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病院に行くから病気になる!? ドキュメント「院内感染」 スーパー耐性菌の恐怖
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49107
2016年07月12日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
■薬が効かない不死身の菌
「一体どうなっているんだ。なぜ死んだんだ」
「原因が分かりません」
医師や看護師が慌ただしく病院内を走り回る。
脳梗塞や肺がんなどで入院していた患者が、ある一定期間に、次々と亡くなっていく。しかもその死因がはっきりしない。それはまるで病院中の患者が原因不明の病に冒されたかのようだった。
「院内感染」——。
病院内で新たな病原菌、ウイルスが発生し、出入りする人すべてに感染する。特に抵抗力が落ちた入院患者が、病原菌の格好の餌食となった。
'10年、帝京大学医学部附属病院で大規模な院内感染が発生した。60人の感染を出し、35人が死亡。そのうち9人は「院内感染と死亡との因果関係が否定できない」と公表され、大きな話題を呼んだ。
同病院の院長は「命を守る病院でこのようなことになり申し訳ない」と謝罪会見で頭を下げた。本来なら患者を治療するはずの病院で起こった悲惨な事件。
帝京大病院の中で発生したのは、スーパー耐性菌と呼ばれる「多剤耐性アシネトバクター・バウマニ」(MRAB)だった。
感染症に詳しい医療コンサルタントの岸田直樹氏が、この菌について解説する。
「スーパー耐性菌とは、簡単に言うと『薬が効かない病原菌』のことです。アシネトバクターは自然界に広く存在し、普通は感染することはありませんが、病院内での不必要な抗菌薬の使用などによって、抗生物質が効かない、不死身の菌に変化してしまうのです。
アシネトバクターは医療機器やトイレなどの水回りから繁殖し、免疫力が落ちた入院患者に感染することが多い。しかもこの耐性菌は、乾燥に強く、ドアノブやカーテンなどにも付着し、栄養の無い状態でも、2週間以上生存するなど生命力も強い。
感染した人は敗血症や肺炎を引き起こし、最悪の場合は死に至ることがあります」
■100%防ぐのは不可能
帝京大病院のベッド数は、1000床を超える。大病院であるがゆえに、一気に感染が広がったとも言える。
さらに帝京大病院での感染発覚と同時期に、日本全国の大病院でアシネトバクターによる感染が確認され、日本中に不安が広がった。ひとたびスーパー耐性菌が病院内に蔓延すれば、患者はひとたまりもないことを目の当たりにしたからだ。
治療のため病院に行ったばかりに、病気になる——。患者にとってこれほど恐ろしいことはない。実際、アメリカでは「毎年1万人の患者が院内感染により死亡している」という報告もある。
耐性菌はアシネトバクターだけではない。たとえば、院内感染を引き起こす代表的なものとして、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という病原菌がある。
著書に『実践マニュアル高齢者施設内感染対策』などがある、東京女子医科大学医学部・感染症科の菊池賢教授はこう言う。
「MRSAは最初、鼻などに定着(保菌)します。保菌状態では感染症を起こすことは通常、ありませんが、医療従事者の手などを介して、手術時の傷や点滴の管(カテーテル)などから体の内部に入って感染を起こします。重症化すると、敗血症などで死亡するケースもあります」
病院側はなんとか対策を取り、感染菌を除去しようとしているが、残念ながらそれは不可能だという。
菊池氏が続ける。
「院内感染をゼロにすることは正直、困難です。それは感染対策の徹底の難しさでもあります。患者に接触した場合に必ず手を洗う、患者の唾などの飛散に対応するために、マスクやゴーグルを着用するなどの基本的な対策は、100人中1人ができないだけで、院内感染が起こりうるのです。
特に高齢者の方は、感染に対する抵抗力が落ちているので、病院に行くこと自体にリスクがあります」
それでも病院に行かなければならない場合、手すりやドアノブはもちろんだが、特に注意したいのが「床」だ。
藤田保健衛生大学・医学部の堤寛教授が言う。
「基本的に病院の床は、すぐに菌が蔓延するので、『消毒しても意味がない』とされています。
病院には解剖室がありますが、内履きのまま院内と解剖室を出入りしているスタッフもいます。病院の床にはどんな菌が潜んでいるか分かりません。
たまに、病院の床に寝転がっている子供さんを見ますが、あれは非常に危険な行為であることをきちんと認識してほしい」
■点滴から感染する
耐性菌はもとより、高齢者の場合は、インフルエンザやノロウイルスなど、院内感染しやすい「ウイルス性の疾患」にも注意が必要だ。
「高齢者に関して言えば、正直できるだけ入院しないほうがいいと考えます。入院したとしても早めに自宅に帰ったほうがいい。
一部には『帰ったら心配だから』と退院したがらない人もいますが、病院にいるほうが感染のリスクは高まるし、高齢者は入院をきっかけに認知機能や活動機能も低下します。これは、患者さんやそのご家族に率直にお伝えしていることです」(前出の岸田氏)
院内感染と聞けば「病院が悪い」と思う人が少なくないが、実は患者側が過剰な医療行為を求めることにより、その危険性が高まっていく。
「たとえば、患者さんの中には『点滴をすれば安心する』といって、しょっちゅう病院に行く方がいますが、これはカテーテル感染の危険性があります。本来なら必要ない治療を受けることで院内感染のリスクを高めているのです」(岸田氏)
では院内感染しないためには、どんな対処法があるのか。
「医療機関に行ったとしても、アルコールや流水で手や指の消毒・除菌をしっかりすることで、耐性菌をもらわないようにすることができます。マスクは、インフルエンザなどの飛沫感染や空気感染するウイルスを予防することができますが、一番重要なのは、やはり手洗いです」(前出の堤氏)
毎日のように通院し、患者同士でしゃべっている高齢者の姿を見かけるが、それは自分で院内感染のリスクを高める、非常に危険な行為である。
「繰り返しになりますが、院内感染をしないためにも、本当に病院に行く必要があるかを考えたほうがいい。病院に行けば行くほど耐性菌をもらってきてしまう可能性が高まることを、肝に銘じてほしいですね」(岸田氏)
毎日病院に通っていれば安心、という考えは大きな間違いだ。それはまさに、病原菌の中に自分の身を晒しに行くようなものなのだから。
「週刊現代」2016年7月16日号より
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