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慢性硬膜下血腫、気がつきにくいケースも(※イメージ)
認知症と間違えられやすい「慢性硬膜下血腫」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160623-00000279-sasahi-hlth
週刊朝日 2016年7月1日号より抜粋
おもに頭部外傷をきっかけに起こる慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)の罹患者が増えている。高齢者やアルコール多飲者に多いが、気がつきにくいケースもあるという。
慢性硬膜下血腫は頭部を転倒などによりぶつけた後、頭蓋骨のすぐ下の硬膜と脳(くも膜)とのすき間で徐々に出血して血液がたまり、血腫ができる病気だ。頭をぶつけて3週間から2カ月後に発症することが多い。
血腫が大きくなると脳が圧迫され、さまざまな症状が起こる。「もの忘れ」や「意欲の低下」はその代表例で、認知症と間違われるケースもある。慢性硬膜下血腫の年間発生頻度は10万人につき1〜2人といわれていたが、最新の調査では70〜79歳で76.5人、80歳以上では127.1人と急増している。
埼玉県在住の田中幸一さん(仮名・71歳)は2016年4月、自宅で転倒し、顔面を打撲。近くのクリニックで頭部CT(コンピューター断層撮影)による画像検査を受けたが、異常は認められなかった。
しかし、約2カ月後、ハイキングに出かけた際に左足がスムーズに動かなくなり、翌日には尿失禁も起きたため、再度、クリニックを受診した。頭部CTを撮影した結果、右側の脳に血腫が見つかり、埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科を紹介された。
硬膜下血腫には急性と慢性がある。急性は外傷の衝撃の直後に脳の表面の太い血管が切れてどんどん出血する。さらに脳が圧迫されて血液の循環が悪化し、意識の低下などが起こる。緊急の開頭手術が必要になるケースも多い。
これに対して慢性硬膜下血腫は外傷をきっかけに、硬膜と脳の間に被膜ができる。被膜にできた新生血管(通常は存在せず、新たに発生する異常な血管)からじわじわと血液がしみだし、たまって血腫となる。
「大きな血腫になるまでに時間がかかるため、症状が出るのもゆっくりです。頭部外傷の直後、病院で『異常はない』と言われても、しばらくは経過観察をしてください」(同科運営責任者・栗田浩樹医師)
なお、頭部外傷でなぜ脳に被膜ができるのかは明らかになっていない。ただし、慢性硬膜下血腫は子どもにはめったに起こらず、高齢者やアルコール多飲者に多いことから、脳の萎縮と関連していると推察されている。
「豆腐が容器いっぱいに入っている場合は容器を振っても豆腐はほとんど動きません。しかし豆腐が小さいと容器の中で位置がずれたり、豆腐がくずれたりします。高齢者やお酒を多く飲む人は、脳が萎縮していることが多く、頭蓋骨と脳の間にすき間ができてしまうため、外傷によって脳が動きやすい。これが慢性硬膜下血腫の発症のきっかけになっていると考えられます」(同)
慢性硬膜下血腫の症状で気づきやすいのが「片麻痺」だ。脳の右側に血腫ができると右の脳が圧迫され、左の手や足が動きにくくなる。脳の左側に血腫ができれば右手足が麻痺する。
「一方で気がつきにくいのは両側性といって、脳の左右に血腫ができている場合です。このような場合、片麻痺はほとんど見られず、もの忘れや意欲の低下など意識の状態に変化が起こりやすくなります。こうした症状は認知症に似ていますが、CTやMRI(磁気共鳴断層撮影)などの画像検査により、きちんと鑑別することができます」(同)
慢性硬膜下血腫は「穿頭(せんとう)血腫ドレナージ術」という外科治療が一般的だ。頭部に局所麻酔をして頭蓋骨に小さい孔(あな)を開ける。そして被膜の中にチューブの先を入れ、もう一方を体外に出しておく。するとたまっていた血液が少しずつ外に出てきて血腫が小さくなる。完全に血が排出されたら治療は終了だ。
「手術時間は10分ほどです。数時間後には症状が回復し、麻痺がとれます。言語に障害があった方は普通に話せるようになります。劇的な変化にいちばん驚くのは患者さん本人ですね」(同)
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