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内視鏡・腹腔鏡手術の真実 〜新人とベテラン、どっちの医者も危ない 読者から問い合わせ殺到!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49155
2016年07月12日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
■突然の出血で大パニック
「よその病院に助っ人として呼ばれて、手術に立ち会ったときのことです。腹腔鏡による初期胃がんの手術で、執刀医は30代半ばの若い医者でした。彼は若いのに腹腔鏡手術の経験が豊富だという評判でした。
ところが、手術中にアクシデントが起きた。思わぬ出血が広がり、血が止まらなくなって腹腔鏡では対処しきれなくなったのです。
通常だとこういう場合、腹腔鏡手術から開腹手術に切り替えます。ところがこの若い医師はなかなか開腹手術を始める決心をしない。オペ室の緊張感が高まり、執刀医はパニックに近い状態になった。結局、私が強く開腹を進言し、ことなきをえたのですが、心底ハラハラしました。
あとで聞いてわかったことですが、この若い医者は腹腔鏡の手術ばかりをやっていて、そもそも外科医の基本である開腹手術の経験が少なかった。それでなんとしても腹腔鏡手術を進めようとしてパニックに陥ったんです」
こう語るのは、都内の大学病院に勤める40代の外科医だ。
鼻や口、肛門から管を入れて行う内視鏡手術や腹部に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術は、体にメスを入れる開腹手術に比べて体に対する負担が少ない「低侵襲手術」として広く行われるようになっている。
だが、低侵襲の手術だから安心というわけにはいかないのはこのエピソードを見ればわかる通りだ。
内視鏡や腹腔鏡の手術はモニターを見ながらの手術になる。執刀医が直接、患者の臓器に触れることもできない。手術中の視野はとても狭くなるし、患者の腹の中でなにが起こっているのか、直接見ることができないのだ。
がんの手術だったら予想以上にがんが広がっていることだってあるし、心臓手術であれば、不意に脈が停止してしまう可能性だってある。そうしたときにとっさに手術法を切り替えられなければ、命取りになる。
■医者の「功名心」で危険にさらされる患者
都立駒込病院名誉院長の森武生氏が語る。
「腹腔鏡は、広い範囲を見ることができません。そうなると木を見て森を見ない手術になってしまいがちです。
現在、若い医師たちが、腹腔鏡手術ばかりをやりたがるのが問題になっています。手術の症例を増やせば、日本内視鏡外科学会で認定医や指導医の資格をもらえるシステムになっているからです。
若い医師が学会のお墨付きをもらいたいがために一例でも多く腹腔鏡の手術をやりたがる。このままだと、腹腔鏡でしか手術ができないような中途半端な外科医だらけになりかねない。
実際、本来の外科手術ができず、『私、腹腔鏡しかやったことがありません』なんて平気でいう医者も出てきました。
最近では盲腸みたいな10分で終わる簡単な手術でも腹腔鏡を使うようになった。医者や病院は『高度先進医療を何件もやっています』と胸を張りたいんでしょうが、そんな功名心のために患者の命を危険にさらすようなことがあっては本末転倒です。腹腔鏡手術の失敗で多くの死者を出した群馬大がいい例です」
内視鏡や腹腔鏡の手術にはとっさの事故に対応しにくいという短所がある。加えて、がん手術では腫瘍を取り残してしまう可能性も高い。
「切り取った腫瘍のヘリの部分にがんが残る場合があります。この状態を『垂直断端』でがんが残るといいますが、内視鏡ではなかなか気づかない。また、リンパ節転移もわからない。術前に検査を行って転移がないかどうか確かめますが、それでも2割くらいは見過ごされてしまう」(森氏)
腹腔鏡や内視鏡の技術に習熟したベテラン医師であっても、そもそもこの技術の限界というものがあるのだ。がんであれば、初期であればよくても、隣の臓器へ浸潤している場合は腹腔鏡では対応しきれない。
■カネのためにやっている
昭和大学横浜市北部病院循環器センター教授で心臓外科医の南淵明宏氏も腹腔鏡手術に懐疑的だ。
「この手術はお腹の中に二酸化炭素を入れてパンパンにして行います。そうすると静脈が圧迫されて血流が止まってしまうということもありえます。あるいは気体が静脈の中に流れ込んで心臓が止まってしまうというようなこともありえる。
なぜ、こんなに危険で面倒な手術を進めようとするのか私にはわかりません。低侵襲といいますが、手術後の痛みは同じようにありますしね。
腹腔鏡手術のほうが手術費として病院に入るおカネが大きいという経済的な問題もあると思います。同じ病気を治すのでも、古典的な開腹手術よりも腹腔鏡を使ったほうが儲かるのです」
内視鏡や腹腔鏡の手術で若い執刀医に当たる危険性は言うまでもない。だが、ベテラン医師の腹腔鏡手術も不安だ。
というのもそもそも開腹手術が得意な外科医は、腹腔鏡という新技術に対して懐疑的な人が多い。つまり逆に言えば、ある程度の年齢で腹腔鏡をやりたがる医師は、そもそも手術が下手だった「ダメ外科医」だった可能性が高いのだ。
ベテラン医師を信頼してはいけない理由は他にもある。医療ジャーナリストの田辺功氏が語る。
「新人医師は指導医につきながら段階を踏んで技術を向上させていきます。しかし、指導医がいない小さな民間病院などで、ある程度の年齢の医師が初めて腹腔鏡手術を行うケースがある。これが危ない。
こうした小さな病院では、腹腔鏡手術の機器を販売しているメーカーが主催する短期間の手術講習や医師向けのビデオ教材だけで術法を学び、実際の手術に臨むこともままあります。
メーカーが主催する講習はたった1日のコースもあります。医師の多くが多忙なため、短期間にせざるをえないという実情がある一方で、どんどん腹腔鏡手術をやりたがる医師を養成して、機器の販売機会を増やしたいというビジネス的な理由もあるのでしょう」
今まで開腹手術しか行ってこなかった小さな病院の外科医が医療機器メーカーの勧誘にのって「うちでもそろそろ最先端の腹腔鏡でもやってみようか」という軽い気持ちで機械を導入するケースもあるのだ。
低侵襲で体への負担が軽いから——そんな言葉にだまされて、ひどいめにあってはたまらない。医師と手術方法の選択にはくれぐれも慎重を期したい。
「週刊現代」2016年7月9日号より
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