患者さんが来ました。片脚のふくらはぎ辺りがずっと痛いらしく、湿布を貼ったり、痛み止めを飲んだりして我慢してきたそうですが、なかなか治まらず、この1年ほどで痛みが激しくなったという。
この患者さんはずっとコレステロールの薬と降圧剤を飲み続けていました。試しにこれらの薬をやめてみたら、痛みはピタリと治りました」(前出の松田氏)
とくにコレステロールの薬であるスタチン(リバロ、リポバスなど)は、筋肉痛や肩こりなどの副作用が出やすい。ひどいケースでは、横紋筋融解症という、筋肉の細胞が溶け出して血中に流れてしまう症状が出る場合もある。
「筋肉痛の場合は、薬の副作用だと気づかずマッサージに行ったり、鍼灸院で鍼を打ってもらったりする人が多いと思います。しかし、薬の副作用が出ている限りは、そのような治療では痛みは消えません」(松田氏)
この患者がコレステロール値を本当に薬でコントロールしなければならないほど高コレステロール血症のリスクが高いのであれば、投薬に意味があったかもしれない。
しかし、薬の副作用による筋肉痛に悩まされることで運動を控えたり、歩いて外に出ることが億劫になっていたとしたら、結果として投薬が運動不足の原因になって、心臓病や脳疾患のリスクを上昇させていたとも考えられる。薬が「毒」になる典型的なケースだ。
薬のせいで、こむら返りが起きることもある。これも副作用だと気づきにくいが、降圧剤として使われる利尿剤(ルネトロン、ダイアートなど)を飲み続けていると、体内のナトリウムのバランスが崩れ、こむら返りが頻発するのだ。
痛みでは、頭痛に悩まされて鎮痛剤(ロキソニンやトリプタン製剤のレルパックスやアマージなど)にお世話になっている人も多いだろう。だが、それらの薬を飲んでもなかなか頭痛が治まらない場合、薬の飲み方を見直したほうがいい。
薬剤師の深井良祐氏が語る。
「頭痛薬は飲めば飲むほど、痛みが悪化することがあります。ロキソニンなどを月に10日以上服用すると薬物乱用頭痛になってしまうのです。患者さんはまさか頭痛薬が原因で痛みが悪化しているとは気づかないので、厄介な症状です。
そういう場合は逆に一度頭痛薬を止めてみると、一時的に悪化するものの、やがて痛みが治まります。しつこい頭痛に悩まされている人は、副作用を疑ってみるといい」
薬が原因の血尿、血便
とくに胃腸の調子が悪いわけではないのに、なんとなく食欲が出ない。これも薬の副作用が原因の可能性がある。
「食欲不振で悩んでいる患者さんに胃カメラなどの検査をしたのですが、悪いところはなにも見つからなかった。
話を聞いてみると、不整脈の治療で使われるジギタリス製剤(ジゴシン、ラニラピッドなど)を飲んでいることがわかりました。この薬は血中濃度が高まりすぎると食欲不振の副作用が出るのです。
これは様々な薬について言えることですが、高齢者は体調不良で食べたり飲んだりする量が減ると腎臓機能が悪化しやすく、薬の血中濃度が高くなりがちです。そうすると副作用も出やすくなるので特に注意が必要です」(前出の石井氏)
ちょっとした肌の調子が、薬の副作用のサインになることもある。たとえば急にあざができやすくなった場合は、皮下出血が起きている。これは血液サラサラ系の薬(抗血栓薬)が影響している可能性が高い。
あざができるだけで済めばいいが、内臓から出血し、血尿や血便が出る場合もあるので注意が必要だ。
鳥居泌尿器科・内科院長の鳥居伸一郎氏が語る。
「私は泌尿器科なので、よく血尿の患者さんを診ます。血液サラサラの薬が効きすぎて、出血している場合が多いですね。
これまでよく使われていたワーファリンという薬は、毎月採血をしてから処方するので適量を見極めやすかったのですが、最近急激に処方数が増えているイグザレルトやプラザキサという抗血栓薬は血液検査が必要ないので、処方される用量が多すぎることがある。
腸が大出血を起こすと血便、貧血が起こります。ひどい場合は、それが死亡事故につながることだってあるのです」
便秘に悩まされている高齢者は多い。特に施設に入っている場合は、慢性的に便秘を解消するための薬を飲み続ける人もいる。
便秘というと運動不足や食物繊維の不足などが原因だと考えられがちだが、このような高齢者の便秘は、実は薬の飲みすぎが原因で引き起こされていることも多い。薬を飲み続けていることで消化管の運動が抑制されてしまうために起きる薬剤性便秘だ。
薬剤性便秘を引き起こす薬は意外に多く、咳止め、向精神薬、抗パーキンソン病薬、降圧剤、抗うつ剤など種類も多岐にわたる。
身近な薬でおしっこが出なくなることもある。
「あるとき風邪の患者さんに総合感冒薬のPL配合顆粒を処方しました。高齢の男性でした。
これは研修医が最初に使い方を習うような非常にメジャーな薬です。ところがその患者さんが家に帰って、一包飲んだだけで尿が出なくなってしまった」(長尾クリニックの長尾和宏院長)
PL顆粒に限らず、抗不整脈薬や抗アレルギー剤、抗精神病薬などは抗コリン作用と呼ばれる作用があり、排尿障害が起こりやすいので、とりわけ前立腺肥大の傾向がある人は厳重注意だ。
アレルギー薬で唾液が出なくなる
最近、口の中が乾いて、何を食べても美味しく感じられない、パサついてものが飲みこめないでむせやすい――そんな口内の変化を感じたら、口渇という薬の副作用を疑ってみたほうがいい。
降圧剤(特に利尿剤のダイアートやルプラックなど)やアレルギーの薬、精神安定剤などは口の中が乾きやすくなる副作用があるのだ。
前出の松田氏が語る。
「アレグラやアレジオンといったアレルギーの薬は鼻水を止める作用があります。これは同時に唾液の分泌も抑える作用がある。
口の渇きは軽く見られがちですが、実は大変な症状を引き起こすことがあります。唾液が減ることによって、口内の悪い細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病にかかりやすくなるのです。
意識の高い歯科医のあいだでは『薬をたくさん飲んでいる患者さんに虫歯が多い』というのは常識になっています」
また唾液の減少は口臭にもつながるので、誰かに指摘されたら、薬の副作用を疑ってみよう。
以上のように、睡眠薬でボーっとする、降圧剤で低血圧になるといったわかりやすい副作用以外にも、薬が意外な体の変調を引き起こしているケースは多い。「薬は異物」と心得て、体調管理のために下記の表を参考にしてほしい。
「週刊現代」2017年6月3日号より
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