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病院窓口での高額自己負担を大幅に減らす方法を覚えておこう
http://diamond.jp/articles/-/128448
2017.5.18 早川幸子:フリーライター ダイヤモンド・オンライン
前回の本コラム『貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない』では、「高額療養費」の存在を知らなかったために、貧困に陥ってしまったAさんのケースを紹介した。
高額療養費は、福祉元年といわれた1973年に導入された健康保険の制度で、医療費が家計に過度な負担を与えないように、患者が1ヵ月に支払う医療費の自己負担額に上限を設けたものだ。
現在、70歳未満の人の高額療養費の限度額は、患者の所得によって現在は5段階に分類されているが、健康保険証を見ただけでは、患者の所得区分は判断できない。そのため、以前は病院や診療所の窓口では、いったん年齢に応じた自己負担割合を支払ったあとで、健康保険組合に申請して差額を払い戻してもらう手続きが必要だった。
そうした手続きの煩雑さが、Aさんのような悲劇を生む原因になったわけだ。
だが、あるアイテムがあれば、高額療養費の払い戻し手続きをしなくて、最初から高額療養費の限度額を支払えばよくなるのだ。
そのアイテムが「限度額適用認定証」だ。
2010年4月から通院にも
利用可能になった認定証
2015年1月から、70歳未満の人の高額療養費の限度額は、所得に応じて5段階に分類された。たとえば、年収370万〜770万円の人は所得区分が「ウ」に分類され、限度額は【8万100円+(医療費−26万7000円)×1%】だ。
医療費が100万円だった場合、高額療養費の限度額は8万7430円だが、以前は医療機関の窓口で3割の30万円を支払ったあとで、差額の21万2570円を払い戻してもらう仕組みとなっていた。
いずれ払い戻されるとはいえ、窓口での負担は医療費が100万円なら30万円、医療費が300万円なら90万円にも及ぶ。還付金が戻るのはおおむね3ヵ月後だ。がんなどで継続的な治療をしなければならない人は、その負担も大きいため、還付されるまでの資金繰りに頭を悩ませる人から窮状が訴えられるようになったのだ。
そこで、患者の窓口での負担を抑えるために、2007年4月に導入されたのが「限度額適用認定証」だ。
限度額適用認定証は患者の所得区分を証明する書類で、当初は入院時の医療費にしか利用できなかったが、最近は抗がん剤治療や放射線治療は、そのほとんどが通院で行われるようになっている。医療費が高額になるがん治療が、通院だけで完結してしまうものもあるため、2012年4月からは通院でも限度額適用認定証が利用できるようになった。
この認定証を医療機関の会計窓口で提示すると、最初から高額療養費の限度額のみを支払えばよくなる。加入している健康保険組合で発行してもらえるので、入院・手術、長期の通院などをすることが分かっている場合は、事前に入手しておくといいだろう。
入院時や最初の通院時に入手できなくても、月末までに用意できれば、その月の医療費の支払いから適用される。入院していて自分で手続きできない場合は、家族などに頼んで早めに手に入れるようにしよう。
医療費が高額になった月が過去12ヵ月の間に3回あると、4月目から「多数回該当」といって、限度額がさらに引き下げられる。所得区分「ウ」の人は4万4400円だ。
ひとつの医療機関を継続的に受診している場合、そこで多数回該当であることが確認できれば、限度額適用認定証を見せるだけで4月目からの限度額を月4万4400円にしてもらえる。
ただし、複数の医療機関を受診していて、それぞれ高額療養費が適用される場合は健康保険組合への申請が必要だ。
認定証があっても
複数受診したら申請を
高額療養費は、原則的にひとりの人が、ひとつの医療機関で、1ヵ月に支払った医療費ごとに計算される。
だが、同時期に複数の医療機関にかかって、それぞれの医療費の自己負担額が高額療養費に該当することがある。また、ひとつの医療機関では高額療養費の限度額までは届かないけれど、合計するとそれなりに医療費が高額になることもある。
このようなケースでは、高額療養費の「合算制度」を利用すれば、医療費の自己負担額を抑えられる可能性がある。
合算制度の対象になるのは、それぞれの医療費の自己負担額が2万1000円を超え、さらにその合計が自分の所得区分の高額療養費の限度額を超えた場合(70歳未満の人の場合)。
同じ健康保険に加入している家族の医療費を世帯で合算できるほか、ひとりの人が複数の医療機関を受診した場合も利用できる。
たとえば、70歳未満で一般的な所得の人が、B病院でがんの治療をして月6万円(医療費の総額は20万円)を自己負担したときに、運悪く骨折をしてC病院でも月6万円(医療費の総額は20万円)を自己負担した場合で見てみよう。
2つの医療機関に支払った自己負担の合計は12万円で、医療費の総額は40万円。それぞれの支払いが2万1000円を超え、高額療養費の限度額も超えているので、合算制度の対象になる。
このケースの高額療養費の自己負担限度額は、【8万100円+(40万円−26万7000円)×1%=8万1430円】なので、健康保険組合に申請すると、すでに支払っている12万円から自己負担限度額の8万1430円を差し引いた3万8570円が払い戻される。
「面倒くさい」と思うかもしれないが、医療機関は、別の医療機関での患者の支払い状況まで把握することはできない。限度額適用認定証は便利なアイテムではあるが、高額療養費が適用されるすべてのケースに対応できるわけではない。家計を守るためには、こうした例外があることも押さえて、きちんと自分で対応できるようにしたい。
あえて適用証を使わずに
カード払いにする人も
国立病院機構や大学病院などの大病院では、健康保険を使って受けた医療費の支払いにもクレジットカードを利用できるようになっている。入院や手術をした場合、高額療養費の適用のあるなしにかかわらず、支払いが数万円を超えることもあるため、カードが使えるのはありがたいことではある。
これを逆手にとって、あえて限度額適用認定証を使わずに、医療費をクレジットカード決済にしている患者もいる。利用額に応じたポイントを貯めて、生活費の足しにするという涙ぐましい努力をしているのだ。
たとえば、がん治療のために化学治療などを行うと、抗がん剤の種類によっては医療費が高額になることがある。高額療養費が適用されるので最終的な患者の負担は非常に低く抑えられるが、3割負担の時点ではかなり高額になることがある。
1ヵ月の抗がん剤治療の価格が100万円なら、3割負担で30万円だ。これをクレジットカードで支払えば、ポイントの額も大きい。そのため、あえて限度額適用認定証を使わずに、3割分をカードで支払い、後日、健康保険組合に申請して高額療養費の払い戻しを受けるのだ。
引き落とし口座には、その分のお金を用意しておかなければいけないので、預貯金に余裕がなければカード決済は難しい。だが、健康保険には高額療養費の支給見込み額の8〜9割相当額を無利子で貸し付けてくれる「高額医療費貸付制度」がある。
貸付方法は加入している健康保険組によって異なるが、おもに中小企業などに勤める従業員が加入する協会けんぽでは、支給見込み額の8割を申し込みから2〜3週間程度で銀行口座に振り込んでくれる。タイミングが合えば、その貸付金を使って、カード決済した医療費の支払いにあてることも可能になる。
がんなど大きな病気になって療養が長引くと、医療費の自己負担がジワジワと家計に響いてくるのは事実だ。
だが、高額療養費の貸付制度や限度額適用認定証などの制度の整備も進んできている。これらの制度を上手に使って、家計への影響を最小限に抑えて病気の期間を乗り切りたい。
(フリーライター 早川幸子)
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