http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/607.html
Tweet |
生活スタイルに合わせて、夜間や宿泊型も広がっている(※写真はイメージ)
夜間でも在宅でもOK 「人工透析」最新事情〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170501-00000070-sasahi-hlth
週刊朝日 2017年5月5−12日号
腎不全で失われた腎臓の働きを代替する人工透析。大半の患者が利用する血液透析では、生活スタイルに合わせて、夜間や宿泊型が広がっている。もう一方の腹膜透析も機器が便利になり、患者の負担が大きく減っている。
平日の夕方6時すぎ、JR日暮里駅前にある東京ネクスト内科・透析クリニック。仕事を終えたスーツ姿のサラリーマンが続々と来院する。ロッカーでパジャマに着替え、透析室のベッドやリクライニングチェアに横になりながら、4時間の血液透析を受ける。
「腎不全は60歳前後で発症するケースが多いのですが、働き盛りの40〜50代でなる人も少なくありません。昼間に4時間の透析は難しいので、仕事後に受けられるよう夜間透析を実施しています」(同クリニック院長・陣内彦博医師)
腰の付近に左右一つずつある腎臓は、主に体内の老廃物(尿毒素)や過剰な水分を排出するため、尿を生成する働きを担っている。しかし、糖尿病や高血圧などから慢性腎臓病(CKD)になると、尿毒素や水分が血中に蓄積し、さらに進行すると腎不全になる。
腎不全の患者は血液を浄化する人工透析療法か、腎移植が必要で、現在は約32万人が人工透析を受けている。人工透析には血液透析と腹膜透析がある。
大半の患者が選択する血液透析は、はじめに腕の動脈と静脈をつなぐシャントという手術をおこなう。次に、つなぎ合わせた血管に注射針をさし、ここから取り出した血液を「ダイアライザー」という透析機器に循環させる。尿毒素や余分な水分をろ過したうえで、患者の体内に戻す。
透析は基本的に1回4時間、週3回実施する。ただし、効果の薄い人には6時間以上の長時間透析をおこなう場合がある。
「長時間透析は、体内の尿毒素が多い人に向いています。時間をかければその分、尿毒素が多く排出されるからです。しかもゆっくり排出されるので、からだへの負担も軽減されます」(同)
血液透析にはさらに時間をかけた、宿泊型の「オーバーナイト透析」もある。終夜の医療スタッフの確保などの課題があり、実施できる施設は限られるが、首都圏を中心に全国30ほどで実施している。同クリニックでは、毎週金曜日の夜11時から翌朝の7時までの8時間おこなっている。
「オーバーナイト透析も会社員の方がよく利用されます。この透析は時間をかけるので尿毒素がよく抜ける分、有用な成分まで抜けてしまうことがあります。そのため透析後に数値のチェックをすることが重要です」(同)
ほかにも、ダイアライザーを自宅に設置して、在宅で血液透析をする人も増えている。この場合、注射針のさし方など、患者自身が3〜6カ月ほどクリニックでトレーニングを受ける必要がある。万一のための介助者(血縁・同居者)も必要だが、医師ら医療スタッフは不要だ。機器の運搬・設置の費用がかかるほか、電気代や水道代で毎月2万円ほどが別途かかる。
陣内医師はこう話す。
「在宅血液透析の患者さんのなかには、週に6回透析し、富士山に登ったり、マラソンに挑戦したりしている人もいます。血液透析の選択肢はさまざまあるので、自分に合ったものを選び、人生を楽しんでほしい」
人工透析には、自宅や職場でできる腹膜透析もある。
胃や腸がある腹腔内(各臓器の間)に男性で2リットル、女性で1.5リットル程度の透析液を入れ、約4〜6時間そのままにしておく。すると腹膜を通して、血液中の尿毒素や余分な水分が透析液のほうに出てくる。これを取り出し、新しい透析液と交換する作業を1日約4回繰り返すのが、CAPD(連続携行式腹膜透析)だ。
日本大学板橋病院腎臓・高血圧・内分泌内科部長の阿部雅紀医師は、メリットについてこう説明する。
「透析液を腹腔に入れた後は、買い物をしたり映画を見たりなど、普通の生活ができます。腹膜透析は長時間かけてゆっくりおこなうので、4時間の血液透析に比べて、からだへの負担が少ない。腎臓の残存機能も低下しにくい。また、血液透析は血圧が低下しやすいので、血圧が低い高齢の患者さんにも腹膜透析を勧めています」
腹膜透析ははじめに、カテーテルを腹腔内に挿入する手術を受ける必要がある。また、カテーテルと透析液の袋をつないだり、切り離したりする作業には約30分ずつかかる。とはいえ、作業としてはそれだけだ。
「透析液を自分で交換する必要があるので、これまでは若い人が腹膜透析を利用していました。近年は訪問看護ステーションのサービスを利用した高齢者の実施も増えています」(阿部医師)
夜、寝ている間に、透析液を自動で交換するAPD(自動腹膜透析)も普及し始めている。家庭用プリンターほどの大きさの特殊な機器が必要だが、寝る前に回数設定をしておけば、就寝中に透析液を交換してくれる。
ただし、夜間のAPDのみで対応できるのは尿量が1日800ミリリットルほど確保されているような、比較的早期の患者や、腹膜透析を初めて実施する患者だ。
「APDを始めても、尿量が減ってきたら、昼間にCAPDを追加します。さらに尿量が減ってきたらCAPDの回数を増やす、といった患者さんの状態に合わせて対応することが必要になります」(同)
通院が難しい患者に便利なAPDとCAPD。だが、腹膜は徐々に劣化するため、5〜8年で血液透析に移行する必要がある。
「腹膜透析が可能なうちに、血液透析を併用する方法もあり、2010年に健康保険の適用となっています。血液透析が必要になっても、腹膜透析も継続することで通院回数を減らして、自分の時間を確保することもできるわけです」(同)
東京都在住で料理店経営の横山正さん(仮名・63歳)は、腎不全で人工透析が必要だったが、通院するのが難しく、11年4月に阿部医師のもとを訪れた。
阿部医師は腹部にカテーテルの挿入手術をおこない、腹膜透析の方法も指導。横山さんはAPDから始め、2年後には腎機能低下に合わせて、CAPDを加えた。就寝前と昼間に1回、透析液を交換した。
16年7月、腹膜透析だけでは対応できなくなり、血液透析も加えるようになった。現在は夜間のAPDのほかに昼間にCAPDを2回おこない、血液透析の通院は週1回にとどめることができている。
阿部医師は言う。
「腹膜透析の利点は自宅や職場、旅行先でもできること。仕事が忙しい人や、近くに透析クリニックがない人などは、うまく活用してほしいです」
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。