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がんで余命1か月診断の男性 適切な栄養管理で5年生存も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160603-00000016-pseven-life
週刊ポスト2016年6月10日号
緩和ケアの第一人者で、著書『「がん」では死なない「がん患者」』(光文社新書)が注目を集めている東口高志氏(藤田保健衛生大学医学部教授)は栄養管理の重要性をこう解説する。
「がん患者はがんで死ぬわけではない。がん患者が亡くなる原因の8割が栄養不足によるものです。その現実を治療に役立てることができれば、がん患者はもっと長生きできるはずです」
世界でもいち早くがん患者の栄養に注目した米国では、「栄養管理が医療の基本」という考えがあり、1970年代から病院内に医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、検査技師からなる栄養サポートチーム(NST)を置いて、患者の栄養管理に努めてきた。米国の栄養学会が2005年に行なった調査では、大学病院などの大規模医療機関は63%がNSTを導入している。
「米国では、医師も患者さんも栄養を摂ることが医療行為だと分かっていますから、例えば管理栄養士が『この人は1日300キロカロリー不足している』といえば、医師は処方箋を書いて栄養剤を出し、患者さんもそれを飲むことが当たり前になっている。私がこんな話をするのも、日本もそうなってほしいと思っているからなのです」(東口氏)
こうした状況に加えて、自身の経験からも栄養管理は「治療」だと考えている。その主張は余命1か月といわれたがん患者に対して栄養を与えたことで、5年も生き延びたケースからも分かる。
咽頭がんの70代後半の男性は、余命1か月と宣告され、東口氏の勤める病院の緩和ケア病棟に転院してきた。その時、男性はガリガリに せ、まるでミイラのような状態だったという。東口氏は、明らかに栄養不足だった男性に適切な栄養を与え、同時に固くなっていた手足のリハビリなども行なった。すると、男性は1週間を過ぎた頃から急速に回復し始め、3か月後にはゼリー状のものなら口から食べられるようになり、手足も動かせるようになったという。
退院後、その男性は自宅で5年間、奥さんと一緒に暮らし、亡くなる1週間前に東口氏のもとを訪れ、感謝の意を告げたという。男性はその後、笑顔のまま逝った。
「私が診た患者さんのなかには体調の回復によって、がん治療を再開できた人もいます。寿命を延ばすことに寄与した栄養管理を『治療ではない』といえるでしょうか」
東口氏はこう訴える。
「ある意味、がんで死ぬのは寿命です。それを全うできず、途中でがん以外の原因で亡くなることがあってはなりません。適切な栄養管理を行なえば、長生きする人は沢山います。だから私の望みは、がん患者さんが『がんそのもの』で亡くなることなのです。栄養状態が良ければ、たとえ末期のがん患者さんでも最後の最後まで生き生きと過ごせるものです」
がんの代謝栄養学を研究する、緩和ケアの第一人者が提起したこの問題は、「がん治療先進国」といわれる日本において、「医療とは何か」を問いかけている。
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