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口腔がんの光スクリーニングの様子(提供写真)
がん、歯周病、虫歯…口腔内トラブルは“光”を使って治す
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/194456
2016年11月25日 日刊ゲンダイ
歯科医というと、ドリルで虫歯を削るイメージしかないという人がほとんどだろう。しかし、それは間違いだ。最近は「光」を使った新しい機器により、がん検診や歯周病・虫歯治療を行う歯科医院が増えているという。
「口腔がん検診として視診、触診と並び、『口腔内蛍光観察装置』による検査を行っています。これまで30人に行い、4人が“疑いあり”ということで、提携先の歯科大学に紹介しました。結果、60代の女性1人が舌がんと診断され、治療を行いました」
こう言うのは「ルネス青山デンタルクリニック」(東京・神宮前)の小林建院長だ。
幸い、この女性は早期がんだったため、放射線治療などで事なきを得た。しかし、発見が遅れていれば、舌を大きく切除することになり、がんが取り切れたとしても食事や会話が不自由になったり、顔が大きく変形するなど大変なダメージを受けていた可能性が高い。
「口腔がんには歯ぐきにできる歯肉がん、舌の下にできる口腔底がんなどがありますが、もっとも多いのが舌がんです。ところが口腔がんを積極的に見つけるための検診が行われていないため、単なる炎症と見られることが多く、発見が遅れる傾向があります。気が付いた時には手遅れのケースが少なくありません」(小林院長)
実際、日本は先進国のなかで唯一、口腔がんの死亡率が増えている国で、年間7000人以上が亡くなっているという。
そこで小林院長が力を入れているのが、「ベルスコープ」と呼ばれる口腔内粘膜の異常を観察する蛍光観察装置による口腔がん検診だ。米国の医療メーカーが開発したもので、米国やカナダで医療機器として承認され、日本では2008年から販売されているという。
「米国では1万施設以上の医療機関で口腔がんのスクリーニングとして使われ、有効性が認められています。日本では口腔がんの検診は医科でも積極的に行われていません。ならば、毎日のように口腔内をのぞいている歯科医が立ち上がるべきだと考え、患者さんに受診を呼びかけています」(小林院長)
■色で粘膜異常が判明
検査は簡単だ。小型のスピードガンのようなベルスコープで光を照射すると正常組織は反射して緑色に見えるのに対し、粘膜異常がみられると色が黒く見える。このため、がんに詳しい歯科医師でなくても口腔内の異常を察知できるという。
検診はすべて自費のため医療機関により費用はまちまちだが、「ルネス青山デンタルクリニック」の場合は視診、触診、報告書などを含め、1万2000円(税別)ほど。ベルスコープによる一般的な口腔がん検診は他の歯科医院などでは税別8000円程度だという。
いわゆる「根の治療」や「歯周病・歯槽膿漏」の治療として、光殺菌する治療も脚光を浴びている。
医科では肺や食道、胃、子宮頚の早期がんに使う「光線力学療法」(PDT)という治療法があるが、歯科ではここ数年、この治療法を採用する歯科医院が増えているという。
「歯周病ポケットなどに光活性剤であるバイオジェルを注入し、歯周ポケット内部に光エネルギーを照射します。これまでの治療法では除去しきれない細菌を死滅させるのに有効だと考えています。再発しやすい歯周病やインプラント周囲炎などに効果が期待できます。この治療法をすれば二度と歯周病にならないわけではありませんが、私は通常の歯周病治療をした後に、総仕上げの“とどめの一撃”として使っています」(都内の歯科医師)
こちらもすべて自費で、1歯2000円以上で行うところが多い。
ほかに、虫歯を削った後の詰め物として光を照射すると30秒で固まる「コンポジットレジン」がある。詰め物は乾きが遅く、唾液が付着するとそこが再感染して虫歯が再発しやすくなる。しかも、接着力が弱くなり、詰め物が取れやすくなる。それを防ぐものだ。こちらは保険でカバーできる。
歯医者がいつまでもドリルで歯をガリガリと削るだけだと思ったら大間違いなのだ。
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