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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
手術不能な膵がん患者 「5年生存率0%」からの治療最前線
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/184533
2016年6月29日 日刊ゲンダイ
手術不能な膵がんは、5年生存率0%といわれている。その状況をどう変えるか。膵がん治療の最前線を、名古屋大学病院消化器外科・藤井努准教授に聞いた。
■新薬で徹底的に叩く
膵がんの多くは発見された時点で進行しており、手術可能な患者は2割程度だ。残り8割の患者を「5年生存率0%」という絶望的な状態から、「5年後の生存が望める」状態へいかに持っていけるか。これが膵がん専門医の課題になっている。
藤井准教授が力を入れているのは、抗がん剤や放射線で積極的にがんを叩き、手術可能な状態へ持っていく方法だ。「がん治療では『普通に』行われているのでは」と思うかもしれないが、膵がんではそうではなかった。
「局所進行切除不能(手術不能)の場合、医師も患者も治らないと諦めて、軽めの抗がん剤を使うのが一般的でした。ところが、抗がん剤や放射線のやり方によっては、手術の可能性が出てくることがわかったのです」
膵がんの抗がん剤は、2013年にフォルフィリノックス、14年にナブパクリタキセルと、新薬が承認された。副作用は軽いが効き目は弱い従来薬に対し、新薬は効き目も副作用も強い。効果と副作用のバランスを慎重にはかりながら新薬を使い、場合によっては放射線を組み合わせる。
「どの抗がん剤を使うかは医師によって違いますが、私はナブパクリタキセルの方が『副作用は強くても患者さんが受け入れやすい』とみて、こちらを使っています」
抗がん剤などを用いる期間の目安は8カ月。明確なエビデンスはまだないが、「抗がん剤の副作用に耐え得る患者」、体力のある50〜60代の比較的、若い患者を対象にしている。
「膵がんは重要な血管に絡みついているものも多く、抗がん剤でがんが縮小し手術が可能になっても、チャレンジングな手術になる。しかし、これによって5年生存率0%から脱することのできる患者さんがいることは確か。当院では、現状約6割がそうです。手術不能といわれても決して諦めないで、抗がん剤によるがん縮小の可能性にかけてほしい」
■腹部へ薬を直接注入
藤井准教授がもうひとつ挙げる「膵がん治療の最前線」は、「腹膜播種」に対する治療だ。
腹膜播種は、膵がんが転移し、お腹の中に星のように散らばっている状態で、打つ手がないとされてきた。
藤井准教授らが試みているのは、卵巣がんや胃がんの手術で行われている治療法で、リザーバーというポート(差し入れ口)をお腹に埋め込み、それを通して抗がん剤を直接注入する。
用いる抗がん剤は「パクリタキセル」で、週1回投与。臨床研究段階だが、このパクリタキセルの直接投与を受けた33人の腹膜播種の患者のうち、4分の1に該当する8人のがんが縮小し、手術が可能になった。がんがあることを示す腫瘍マーカーが正常化に至った。
パクリタキセルの膵がんへの投与は保険適用ではないので、現在国内でこの治療を行っているのは、名古屋大と関西医科大などに限られている。
名古屋大では、手術不能の膵がんの場合、CTなどで腹膜播種が認められなくても、審査腹腔鏡という腹膜播種を見る検査機器で調べる。腹膜播種がなければ「抗がん剤や放射線で手術の可能性を見いだす治療」、腹膜播種があれば「ポートを埋め込みパクリタキセルを直接投与する治療」を行っている。これらによって、この5年で名古屋大の膵がんの平均余命が2倍に延びた。
膵がんであっても、諦めてはいけない。
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