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北欧デンマークからの警告「その手術と薬、はっきりいってムダです」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49522
2016年08月24日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
■風邪に薬は出さない
「クリニックに行くと、広い診療室に案内され、医師が握手をして迎えてくれます。日本の病院のようにカーテンの仕切りなどではなく、完全な個室なのでプライバシーも保たれますし、親密な雰囲気で医師と信頼関係が築きやすかったですね」
デンマークの首都コペンハーゲンに住む日本人、鈴木優美さんは初めてデンマークの病院を訪れたときの印象をこう話す。
「日本とデンマークの医療は制度の面でも意識の面でもまったく違います。
患者には必ず『かかりつけ医』がいて、診てもらうには予約が必須です。日本のようにアポなしで大病院を訪れるということはまずありません。インターネットでかかりつけ医の空いている時間を調べて、予約を入れてから出かけます。
一人当たりの診療時間は15分ほどです。受診の際の主な症状だけでなく、普段ちょっと気になったことなどもゆっくり話せます。時間がないからと途中で追い返されるようなことはないですね」
デンマークの医療は、しばしば世界で最も充実していると評される。OECD(経済協力開発機構)も「卓越した医療制度が整備されている」と讃えるほどだ。しかも医療費は、基本的にすべて無料である(ただし、一部の歯科治療は除く)。税負担は重いが、その分、無駄な医療費に対する国民の目も厳しい。同じ国民皆保険でも、医療費の使われ方に対する意識が低い日本とはそこが違う。
これだけ聞くと、さぞかし素晴らしい治療が行われているだろうと思うが、実際のところは、日本人の想像するものとはまったく違う医療サービスがデンマークでは提供されている。
デンマークの政府関係者が語る。
「この国では自己責任が徹底されており、簡単な病気、例えば風邪を引いたくらいでは『自分で治しなさい』と、病院では診てくれない。たとえ予約を入れて診察を受けても『ゆっくり寝ていれば治る』と言われるのがおちで、薬を出されることはまずありません。
その一方で、個人の努力ではどうしようもないような大きな手術や難しい治療は、たとえそれが何千万円かかったとしてもすべて無料です」
デンマークの医療制度で最も日本と違うのは冒頭にも話が出た「かかりつけ医」の存在だ。多摩大学大学院教授で海外の医療事情に詳しい真野俊樹氏が解説する。
「デンマークでは、どんな病気であってもまずは、ジェネラリストであるかかりつけ医を受診することがほとんどです。症状が深刻で専門医の治療を受ける必要があると判断されれば、初めて大きな病院に行くことになる。日本のように、最初から大病院で受診することはありません。
デンマークに限らず、スウェーデンやイギリスではかかりつけ医や在宅ケアに携わる看護師のサービスが充実しており、QOL(生活の質)の向上を助けてくれるので、日本のように少しのことで病院にかかるような必要がないのです」
■健康診断など存在しない
かかりつけ医は10年、20年と同じ患者を診続けているので、健康状態から家庭のことまでよく把握している。患者もちょっと具合が悪いときには病院まで行かずとも、かかりつけ医に電話して気軽に判断を仰ぐこともできる。
ここでポイントになるのは、かかりつけ医の報酬の仕組みだ。デンマークには医者が何人のかかりつけの患者を診ているかで報酬が決まる「人頭払い」という制度がある。それ以外にもどのような治療をしたかという「出来高払い」の部分もあるが、すべてが出来高払いの日本とは決定的に違う。
前出の政府関係者の弁。
「日本だと短い時間でたくさん患者をさばけばさばくほど、病院が儲かる仕組みになっている。しかも面倒な検査をしたり、難しい手術を行えば、それだけ点数がつくので、いきおい無駄な検査や不要な手術といった過剰医療が生じやすい。
一方、デンマークでは患者にかかりつけ医として登録してもらえば、それだけ定期的な収入につながりますから、必然的に長期的視点で患者の立場に立った医療を行うようになる。無駄な投薬や検査もしない。クリニックには検査のためのCTやMRIなどはなく、レントゲンの機械すらない所も多いですよ」
このような状況なので、デンマークでは定期的な健康診断は一部の病気(乳がん、子宮頸がんなど)を除いて行われていない。自覚症状がない場合は、検査もしなければ、手術もしないというのが当たり前の状況なのだ。
「検査の機会が少ないため、早期にCTを撮っていれば、助かったかもしれないようながん患者が出てくることは確かです。しかし医療全体のバランスで見て、費用対効果を考えたときに、無駄な検査や治療におカネをかけ過ぎないほうがいいというのがデンマークなど北欧諸国の医療の考え方なのです」(真野氏)
■高齢者はがん手術をしない
投薬の量も圧倒的に少ない。'13年の医薬品費の対GDP比率は日本が2・1%、デンマークは0・5%とわずか4分の1。これにはとりわけ薬剤費のかかる高齢者医療のあり方にも理由がある。
「デンマークの高齢者も薬は飲みますが、日本のように一日に5錠も10錠も飲む人は圧倒的に少ない。複数の医者から似たような薬を重複して出されることはないし、医者としっかりコミュニケーションを取るので、薬漬けになることもない。
また、患者は医者が提案する手術を自分の意思で断ることもできます。とりわけ高齢者の場合、がんなどの手術をしてもその負担がきっかけで大きく体力を落とし、結局残りの人生を楽しめなくなることが多い。
とくに高齢の男性は内臓にポリープができてもそのまま放っておいて人生を全うする人がかなりいます。それで十分な医療が受けられなかったなどと泣き言を言う人はいません。ましてや長期間の胃瘻(胃に直接栄養を送り込む治療)など無意味な延命治療は行われません」(前出の政府関係者)
検査や投薬、手術をしないからといって、医療を否定しているわけでは決してない。むしろデンマークは日本以上に健康増進に国を挙げて取り組んでいる面もある。その核となるのが全国民が登録している医療のポータルサイトだ。このサイトでは、日本でいうところのマイナンバーを入れると患者の通院・治療歴、カルテ、処方箋、遺伝子情報にいたるまですべて見ることができる。
ちなみにデンマークでは行政機関のIT化が進んでおり、国からのお知らせなどはすべて電子メールで届く。80歳を超えるような高齢者も認知症などでない限り、みなiPadなどを自然に使いこなしている。
「日本では患者がカルテを見ることはまずないですが、デンマークは患者本位の治療を行うためにはきちんと情報共有したほうがいいという考え方です。日本のようなお医者様と患者という主従関係ではなく、対等な関係にあるべきだという意識なのです。医療情報が完全に透明化されているので、医者は適当な処方や手術はできない。
そして国民の健康に関するビッグデータを匿名化して集計し、どうすれば『健康寿命』を延ばせるかという研究に力を入れています。病気を治療するよりも、予防医学に力を入れたほうがいいという考え方なのです」(前出の政府関係者)
病人を薬漬けにするのではなく、いかに健康に長生きしてもらうか、国ぐるみで取り組む—デンマークの医療制度には、ますます高齢化が進む日本にとって重要なヒントが無数にひそんでいる。
「週刊現代」2016年8月20日・27日合併号より
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