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[医師の目]がん検診、限界と弊害理解を 国立がん研究センター 東病院放射線診断科科長 楠本昌彦氏(3)
がん専門病院で放射線診断医として勤務していると、検診でがんが発見された人を診る機会が多い。その中には「必ずしも検診について正しく理解していないのではないか」と思わざるをえない患者もいる。
「毎年、検診を受けていれば早期で見つかるし、がんで死ぬことはない」「検診で『異常なし』だったから、私はがんではない。次回の受診までは大丈夫」――。これらはすべて正しくない。
国は対策型の検診として、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸(けい)がんの5つを指定している。いずれも日本人に多く、検診で死亡率を減少させる効果が期待できる。ただ、それぞれの検診で程度の差はあるが、「検診を受ければ死亡する人が少なくなる」ということは「死亡することがなくなる」ということではない。
実際に診断していると、毎年検診を正しく受けていた患者であっても、がんと診断された時点で進行しているケースを経験する。特に肺がん検診で、喫煙歴がある人にこうした状態がしばしばみられる。わずかの期間に急激に進行してしまうことがあるからだ。
検診では、おとなしいがんを発見し、これをすべて治療してしまうと過剰治療になる恐れが生じる場合もある。検診におけるもう一つの問題である。
超高齢者に対してがん検診を行い、症状もないのに、体に負担のかかる検査や治療をすることによって、かえって命を縮めてしまうこともある。
公費補助のある検診では開始年齢を定めているが、年齢に上限を設けることも検討すべきではないだろうか。確かに超高齢者の中にも、「早期に見つけてほしい」という人は存在する。こうした人たちに対する検診の問題は別に考えるべきだろう。
「がん検診は無駄だ」とか「意味がない」と主張しているのではない。がんは症状を自覚するようになった時には、すでに進行した状態で根治できない可能性がある。症状がない時期に検診を受け、より早期に発見することが重要なのは明らかだ。
ただがん検診は意義だけでなく、このように限界や弊害の恐れもある。検診を行う側は当然だが、受ける側も正しく認識したうえで推進していくことが大切であると思っている。
[日経新聞12月18日朝刊P.15]
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