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病院、手探りの働き方改革
1日2時間から・夜勤委託… 医療の質と両立に苦慮
医療従事者にも働き方改革の波が押し寄せている。「時間外」としてきた当直などが労働時間と判断され、夜勤委託や残業規制の動きが広がる。時短勤務で働き手を増やす病院もある一方、「厳しい規制は医療崩壊につながる」との懸念も。医療現場は医療の質との両立に苦慮している。
「お先に失礼します」。3月中旬の午後4時ごろ、大阪府済生会吹田病院(大阪府吹田市)の女性看護師は帰宅の途についた。
勤務は週3日、午前10時から午後4時までで、患者搬送や食事介助など軽度な業務を担当している。「7歳と4歳の子供がいるため、長時間労働はできない」という女性は「キャリアを中断せず働けて助かる」と喜ぶ。
女性は病院独自の「ナースバンク制度」に登録。希望すれば「週1回、1日2時間」の短時間から働ける。制度を提案した池田恵津子看護部長は「高齢化で患者が増えるなど病院は昔よりも忙しい。1人でも、1時間でも働いてくれることが有り難い」と話す。
「多様な働き方を認めなければ人が集まらない」と黒川正夫院長。日中の人手が増え、夜間に手厚く看護師を配置できるようになり、医療の質も向上したという。
当直も労働時間
医療現場は“外圧”でも働き方改革を迫られている。その一つは「医師の当直は労働時間」と判断した2013年の最高裁判決だ。
訴訟では県立奈良病院(現在は奈良県総合医療センター)の産科医が当直に対する割増賃金の支払いを求めて提訴。同病院は当直を「軽度な業務」として労基署に届け出て労働時間に含めていなかった。
だが一審・奈良地裁、二審・大阪高裁はいずれも「当直時間の4分の1は労働している」「待機時間も呼び出しに応じる義務がある」などとして当直を労働時間と認定。県は上告したが最高裁が退けた。
判決を受けて当直を労働時間とした病院もある。南多摩病院(東京都八王子市)は翌14年に当直を労働時間とし、残業が増えすぎるため当直は勤務医ではなく、都内の大学病院に委託した。
当初は帰宅した勤務医に当直を委託された医師から「緊急手術が必要か」などの問い合わせが相次いだが、タブレット端末で病院外でも検査データなどを確認できるようにした。中村航一副院長は「年約50件は手術が必要ないと分かり、病院に行かずに済んだ」と話し、手応えを感じている。
一方、対応に苦慮している病院もある。
「医師の病院内滞在時間を大幅に短縮することになりました」。聖路加国際病院(東京・中央)は今年2月、患者に向けた貼り紙を掲示した。昨年6月、労働基準監督署の立ち入り調査を受け、医師の長時間労働について指導を受けたためだ。
同病院の医師は午後9時など遅い時間でも患者の家族に治療方針を説明するなどしてきた。だが貼り紙で「サービス面で従来とは異なる対応を取らざるをえない場面が多々出てくる可能性があります」と理解を求めた。
住民の協力不可欠
さらに夜間の救急患者などに対応する医師数は1年前は17〜19人だったが、今年2月には12〜14人に減らした。福井次矢院長は「医師の疲労は本人の健康に加えて、医療事故にもつながりかねず、適切な管理は当然必要」と話す。
ただ救急患者の受け入れに影響が出る可能性がある。福井院長は「厳しい残業規制は医療崩壊につながりかねない」と懸念する。
さらに同病院では手術の技術を身につけるためシミュレーターなどの訓練は「自己研さん」としていたが、労基署は労働時間と認定。福井院長は「密度の高い訓練を積むことで、優秀な臨床医が育ってきた。若手医師の育成にも影響が出かねない」と心配する。
総務省調査(12年)によると、職種別で週60時間以上の労働者の割合は医師が41.8%で、自動車運転手(39.9%)を抑えて最も高い。是正は不可欠だが、医学部には定員があり、医師数は急に増えない。
沖縄県などでは時間外の受診が多く、医療現場の負担を増やしている実情もある。同県立中部病院の高山義浩医師は「病院は業務を徹底的に見直し、女性も働きやすい環境整備などが必要」としつつ、「住民の協力もなければ医療現場の長時間労働は解消しない」と話している。
(辻征弥、鳥越ゆかり)
[日経新聞4月3日朝刊P.15]
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